1Z.その他ファンタジー

神々と戦士たち2 再会の島で

著 者:ミシェル・ペイヴァー
出版社:あすなろ書店
出版日:2015年10月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 前を読んでからずいぶん経つのに、そういうブランクを感じないでとても楽しめた本。

 「神々と戦士たち1 青銅の短剣」に続く、全5巻シリーズの2巻目。舞台は青銅器時代の古代ギリシアで、主人公はヒュラスという名の13歳の少年。幼いころに妹と一緒に山で拾われて、以来「よそ者」として暮らしていた。前卷で、「よそ者がその短剣を振るうときコロノス一族は滅びる」という巫女のお告げを基に、一帯に勢力を持つコロノス一族から追われる身になっている。

 今回の物語は、逃避行を続けるヒュラスが奴隷商人に捕まり、鉱山に送られるところから始まる。その鉱山がある島は、なんとコロノス一族が治める島だった。見つかれば殺されてしまう。しかもヒュラスはまだ知らないけれど、コロノス一族の一員でありながら、かつての親友のテラモンが儀式のために島にやってくることになった。

 島に来るのはテラモンだけではなくて、大巫女の娘で前卷でヒュラスと行動を共にしたピラもやってくる。主要な登場人物が再結集、ということで、多少わざとらしい展開だけれど許容範囲。新たな登場人物や、再登場した意外な人物が大事な役割を持っていたり、「火の女神」や「怒れる者たち」と呼ばれる神々が絡んできたり、絶体絶命もあり、物語は後半に向けて大いに盛り上がる。

 この「大いに盛り上がる」が、本書を読んでいた私の気持ちだ。実は前卷を読んだのは2年も前で(そのレビューの最後に「これからが楽しみだ」と書いたにも関わらず)、読んでもストーリーが分からないのじゃないか?という不安があったけれど、それは杞憂だった。もちろん細かく覚えてはいないのだけれど、スッと物語の世界に入ることができて、人物たちが生き生きと動き出すのが感じられた。

 とは言え、5巻シリーズなのであと3巻、今後はそう間を空けずに読みたい。

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京都府警あやかし課の事件簿

著 者:天花寺さやか
出版社:PHP研究所
出版日:2019年3月18日 第1版第1刷 2020年3月11日 第4刷
評 価:☆☆☆(説明)

 笑いあり、ホロリとすることもあり、ハラハラドキドキもあり、そんな本。

 2019年の「第7回京都本大賞」受賞作。

 舞台は現代の京都の街。主人公は古賀大。「大」は「まさる」と読むけれど、二十歳になったばかりの小柄な女性。彼女は「京都府警人外特別警戒隊」の委託隊員として配属された。「人外特別警戒隊」は通称「あやかし課」と呼ばれていて、鬼とか天狗とか幽霊とかの「人ならぬ者たち」が起こす事件の処理にあたっている。中には「武士と猪のハイブリッド」とかの訳のわからないものもいる。

 相対する「あやかし課」の面々も、当然ながら人間離れした「力」を持つ。高いところまで飛んだりできるだけでなく、あやかし課のエースの塔太郎は、雷の力を自在に操れる。先輩女性隊員の琴子は薙刀を使う。上司の深津はもっと強い霊力を持ってバケモノを倒す。大も、京都御苑の鬼門に祀られる神猿に授けられた「魔除けの力」を持っている。ちょっと取り扱い注意の力なのだけれど、それはまだ秘密。

 処理する事件は様々で、鬼が、親しくなった女子大生のことを心配し過ぎて起こした騒動とか、鬼の娘の誘拐事件とか。食べ残しの無念が集まったバケモノとか、人の嫉妬心が凝り固まった怨霊とかの、人間が作りだした禍々しいものたちにも立ち向かう。まぁ最後には勝つのだろうと思ってはいても、なかなかスリリングな展開だ。

 面白かった。「京都本大賞」というのも分かる。「人ならぬ者たち」がこんなにたくさんいる、という設定は、1200年の「歴史の街」の京都だからこそしっくりくる。私は京都に数年住んでいたけれど、小路の向こうの暗がりに異界を感じることが何度かあった。昔は「人ならぬ者」が日常にもいたと思う。現代でもそれは「隣りあわせ」ぐらいの場所には感じられるのだ。

