18.ガース・ニクス(王国の鍵)

王国の鍵7 復活の日曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年12月31日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 トールキンの遺稿集に「終わらざりし物語」というのがあるが、普通は物語はいつか終わりが来る。このシリーズは第1巻の「アーサーの月曜日」で、半ば予告されていた通り、火曜日、水曜日...と続いて、7巻目の本書「復活の日曜日」で幕を閉じる。どのような人気シリーズも、いや人気シリーズであればあるほど「終わり方」は難しい。

 前作「雨やまぬ土曜日」のラストで、主人公アーサーは、遥かな上空に存在する「至高の園」から落下してしまう。そこは手に入れた鍵の力で切り抜けたが、早々とこのシリーズのラスボスとも言える日曜日の管財人、サンデーと対峙することになる。

 その後は、アーサーと準主人公のスージー、リーフの3人の物語が縒り合さって、物語の結末へと向かう。もちろん、シリーズを通しての謎であった、誰が何の目的で一連の事件を引き起こしたのか、も明らかにされる。

 気になるアイテムは、アーサーが実の両親からもらい、5歳の時になくしたゾウのぬいぐるみ。「海に沈んだ水曜日」でアーサーの手元に戻り、再び手を離れては戻ってきて本書に至っている。ようやくこれが大事な役割を担う。

 「終わり方」に関しては、「ナルニア国物語」の終わりにも似た、これで良かったのかどうか、もっと前に他の手を打てなかったのか、という気がする結末だった。まぁそれでも、複雑に交錯した物語が決着する着地点を、何とか見出したとは言える。
 考えてみれば、このシリーズの7作はそれぞれ、キリスト教の7つの大罪に相対するようになっている。「ナルニア国」も7巻で、多分にキリスト教の影響を感じる作品だった。きっと通底するものがあるのだろう。

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王国の鍵6 雨やまぬ土曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年6月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 月曜日から始まって日曜日に終わる7冊シリーズも、本書で6冊目の土曜日。最後から2冊目になった。今回主人公アーサーが対決するのは、「卓越したサタデー(原書では、Superior Saturday)」。世界の中心に位置するといわれている「ハウス」の上層の管財人。

 サタデーは、これまでの5巻でも、本人は登場しないがその暗躍が見え隠れしていた黒幕キャラ。いよいよ本書の冒頭で姿を現す。どうらや彼女は(サタデーは女性なのだ)、創造主がつくった最初のハウス住人という太古からの存在らしい。それ故に、創造主の息子であるサンデーより、自分が上位であるべきだとの、強烈な自負を抱いている。

 アーサーの冒険にはいつもながらハラハラさせられる。しかし、本書は約300ページで、他の巻より100ページほど短く、その分冒険もあっさりしていた感は否めない。実は、上に書いたサタデーの強烈な自負が描かれたことが、本書の最大のポイントと言っても過言ではない。サタデーその人が登場し、これまでの様々な事件のウラを明らかにしたことで、最終巻への準備が整えられたのだ。つまり、本書はこれまでの5巻と最終巻を橋渡しする「つなぎ」の巻だと思う。

(2011.7.12追記)
訳者の原田さまからわざわざコメントをいただきました。最後にアーサーが唱えたセリフに誤りがあるそうです。(誤:中層/正:上層)
コメントで原田さまもおっしゃっているように、大事な決めぜりふではあるのですが、この誤りが物語の面白さを減じるものではありません。どんなに注意しても、何人で見ても、それをかいくぐって生き残る間違いがあるんですねぇ。

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王国の鍵5 記憶を盗む金曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年1月31日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 月曜日から始まる「王国の鍵」シリーズ5冊目は金曜日。今回主人公アーサーが対決することになるレディ・フライデーは、世界の中心に位置するといわれている「ハウス」の中層の管財人。実は、彼女は前作「戦場の木曜日」のラストシーンに姿を現している。アーサーの友人で、意識も身体も支配されてしまう菌に侵されたリーフを診察する医師として。

