1.ファンタジー

京都府警あやかし課の事件簿

著 者:天花寺さやか
出版社:PHP研究所
出版日:2019年3月18日 第1版第1刷 2020年3月11日 第4刷
評 価:☆☆☆(説明)

 笑いあり、ホロリとすることもあり、ハラハラドキドキもあり、そんな本。

 2019年の「第7回京都本大賞」受賞作。

 舞台は現代の京都の街。主人公は古賀大。「大」は「まさる」と読むけれど、二十歳になったばかりの小柄な女性。彼女は「京都府警人外特別警戒隊」の委託隊員として配属された。「人外特別警戒隊」は通称「あやかし課」と呼ばれていて、鬼とか天狗とか幽霊とかの「人ならぬ者たち」が起こす事件の処理にあたっている。中には「武士と猪のハイブリッド」とかの訳のわからないものもいる。

 相対する「あやかし課」の面々も、当然ながら人間離れした「力」を持つ。高いところまで飛んだりできるだけでなく、あやかし課のエースの塔太郎は、雷の力を自在に操れる。先輩女性隊員の琴子は薙刀を使う。上司の深津はもっと強い霊力を持ってバケモノを倒す。大も、京都御苑の鬼門に祀られる神猿に授けられた「魔除けの力」を持っている。ちょっと取り扱い注意の力なのだけれど、それはまだ秘密。

 処理する事件は様々で、鬼が、親しくなった女子大生のことを心配し過ぎて起こした騒動とか、鬼の娘の誘拐事件とか。食べ残しの無念が集まったバケモノとか、人の嫉妬心が凝り固まった怨霊とかの、人間が作りだした禍々しいものたちにも立ち向かう。まぁ最後には勝つのだろうと思ってはいても、なかなかスリリングな展開だ。

 面白かった。「京都本大賞」というのも分かる。「人ならぬ者たち」がこんなにたくさんいる、という設定は、1200年の「歴史の街」の京都だからこそしっくりくる。私は京都に数年住んでいたけれど、小路の向こうの暗がりに異界を感じることが何度かあった。昔は「人ならぬ者」が日常にもいたと思う。現代でもそれは「隣りあわせ」ぐらいの場所には感じられるのだ。

 「人ならぬ者たち」として、事件を起こす者たちだけでなく、大たちを助けてくれる神様たちも登場する。女子にモテたいがために四条通りで狸の姿になるとか、「今日のこと、ブログに書いてもいい?」と聞く神様とか...みんないいキャラクターを持っている。もしかそたら神様も関西人なのか。

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白銀の墟 玄の月

著 者:小野不由美
出版社:新潮社
出版日:2019年10月12日(1,2) 11月9日(3,4)
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「十二国記」シリーズの第10作。前作「丕緒の鳥」からは6年、書下ろし長編としては2001年の「黄昏の岸 暁の天」から実に18年。その空白を埋めるかのような4巻、計1600ページの超大作。

 舞台は戴国。「十二国記」の国々は、「王」と王を補佐する「麒麟」が揃って、善政を施すことで国の安寧を得る。どちらかが欠けても国が傾く。そういう天の理がある。
 それなのに戴国は政変があって、王の驍宗と麒麟の泰麒の二人ともが行方不明になっている。王の座を簒奪した僭主の政(まつりごと)がデタラメなこともあって、国が荒廃の一途をたどり民衆が苦しんでいる。そういう中で物語が始まる。

 シリーズとしては「黄昏の岸 暁の天」を受ける。「黄昏の岸~」で謀反の濡れ衣を着せられた軍の元将軍の李斎と、李斎に救出された泰麒が、物語の主人公。李斎が泰麒に付き従う形で登場して始まるけれど、途中で道が分かれ、李斎による驍宗の探索行と、泰麒による王宮での政争の、2つの物語が並行して進む。

 どっぷりと物語世界に浸かってしまった。

 4冊1600ページもあって、劇的な出来事は長く起きない。まぁ「泰麒の政争」は、心理戦でもあるので「何か起きそうという予感」だけでも充分なのだけれど、「李斎の探索行」は、行けども行けども行き着かないので、普通なら飽きてしまうだろう。