 「人ならぬ者たち」として、事件を起こす者たちだけでなく、大たちを助けてくれる神様たちも登場する。女子にモテたいがために四条通りで狸の姿になるとか、「今日のこと、ブログに書いてもいい?」と聞く神様とか...みんないいキャラクターを持っている。もしかそたら神様も関西人なのか。

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グリーン・ノウの子どもたち

著 者:ルーシー・M・ボストン 訳:亀井俊介
出版社:評論社
出版日:2008年5月20日 初版 2011年11月30日 5刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 英国の児童文学ならではの古いお屋敷や森を感じる本。

 作家の上橋菜穂子さんがご自分のバックグラウンドをお話になる時に、必ず取り上げる本。この本が好きで、高校生の時に著者のボストン夫人にお手紙を書いて、ついには訪ねていったとか。どんな物語なんだろう?と興味があって読んだ。

 舞台はイギリスの田舎にある古いお屋敷。主人公はトーズランドという名の7歳の少年。少年の両親はビルマに住んでいて、寄宿学校の冬休みの間、ひいおばあさんのところで過ごすことになった。そのお家がグリーン・ノウという名前のお城のようなお屋敷。

 物語は、トーリー(ひいおばあさんはトーズランドのことをこう呼ぶ)が、このお屋敷の暮らしに馴染んでいく様を描く。「馴染む」というのは特別の意味がある。というのは、このお屋敷には何世紀も前に亡くなった子どもたちが「今も住んでいる」。最初は気配を感じるだけだったけれど、トーリーと徐々に打ち解けて行く。

 冒頭に、お屋敷に向かう汽車に一人で乗っている時には、トーリーは「つらいことをがまんし、悲しみにたえているような顔つき」をしていた。7歳の子どもが、会ったことのないおばあさんの家に一人で行くのだからそれも当然。それが物語の終わりには「来学期になったら、また学校に行かなくちゃいけない?」と聞くほどに..。読んでいる私もホッと心が温まる。

 亡くなった子どもが出てくるのだから、幽霊話には違いないのだけれど、怖い感じはまったくしない。あまりに生き生きとしているので、幽霊というよりは、時間を自由に行き来しているように感じる。

 シリーズの続きも読もうと思う。

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ヘブンメイカー

著 者:恒川光太郎
出版社:KADOKAWA
出版日:2015年11月30日 初版 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「スタープレイヤー」の続編。「スタープレイヤー」の最後で、主人公の夕月が「ヘブン」という街を目指している。そして本書のタイトルが「ヘブンメイカー」。そうか、夕月が目指す街の創生の物語なんだな、と考える。

 世界観の設定を一応。スタープレイヤーというのは、抽選に当選した人で、地球とは別の惑星に送られるが、そこで十個の願いを叶えることができる。その気になってうまくやれば、街を一つ(それ以上でも)作ることができる。前作で実際にそうしたスタープレイヤーも登場している。

 そして本書。主人公は2人。高校2年生の鐘松孝平と大学生の佐伯逸輝。

 孝平は、ある日見知らぬ部屋で眠りから覚める。部屋の外に出ると街が広がっていて、多くの人がいた。広場のプレートには「ようこそ、死者の町へ」の文字。続いて、この町の創造主かららしいメッセージ。「(あなたたちが)ここを「天国」にできることを私は切に望んでいます」と書かれていた。

 逸輝は、中学の同級生で好きだった華屋律子と、大学生になって再会。ところが律子が殺されてしまう。失意の中でふらりと行った海辺で、大男に出会い抽選。「一等、スタープレイヤー」に当選。そう、逸輝はスタープレイヤーになった。

 物語は、孝平の「ヘブン」パートと、逸輝の「サージイッキクロニクル」パートが交互に語られる。孝平のパートは、人々が協力して街を作り上げていく。逸輝のパートは、スタープレイヤーの能力を使って、思いつきを実現する。例えば、故郷の藤沢そっくりの街を作って、律子を呼び出す、とか。

