17.P・ステュワート(崖の国)

ファーガス・クレインと空飛ぶ鉄の馬

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2005年11月 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 久しぶりの海外ファンタジー。本書は、大河ファンタジー「崖の国物語」シリーズの著者の作品。「崖の国」よりは、少し低年齢の子どもでも楽しめるワクワク感のある物語。

 主人公はファーガス・クレイン。9歳の男の子。パン屋さんに勤めるお母さんと二人で暮らしている。お父さんはファーガスが生まれる前に航海に出たきり帰って来ていない。

 そのファーガスのもとに、機械仕掛けの空飛ぶ箱が3晩続けて飛んでくる。最初の夜には箱の中にはファーガスの名前を尋ねる手紙、次の夜にはお母さんとお父さんの名前などを尋ねる手紙。そして3晩目には「君に危険がせまっている!」という警告!

 最後の警告の手紙には「音信不通だったテオおじさん」という署名があった。さて「テオおじさん」とは何者なのか?ファーガスに迫る危険とは何なのか?そもそも危険が迫っているというのは本当なのか?...と滑り出しは上々。

 そのあともワクワク感満載。タイトル通りに「空飛ぶ鉄の馬」はもちろん、楽しいメカがいくつも登場する。冒険あり、海賊あり、宝探しあり、友情もあり。屈託なくページをめくってワクワクしよう。

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崖の国物語10 滅びざる者たち

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2009年9月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「崖の国物語」堂々の完結編!。9巻目の「大飛空船団の壊滅」のレビューにも書いたが、このシリーズは、世代が違う血のつながったクウィント、トウィッグ、ルークの3人の若い頃の物語が、順序を変えながら綴られてきた。それぞれを主人公にして3巻づつで、バランスとしては9巻目が最終巻と思われたが10巻目の本書が出た。これが本当の最終巻。3人の物語には発展があるのか?

 時代はなんと、ルークの時代から約300年後。クウィント、トウィッグ、ルークの3人はそれぞれ空賊や槍騎兵として、伝説上の人物になっていた。そして今回の主人公は、鉱山で点灯夫という仕事をしているネイトという若者。彼と伝説の3人の関係は分かっていない。ただ父から遺されたメダルに描かれた空賊の肖像画には、何か意味があるらしい。
 そして、ネイトが鉱山を追われた後、ヒロインのユードキシアら数々の出会いと危機を経て運命に導かれるストーリーを中心に、複数の物語が並行して進められる。一見して無関係意のそれぞれの物語が、ネイトのメインストーリーに次々と縒り合わされていく。この辺りの手法は見事だ。

 このシリーズの特長とさえ言えるのだけれど、本が厚い。本書は101章、860ページ超もある。これが苦もなく読み切れるのだから、いかに物語に牽引力があるかが分かるだろう。スピード感と起伏に富んだストーリーが楽しめる。
 前9巻の内容を上手にすくい取ったという意味では、よくできた「完結編」だ。よくできてはいるけれど、壮大な物語をまとめるにはちょっと力不足だったかも。しかし、そんなこととは別に構わない、ネイトの物語が充分に面白い。ネイトとユードキシアという魅力的なキャラクターの物語はまだ始まったばかりだ。「これが本当に最終巻」という言葉は保証の限りではない。

 とは言え、現在のところ公式には最終巻ということなので...
 この「崖の国」シリーズは、ファンタジーが好きな方にはオススメ。魔法は出てこないけれど、とても面白い冒険活劇的異世界ファンタジーの傑作。ただし、私の感想では第1巻がちょっと退屈でいただけない。2巻でグンと良くなり3巻4巻5巻...と巻を重ねるごとに面白くなる。7巻は最高傑作だと思う(8巻以降がダメという意味ではない。念のため)。だから、このシリーズを読もうと思った方は、是非少なくとも2巻までは読んで欲しい。