 今回は、このリーフから物語が始まる。彼女が目覚めたのは、自分の部屋ではないことはもちろん、病院のベッドでさえなかった。数多くの人が眠っている大きな部屋。やがて、レディ・フライデーがその部屋に入ってきて、眠ったままの何百人もの人々が夢遊病者のように、その後を追う。前作のラストの暗示の通り、リーフはレディ・フライデーの手に落ちてしまったらしい。
 一方のアーサーは、前作で辛うじて敵の大軍を押し返して、つかの間の安寧の中にあった。はずだが、これもレディー・フライデーの謀略にかかって、目のとどくかぎりの雪野原に、ひとり放り出されてしまった。

 アーサーは、これまでに手に入れた鍵の力によってほぼ無敵の状態。しかし前作からは、これをあまり使いすぎると、地球には戻れなくなってしまう、という葛藤を抱える。さらに「1作で1人のボスキャラと戦って勝ち抜く」という単純な構図も、前作での第2の敵の出現によって転換した。
 本作では、この転換がもう一段発展して、さらなる敵の存在や、身内に抱える不安定さが示唆されるなど、様々な仕掛けが施される。しかも、その仕掛けはラスト2行でもう1つ追加される。これは、益々目が離せない。

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王国の鍵4 戦場の木曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2010年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 月曜日から始まって日曜日に終わる7冊シリーズの4冊目の木曜日。ちょうど折り返し地点になる。サーズデーは「大迷路」の管財人。そして彼は、世界の中心に位置すると言われている「ハウス」の軍隊を指揮する司令官でもある。大迷路は「無の虚空」と山脈を挟んで接していて、無から生まれる化け物である「ニスリング」の侵攻をくい止めていた。今回アーサーは、大迷路でのニスリング軍との戦争に巻き込まれる。

 それだけではない、前号のエンディングで仄めかされていた通り、アーサーが元いた世界つまり地球には、アーサーの偽者が送り込まれていて、神経を侵す菌をバラ撒いて地球を破滅させようとしている。今回はこれまでとは違って、ハウス内のアーサーの活躍と、地球に戻ったリーフの奮闘の2つのストーリーが並行して進む、より緊迫感が増した展開だ。

 「これまでとは違う」という意味では、今回は新たな敵がアーサーに立ちふさがる。もちろん、サーズデーとも相対する必要があるのだが、真の敵は別にいるようだ、ということが判明する。これまでは、マンデーから始まって、徐々に強くなっていくボスキャラと順に戦い、サンデーがラスボス、という図式が見えていたが、そうではなかった。この記事の冒頭で、「中間地点」という意味で「折り返し地点」と書いたが、物語の展開上も今回はまさに「ターニングポイント」になっている。

 「訳者あとがき」にて重要な情報が公開されていた。7人の管財人は「怠惰」「強欲」「暴食」「憤怒」「色欲」「嫉妬」「傲慢」の、キリスト教の七つの大罪をモチーフにしていると考えられることだ。今回のサーズデーが体現する罪は「憤怒」、次号のレディ・フライデーは「色欲」だ。

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王国の鍵3 海に沈んだ水曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年12月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「王国の鍵」シリーズ第3弾。主人公アーサーの相手は、これまでにマンデー、チューズデーと来て、今回はウェンズデー。そう、水曜日のウェンズデー。創造主が造った世界の中心にある「ハウス」は7つの部分に分かれていて、それぞれに管財人がいる。ウェンズデーは「果ての海」と呼ばれる場所の管財人だ。

 前作の最後で、普通の人間でいることと引き替えに足を折ったアーサーは、その治療のため入院していた。そこにウェンズデーからの昼食会への招待状が届き、次いで病室に大波が押し寄せ、ベッドごと嵐の海に押し流されてしまう。まさに急転直下、アッと言う間にアーサーの波乱に満ちた冒険が始まる。
 例によって、要所要所では協力者が力を貸してくれるのだけれど、基本的にはアーサーの頑張りと幸運が頼りだ。ベッドで漂流したり、大クジラに呑みこまれたり、海賊に追い回されたりと、最後まで息つく暇もない。ぜんそく持ちのアーサーが気の毒でならない。

 管財人の名前などから、7人の敵が順々に現れることは容易に予想できる。格闘系の少年マンガのように、だんだんと強くなっていくのだろう、という想像もできる。これまでに2冊読んでいて、あと5回この繰り返しかと思うと、正直に言うと退屈な感じがしていた。(偉大なマンネリというものもあるけれど)
 ところが、今回はウェンズデーだけが相手ではないらしい。ついでに言えば、7人の管財人の間にもいろいろな確執があることが少しだけ垣間見える。また、前作までは端役だったアーサーの友達の少女のリーフも、今回はこの冒険に巻き込まれて、重要な役回りを演じる。このシリーズにはマンネリ批判は当たらない。物語は様々な要素が加わって複雑になって来ている。

