著 者:ローズマリ・サトクリフ (訳:山本史郎)
出版社:原書房
出版日:2001年5月5日初版
評 価:☆☆☆(説明)
サトクリフ・オリジナルのアーサー王3部作の最終刊。
前2刊と比べると、アーサー王の死と王国の崩壊という結末へ向けてストーリーが一気に流れる、ドラマチックな展開となっている。正直に言って前2刊は退屈な感じが否めなかった(特に2刊)。しかし、本書は違う。違うと言えば、今回は騎士たちの様子と言うか、描かれ方が違うように思う。
アーサー王と胤違いの姉の間の子という出自を持つモルドレッドが、アーサー王の宮廷の騎士でありながら、悪の化身のように描かれているのは、ドラマには敵役が必要だから仕方ないだろう。しかし、その他の騎士たちはどうだろう。
いとこを殺されたことを根に持って、決闘でなく毒殺しようとしたり、そそのかされて王妃を疑ったり、あげくに王妃に横恋慕してさらって行ってしまうやつまでいたりする。勇敢で誠実で忠義を重んじる騎士道精神はどこへ行ってしまったのかというありさま。
そんなだから、昨日まで主従関係ながら親友だった、アーサー王とランスロットは敵対し、ガウェインはランスロットの命を狙うことになり、最後にはモルドレッドの術中にはまってしまう。 今回は、アーサー王も多くの過ちを犯す。モルドレッドに王国を任せて出兵したのはその最大のものだ。
訳者注にもあったが、この物語はアーサー王の物語でありながら、真の主人公はランスロットではなかったか。彼だけが、最後まで騎士らしくあった。王妃に恋してしまったという1点を除けば、完璧な騎士だった。
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