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崖の国物語9 大飛空船団の壊滅

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2008年10月第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 虚空に向かって突き出した世界「崖の国」の物語も、外伝を除けば本書で9巻目。前書「真冬の騎士」のレビューにも書いたように、このシリーズは世代の違う3人の若者、クウィント、トウィッグ、ルークが、巻によってそれぞれ主人公となっている。
 そして、これまでにトウィッグの物語が3巻、ルークの物語が3巻、既に出ていることから考えると、9巻目はクウィントの物語の締めになるに違いないと予想した。その予想は的中、本書の主人公はクウィントだ。彼が前巻で修業した飛空騎士団を出て、父である風のジャッカルとともに空賊船に乗り込んだ後の物語だ。

 今回の物語は、「危機→脱出」の小さな波を小刻みに繰り返しながら、最後のヤマ場に向かう。ストーリーのアップダウンだけを考えれば、比較的平板な感じだ。その代りかどうかわからないが、クウィントの父に対する思いや、マリスとの関係の変化など、心の内の微妙な描写がされていたと思う。
 本書で全編に渡って物語の軸になるのは、裏切りによって家族を殺された風のジャッカルの復讐劇だ。罠だと感づいていても仇敵がいるとされる場所へ危険を顧みずに赴く。あまりの執念に、クウィントも空賊船の乗組員も怖れ慄くほどだ。
 これに、大きくは商人連合 VS 空賊連合の対決が絡み、小さくは登場人物たちの私憤や裏切りなどが絡んで物語のキーポイントになる。「平板」とは書いたが、構成は巧みで、相変わらず分厚い530ページが苦もなく読める。

 冒頭に書いたように、シリーズはこれで9巻目。3人の主人公を3巻ずつ描いてこれで完結かと思われたが、訳者あとがきと著者のオフィシャルサイトによると、もう1冊出るらしい。原書の出版が2009年2月というから、日本で出版されるのはいつになるのだろう?

 1つ言い忘れた。シリーズの読者なら承知と思うが、3人の主人公の物語の時代は近接している。だから登場人物や出来事は、3つの物語を跨ってつながっている。「あの人にはここでこんなエピソードが..」なんて読み方も、9巻が揃った今ならできる。

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崖の国物語8 真冬の騎士

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2007年11月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 崖の国という舞台の、様々な時代の物語をつづるシリーズの8作目。第4巻「ゴウママネキの呪い」の直後の物語。主人公はクウィント。1~3巻の主人公であるトウィッグの父であり、通り名を「雲のオオカミ」という空賊だが、これはその青年時代、トウィッグの母であるマリスと結婚(するのかどうかは定かではないが)する前の話。

 シリーズを時代順に追うと、外伝-4巻-8巻・・1巻-2-巻-3巻・・5巻-6巻-7巻となる。途中の・・は、年代が開いていることを表す。著者の意図があるのかどうかはっきりしないが、このクウィントの物語だけが、連続しないで飛び飛びに刊行されていることがわかる。そして、残されたピースがあと僅かであることもわかる。崖の国の年代記の完成にあと少しだ。(本シリーズの原題は「The Edge Chronicles」。Chronicleは年代記だ。)

 ストーリーは、空賊の息子であるクウィントの飛空騎士団での生活を中心に展開する。騎士団と言っても、飛空騎士を養成する学校のようなもの。難しい授業あり、厳しいが生徒思いの先生あり、いけ好かないヤツもいる、という感じで、ハリーポッターのホグワーツでの暮らしのよう。いけ好かないヴィルニクスというのが、愛嬌のかけらもないヤツで、様々な事件を引き起こすのだが、ホント救いようがないヤツだ。

 シリーズの他の巻と同じく、本書も500ページを越える大書なのだが、これまた他の巻と同じく、苦痛を感じることなく最後まで読み通せる。ストーリー展開のウマさはこれまで通りだ。
 しかし、前巻の「自由の森の戦い」には、その面白さやスケールの大きさ、終わった後の爽快感などなどでかなわない、と私は思う。飛空騎士団の中、というのでは舞台が少し小さすぎたか。だた、。「自由の~」は、ルークという若者を主人公とした3部作の最終巻、クウィントの物語も他の主人公と同じ3部作だとすると、本巻は上中下で言うとまだ中巻だ。次回作に期待がかかる。