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王国の鍵2 地の底の火曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年8月31日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 「王国の鍵」シリーズの第2弾。前作「アーサーの月曜日」で偶然に創造主の後継者として選ばれた主人公のアーサー。異世界である「ハウス」の支配者の一人「マンデー」との闘いの末、第一の鍵を手に入れて現実世界に戻って、恐ろしい伝染病から街を救った。しかし、ホッとしたのもつかの間で、すぐに「チューズデー」の挑戦を受けることになった。
 もうお分かりのように、闘うべき相手は「マンデー」から「サンデー」までの7人いて、手に入れるべき鍵も7つある。マンデーが現実世界に手を出せるのは月曜日だけ、チューズデーは火曜日だけ..という決まりがある。一見すると何とか1日しのげば攻撃をかわせそうに思うがそうではない。次の日の相手が手ぐすねを引いて待っているからだ。アーサーの戦いは日替わりで相手を変えて続く。なんと過酷なことか。

 今回の相手のチューズデーは冷酷で筋骨逞しい大男。「ハウス」の「地底界」のさらに下で、労働者たちに採掘の重労働を強いている。そして部下のグロテスク兄弟(なんという名前だ)に命じて現実世界の経済を大混乱させて、第一の鍵を渡さなければアーサーの家族を破滅させる、と脅しをかけてきた。
 第一の鍵のおかげで少しは魔力が備わったとは言え、アーサーは普通の少年。端っから勝てそうにないし、実際何度も絶望的な状況に陥る。でも要所要所で協力者に恵まれて(冷酷なチューズデーは人気がないのだ)...というストーリー。

 都合が良すぎる展開、と言ってしまうこともできる。でも、敵役も含めて多彩なキャラクターと起伏のあるストーリーは楽しかった。そしてアーサーは、偶然に選ばれただけの運命なのにそれを受け止めたばかりでなく、普通の人間でありたいと思いある決断をする。アーサーしてみれば「都合が良すぎる」なんてとんでもないのだ。

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王国の鍵1 アーサーの月曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 著者の作品を読むのは初めてだ。少し調べてみると、「古王国物語」シリーズ、「セブンスタワー」シリーズの著者。この2つの書名は、図書館の書棚で見た覚えがある。そして、本書から始まる「王国の鍵」シリーズは、米国で2003年から毎年1巻ずつ現在までに6巻出版され、その全巻がベストセラー250万部突破という、「超弩級人気新シリーズ(帯の惹句から)」だそうだ。

 主人公はアーサー、7年生というから日本では中学1年生の少年。舞台はおそらく現代の米国。新しい学校に転校してきた初日、長距離走の授業中に、アーサーの前に車椅子に乗った男とそれを押す執事風の男が現れる。それからというもの、不気味な連中につきまとわれ、町は「催眠ペスト」と呼ばれる奇病に襲われる。
 アーサーにはぜんそくの持病があって、後になって分かるのだが、その病気ゆえに「偶然に」創造主の遺志を守り、世界を司る「ハウス」を支配する後継者に指名されたのだ。身の回りに起こる不吉な出来事は、すべてこのことに関連している。彼は街を奇病から救うために「ハウス」に単身乗り込んで行く。

 原題は「The Keys to The Kingdom」。「王国の鍵」としても間違いではないが、アーサーが赴く「ハウス」は、どこかの王様が治める王国ではない。「Kingdom」に含まれる「神の国」という意味合いもあると見るのが正解なのだろう。なぜなら「ハウス」は創造主がお造りになられた場所で、そこの人々は人智を超えた者たちだからだ。
 さらに副題「アーサーの月曜日」の原題は「Mister Monday」。これから想像するに、MondayからSundayまでの7つの物語がありそうだ。つまり、本書は神の領域で起きる事件に少年アーサーが立ち向かう長い物語の序章。序章としては充分な盛り上がりと魅力に満ちた本だ。まだ活躍が予想される魅力的なキャラクターもいるし、次の事件を知らせるベルはもう鳴っている。次巻(7月25日発売) 以降が楽しみ。

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