 2つのパートは、別々の物語を紡いでいくが、予想通りにやがて交錯する。

 ちょっとグロテスクな場面もあるけれど、面白かった。孝平も逸輝もいいやつだ。前作もそうだったけれど、願いがなんでも叶うというのは、思うほどいいことではない。

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スタープレイヤー

著 者:恒川光太郎
出版社:KADOKAWA
出版日:2014年8月31日 初版 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 これまでに読んだことのない作家さんの作品を読もうと思って、図書館の書棚を巡っていて見つけた本。著者が、日本ホラー小説大賞を受賞してデビューされた「ホラー作家」だと知ったのは後からで、本書は「異世界ファンタジー」。

 主人公は斉藤夕月、女、34歳、無職。買い物の帰りに「運命のくじ引き」を引いた。三等・一億円、二等・五億円、一等・???。明らかに胡散臭いけれど。そうしたら一等が当たった。一等は「スタープレイヤー」。スタープレイヤーになると、地球とは別の惑星に行って、十個の願いを叶えることができる、という。

 信じられない話だけれど、それは本当だった。夕月は、実家を豪華にした家を建てて住む場所を確保し、若返りと美容整形をして絶世の美女になり、壁で囲まれた広大な庭園を造って宝石をバラまいた。我ながら「下品だ」と思いながら。これで使った願いは3つ。まだ7つある。

 この後、他のスタープレイヤーが訪ねて来たり、そのスタープレイヤーが作った「村」を訪問したり、そこから現地民の村を訪ねていったりする。自分の家の周囲しか描かれていなかった地図が、徐々に範囲を広げていくように、夕月の世界も、そして読者の世界が広がっていく。

 世界が広がるのは良いことばかりでなく、衝突も起きるようになる。この世界ではスタープレイヤーは、死者さえ生き返らせる「全能の神」のような存在。しかし、使える回数に限りがあるその力を「何に使うか?」は、とても悩ましい問題だ。本書の主題はたぶんそういうこと。何人ものスタープレイヤーが登場するが、幸せに暮らしている人ばかりではない。

 面白かった。夕月の願いの使い方は、最初は「下品」かもしれないけれど、分かる。途中、ちょっと危なっかしいこともあったけれど、概ね「良い使い方」を心得るようになった。帯に「新シリーズ、堂々開幕」とあるので、この後も続くのだろう(続編「ヘブンメイカー」が既に出ている)。楽しみだ。

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後宮の烏

著 者:白川紺子
出版社:集英社
出版日:2018年4月25日 第1刷 9月12日 第7刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 書店で多面陳列で、ずいぶんと推しているので買って読んだ。「中華風ファンタジー」なるジャンル(こういう言い方があるとは知らなかったけど、POPに書いてあった)は好きなので。「十二国記」とか「八咫烏シリーズ」とか「僕僕先生」とか、古典を元にした「封神演義」なんかもそれに当たるか。

 舞台は宮廷。後宮の奥深くにある館に住む「烏妃」と呼ばれる妃が主人公。烏妃は妃でありながら夜伽をすることがない。冒頭の帝の訪いのシーンから察するに、夜伽どころか訪問することさえこれまでなかったらしい。烏妃は、呪殺や招魂などの不思議な術を使う女仙か幽鬼で、「会えば災厄がある」とも言われているからだ。

 まぁこんな感じで神秘性を塗り重ねた存在の烏妃だけれど、実にあっさりと正体が明かされる。物語が始まって5ページで、15、6歳の少女だと判明。名前は「寿雪」という。帝に対して「おぬしの頼みは聞かぬ、さっさと去ね」と言い放つ気性と、帝を扉の外に放り出す不思議な術が使えることも分かる。

 この後「そんな理由か」という経緯を踏んで、帝の頼みごとに協力。神秘的な存在のはずが、自分の足で後宮内を動き回って情報収集、というフットワークの軽さを見せる。こういうのをライトノベル風と言うのだろうか?