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崖の国物語7 自由の森の戦い

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2006年5月第1刷
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 訳者あとがきにもあるが、シリーズ中1番の出来だ。後半部分の自由の森の攻防戦は圧巻だった。敢えて触れられていなかった主人公ルークの素性も明らかになる。もちろん、ある程度は展開が予想できる部分もあった。「これは後のための伏線だろうな」と感じるところが何箇所かあり、実際そのようになった。しかし、それも謎解きの楽しみであって、ストーリーの起伏を邪魔したり、退屈になったりするものではなかった。

 今までの巻で、気になっていたことが1つあった。それは、結構人が死ぬことだ。戦争のシーンではたくさんの人が死ぬのだが、それとは別に、主人公の周辺の人がよく死んでしまう。それも、その死に何か意味とか、ストーリー上の必然性とか、そういうものがないままに。
 今回も、人が死ななかったのではない。しかし、その死には大きな意味があった。不謹慎な言い方で恐縮だが、その死によって物語りは大いに盛り上がった。

 この巻で、ルーク・バークウォーターの話は落着のようだ。父子の確執などの様々な伏線もきれいに整理された。あいまいなのは、以前の主人公トウィッグの出自のあたりだ。次巻からはそれが語られるようだ。

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崖の国物語6 ヴォックスの逆襲

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2005年7月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 第5巻の少し前のお話。登場人物も設定もほぼ第5巻と共通している。
 ヴォックスと言うのは、第3巻に登場する雲読み師だ。野心たっぷりだったが、格下のカウルクエイプに最高位学者の座を取られてしまう。その時に「今に見ていろ、必ずその座を我が物にしてみせる」というようなことを、最後に言い捨てて終わる。それなのに、4巻では触れられず、5巻ではすでに失脚していることになっていて、どうしたんだろうと思っていた。

 今回は、良きものは救われ、悪しきものは滅びる、そいうったラストにカタルシスを感じるものになっている。崖の国には悪しきものがはびこっていた。夜の守護聖団、ゴブリン軍、オオモズ軍、それらが互いにいがみ合いながら危うい均衡を保っていた。

 主人公たちの活躍で、良きものたちは窮地を脱し、悪しきものたちは….気になるのはここだ。悪しきものたちは、さらに悪しき怪物に滅ぼされてしまった。この世界には、誰も太刀打ちできない怪物が闇の中で巣くっている。そういう怪物に運悪く遭遇してしまえば、観念するしかない、という設定になっているのだが、今回は、その怪物を町に解き放ってしまった。これで良いのか?

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雲のオオカミ 崖の国物語外伝

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2003年3月第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 崖の国物語4巻「ゴウママネキの呪い」の主人公クウィントの、4巻に先立つ物語。崖の国物語の各巻が400~500ページの大部の物語であるのに対し、この外伝が120ページしかない。短編と言っても良いかもしれない。

 本書では、クウィントの父「風のジャッカル」が登場する。というより準主人公だ。クウィントは1~3巻の主人公トウィッグの父「雲のオオカミ」だから、これで空賊の三代記になるわけで、著者の考えもその辺りにあるのだろう。(ストックしてある本巻のどこに収まらなかったエピソードの一つを切り離して本にしたのではなくて)

 ページ数が少ないのでサッサと読めてしまった。訳者あとがきには、トウィッグの冒険1~3巻と4巻の橋渡し的な意味合い、と言っているが、4巻との関連はあるが、1~3巻とはつながらない。
 崖の国物語の世界観が気に入っている人には良いかも。小さなエピソードが積み重なることで、世界観の細部が出来上がっていくから。例えばトールキンの「シルマリオンの伝説」のように。