 「底の浅そうな話だな」と、ここまでの紹介では感じると思う。実際に読んでもそう感じるだろうし、興味をなくして読み進めるのをやめてしまうかもしれない。だから言っておくと、浅そうに見えて深いものが仕込まれている。

 帝の頼み事は、その一族の血塗られた過去や、その陰にあったいくつかの悲恋につながっている。実にあっさりと判明した烏妃の正体も、実はそれは表層で2枚目3枚目の正体が、後に明らかになる。次回があるのかどうか分からないけれど、出ればたぶん読むと思う。

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未来のミライ

著 者:細田守
出版社:KADOKAWA
出版日:2018年6月25日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 この夏の細田守監督の最新作「未来のミライ」の原作小説。監督自身の書下ろし。

 映画の方は公開後2日間で観客動員29万5000人、興収4億円の大ヒット。ストーリーを紹介する必要があるのか、または紹介していいのか、疑問だけれど一応物語の初めのあたりを。

 主人公はくんちゃん。「訓」と書いて「くん」と読む。4歳。横浜の磯子の街で、建築士のお父さんと、総合出版社に勤めるお母さんと、ミニチュアダックスフントのゆっこ、と一緒に暮らしている。ある日、お父さんとお母さんに赤ちゃんが生まれ、くんちゃんの家に妹のミライちゃんがやって来た。

 お父さんとお母さんはミライちゃんの世話で、これまでのようにはくんちゃんには手をかけられない。くんちゃんは面白くない。ミライちゃんのことは「好きくない」。とうとう癇癪を起しておもちゃでミライちゃんをたたいてしまう。そんな毎日のある日、未来から中学生になったミライちゃんがやって来て..。

 私はこの物語はすごく好きだ。映画と同じように。4歳の男の子の成長を感じるし、お父さんとお母さんの愛情を感じるし、過去から続く命のバトンを感じるからだ。映画についての世間の評判を見ると、私に同意してくれない人もかなりの数いるようだけれど、まぁそれは仕方ない。

 映画と本との違いについても書いておく。ストーリーに違いはない。違うのは人物や場面の描写の細かさ。映画を三人称で描くことは難しいけれど、小説ならそれが容易にできる。登場人物が説明できないことも描くことができる。

 例えばお母さんについては「真面目で責任感が強い完璧主義者。(中略)裏を返せば神経質で、心配性で、ゆえに人の評価に敏感な性格だった」と描写されている。映画の画面からもその一端は伝わってきたけれど、ここまではっきりとは分からない。このお母さんがあのセリフを言うのだと思うと感じ方も違う。

 列車についてとか、エンジンなどのメカについてとか、お母さんの出身地の上田の街や、くんちゃんが自転車の練習をする根岸森林公園や、オートバイで走る磯子の街など、私には過剰に思えるくらい説明が詳しい。それで思った。この本の主人公はくんちゃんではなく、語り手つまり細田監督自身なんじゃないかと。

 細田作品の映画を、隣にいる監督の解説を聞きながら観る。そんな疑似体験が(時にうっとおしく感じるかもしれないけれど)できる。

映画「未来のミライ」公式サイト

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神々と戦士たち1 青銅の短剣

著 者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書房
出版日:2015年6月30日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 私はけっこう海外のファンタジーが好きで、トールキンCSルイスサトクリフDWジョーンズ...などなど、以前はよく読んでいたのだけれど、ここ3年ほどは、年に1~2冊ぐらいしか読んでいなかった。それで、できれば、新しい作家さんの新しいシリーズを、と思って、図書館で探していて本書を見つけた。

 著者のミシェル・ペイヴァーさんは、石器時代のヨーロッパを舞台にした「クロニクル 千古の闇」シリーズで高い評価を受け、2010年に最終巻の「決戦の時」でガーディアン児童文学賞を受賞。本書は、新たに始まった全5巻シリーズの1巻目。

 物語の時代は古代ギリシア。ただし、よく映画や物語の舞台になる、アテネやスパルタといった都市国家が興る2000年ぐらい前の「青銅器時代」。主人公はヒュラスという名の12歳の少年。もっと幼いころに妹と一緒に山で拾われた。以来「よそ者」として村の外でヤギの世話をして暮らしていた。

 ある日、青銅の鎧に身を固め、黒いマントをまとった戦士の一団がヒュラスたちを襲う。ヒュラスは運よく逃げ出したが、妹とはぐれてしまう。どうやら「よそ者」を全員殺そうとしているらしいが、なぜ自分たちが命を狙われるのかはさっぱり分からない。物語はこうして始まったヒュラスの逃避行を描く。

 他の登場人物を2人。族長の息子であるテラモンはヒュラスの親友。身分違いのため周囲には秘密だ。ケフティウという島の大巫女の娘であるピラは、本人に意思に反して結婚のためにここに連れてこられた。同じ年頃の子どもとして相通じる感性と、立場の違いから分かりあえない反発が、うまく物語の中で表現されている。

 その他、まだ名付けられていない「地を揺るがす者」や「野の生き物の母」といった神々への信仰や、「女神の使い」とされているイルカの描写など、本書には興味深いことが描き込まれている。全5巻。ということで、今回はひと山を越えただけ。物語は始まったばかり。これからが楽しみだ。

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川をくだる小人たち

著 者:メアリー・ノートン 訳:林容吉
出版社:岩波書店
出版日:1969年6月16日 第1刷 2004年4月5日 第13刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「床下の小人たち」「野に出た小人たち」に続く、「小人の冒険シリーズ」の3作目。ちなみに「床下の小人たち」は、スタジオジブリ作品「借りぐらしのアリエッティ」の原作。

 小人のアリエッティと、そのお父さんのポッド、お母さんのホミリーの3人家族は、前作「野に出た小人たち」で、野外での放浪生活と様々な危険を潜り抜けて、親戚のヘンドリアリおじさん一家が住む小屋にたどり着く。本書はその続き。

 再会を喜び合うポッドとホミリー、ヘンドリアリとその奥さんのルーピー。ただ、暮らしに余裕があるわけではないし、細かいことで関係がぎくしゃくする。再会の喜びとその後に続く同居生活は別のもの。この辺りは、妙にリアルな微妙な距離感の親戚関係が描かれる。

 こうしたことを前段にして、物語は再びポッドたち3人家族を冒険に送り出す。ナイフの箱ややかんを船にした、水の上を行く冒険。危険と隣り合わせ。小さな動物も、雨降りでさえ、ポッドたちにはなかなか厳しい。でも一番危険なのはやっぱり人間。

 3作目だけれど、巻を重ねるごとに躍動感が増している。ホミリーは気ままなところがあって、時々ちょっと困った人になるけれど、よくも悪くも「真っすぐ」な人なのだと分かった。そして一番カッコいいのは、困ったときにタイミングよく現れて助けてくれる人、ということも分かった。

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こそあどの森の物語 はじまりの樹の神話

著 者:岡田淳
出版社:理論社
出版日:2001年4月 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 久しぶりの児童文学。「こそあどの森の物語」というシリーズの中の1冊。シリーズは1994年の「ふしぎな木の実の料理法」から始まって、今年(2017年)2月に発行された12冊目の「水の森の秘密」で完結した。本書はその6番目の作品。

 息の長い人気シリーズだから知っている方もいると思うけれど、シリーズの説明を。舞台になるのは「こそあどの森」。「この森でもあの森でもその森でもどの森でもない森」。主人公はスキッパーという名の少年。スキッパーはバーバさんと住んでいる(バーバさんは旅に出ていてあまり家にいない)。

 他にはトワイエさん、ポットさんとトマトさんの夫婦、スミレさんとギーコさんの姉弟、ふたご(彼女たちはしゅっちゅう名前が変わる)、という風変わりな住人たちが、それぞれ風変わりな家に住んでいる。例えば、ポットさんたちは「湯わかし」の家、スミレさんたちは「ガラス瓶」の家に住んでいる。ここまではシリーズ全体の設定。

 本書では、この森にハシバミという少女がやってくる。ある夜にしゃべるキツネがスキッパーの家にやって来て「森のなかに、死にそうな子がいるんだ」と言う。それで、スキッパーとキツネで助け出したその「死にそうな子」がハシバミだ。

 ぜひ読んでもらいたいので詳しくは書かないけれど、ハシバミはずっと前の時代から来た少女で、スキッパーたちはその時代の出来事に深く関わることになる。この物語は、神話の時代と現代との間の、数千年の時間を越える壮大スケールの話なのだ。

 本書の特長はこのスケールの大きさだけではない。進歩発展してきた私たちに、少し立ち止まってこれでいいのか?と問いかけるメッセージが込められている。「依存」して生きてることについて、それに「無知」であることについて、「戦う」ということについて。

 児童文学に、圧倒されここまで深く考えさせられるとは思わなかった。実はシリーズの他の本も何冊か読んでいるのだけれど、本書は出色の作品だと思う。

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