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崖の国物語5 最後の空賊

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2004年8月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 1~3巻で語られたトウィッグの物語から50年後。
 トウィッグたちが命を賭して崖の国を救ったのだけれど、それでめでたしめでたしとはいかなかったようだ。石の巣病なる浮遊石の病気によって、新サンクタフラスクは地上に落ちてしまい、飛空船は空を飛べなくなってしまった。
 深森との交易のために、泥地と薄明の森を突き抜ける「大湿地街道」が建設されたが、その実権をあの忌々しいオオモズたちに握られている。というのが本書の崖の国の状況。

 そして、学者たちは夜の守護聖団と図書館司書学会に分かれて覇権争いをして、敗れた図書館司書学会は、地下の下水道へと追いやられてしまった。今回の主人公は、この図書館司書学会で司書勲士に選ばれた若者ルークだ。
 冒険あり、友情あり、成長物語ありで、今までと同様楽しめる。5巻目になるので、そろそろかと思っていたが、過去の登場人物たちとの意外な関係などが徐々に明らかになり、重層的な面白みも出てきた。

 ただ、この司書勲士たちの使命というのが、何かに打ち克つとか、問題を解決するとかではなくて、純粋にというか単純に深森の研究であることが何とも解せない。研究者は研究に人生を掛けるものなんだろうけど、それでも命がけで深森の「自由の森」まで脱出して、そこで更に厳しい訓練を受ける必要があるのか。いったいその先には何があるというのだろう。

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崖の国物語4 ゴウママネキの呪い

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2002年11月第1刷 2002年12月第2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 1~3巻でトウィッグという少年を主人公とした話は終わり、この巻は、トウィッグの父親である「雲のオオカミ」ことクウィントの青年時代を主人公とした話だ。序章の最後に「幾千の物語が眠っている・・・・・これから始まる物語もそんな物語の一つにすぎない」とあるように、時代や主人公を変えて、数多くの物語が紡ぎ出されるのだろう。今時点で、7巻まで発行されている。

 深森、薄明の森、泥地、地上町…、と広大な崖の国の中で、今回の舞台は神聖都市サンクタフラスクだけだ。この閉ざされた狭い場所を舞台として500ページ超の話を間延びせずに作れるのだから、著者のストーリーテリングの力はホンモノだ。今回も面白かった。

 ストーリーは、時の最高位学者リニウスが、古代の学者の研究をひもとき、密かに「大いなる仕事」を成し遂げる。しかし、それが悲劇の始まり。
 クウィントと、リニウスの娘マリス(トウィッグの母だ)などの登場人物が生き生きとしている。後半部分のヤマ場は、今までにない盛り上がりを見せているし、500ページを苦もなく読むことができる。

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崖の国物語3 神聖都市の夜明け

書影

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2002年3月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 1巻、2巻、3巻と巻を追うごとに、話のテンポも良くなり面白みも増してきた。残酷なシーンもなくはないが、2巻ほどたくさんは死なないから読みやすい。
 これを言っては元も子もないのだけれど、都合が良すぎるところが少しある。誰一人行ったことのない(神話だと思われていた)「大河の源」に、徒歩で到達してしまって良いのか?飛空船を操れる人々なのだから、歩いていけるところなら、誰か1人ぐらい行った人がいてもおかしくないだろう。また、帰りはそこからロケットのようにあっという間に帰ってきても良いのか?そんな気持ちが読後にふとしたけれど、話の持って行き方がうまいのだろう、読んでいるときはそんなに気にならなかった。

 前号の最後で、父である「空のオオカミ」の危機を知ったトウィッグは、新しい乗組員と共に、大渦巻きの中へ救出に向かう。そこで、崖の国全体の危機を知らされるが、大爆発を起こして乗組員全員がバラバラに吹き飛ばされてしまう。トウィッグは、乗組員を捜し出すことと、崖の国の危機を救う2つの使命を負って、新しい冒険へ出る、というのが今回のあらすじ。

 トウィッグの話は、これにて完結。しかし、崖の国物語は、主人公を変えて続く。闇博士がなんともあわれだ。

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