 ところがそうならない。李斎たちが新しい街に行き、それらしい情報を得て、時には同志と呼べる人に出会い、そしてまた次の街に...とする間、「十二国記」の世界を一緒に生きているような感覚になる。おそるべし。

 念のため。「十二国記」の予備知識なしで本書を読んでも楽しめないと思う。最低でも「風の海 迷宮の岸」「黄昏の岸 暁の天」を読んでおきたい。できれば「魔性の子」も。作品間に細かい繋がりがあるので、さらに可能であれば他の作品も。

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グリーン・ノウの子どもたち

著 者:ルーシー・M・ボストン 訳:亀井俊介
出版社:評論社
出版日:2008年5月20日 初版 2011年11月30日 5刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 英国の児童文学ならではの古いお屋敷や森を感じる本。

 作家の上橋菜穂子さんがご自分のバックグラウンドをお話になる時に、必ず取り上げる本。この本が好きで、高校生の時に著者のボストン夫人にお手紙を書いて、ついには訪ねていったとか。どんな物語なんだろう?と興味があって読んだ。

 舞台はイギリスの田舎にある古いお屋敷。主人公はトーズランドという名の7歳の少年。少年の両親はビルマに住んでいて、寄宿学校の冬休みの間、ひいおばあさんのところで過ごすことになった。そのお家がグリーン・ノウという名前のお城のようなお屋敷。

 物語は、トーリー(ひいおばあさんはトーズランドのことをこう呼ぶ)が、このお屋敷の暮らしに馴染んでいく様を描く。「馴染む」というのは特別の意味がある。というのは、このお屋敷には何世紀も前に亡くなった子どもたちが「今も住んでいる」。最初は気配を感じるだけだったけれど、トーリーと徐々に打ち解けて行く。

 冒頭に、お屋敷に向かう汽車に一人で乗っている時には、トーリーは「つらいことをがまんし、悲しみにたえているような顔つき」をしていた。7歳の子どもが、会ったことのないおばあさんの家に一人で行くのだからそれも当然。それが物語の終わりには「来学期になったら、また学校に行かなくちゃいけない?」と聞くほどに..。読んでいる私もホッと心が温まる。

 亡くなった子どもが出てくるのだから、幽霊話には違いないのだけれど、怖い感じはまったくしない。あまりに生き生きとしているので、幽霊というよりは、時間を自由に行き来しているように感じる。

 シリーズの続きも読もうと思う。

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岸辺のヤービ

著 者:梨木香歩
出版社:福音館書店
出版日:2015年9月10日 初版発行 11月5日 第3刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「生きる」ということは悩ましい、それでも素晴らしいことだ、と思う本。

 梨木香歩さんが描く児童文学。川の蛇行の後にできたマッドガイド・ウォーターという三日月湖が舞台。主人公はハリネズミに似た不思議な生き物、クーイ族のヤービ。ヤービたちが「大きい人たち」と呼ぶ、人間の「わたし」の語りで物語が進む。「わたし」は、マッドガイド・ウォーターにある寄宿学校のフリースクールで教師をしている。

 冒頭に「わたし」とヤービの出会いが描かれていて、これで「わたし」がどんな人なのか分かる。マッドガイド・ウォーターにボートを浮かべて本を読んでいる時。ミルクキャンディーを口に入れようとしていた時に、目と目があって、手に持ったキャンディを差し出した..。心豊かで優しい、でも慌てると自分でも思わぬ大胆なことをしてしまう。そんな人。

 ヤービの方はクーイ族の子どもで男の子。虫めがねで花粉やミジンコを観察して「帳面」に書き留めるのが好き。ヤービのひいおじいさん(グラン・グランパ・ヤービ)は、博物学者だったらしく、ヤービはその血をひいているのだろう。つまりは好奇心旺盛で感性も豊か。

 物語はヤービと、いとこのセジロ、クーイ族の別の種族のトリカ、の3人を、ちょっとした冒険を交えて描く。これが思いのほか様々なテーマを含んでいる。家族のあり方、親戚のあり方、仕事のあり方、環境の変化、そして「他の命をもらって生きる」ということ...。

 ちょっと重めのテーマもあるけれど、ちゃんと子どもの心に届く物語になっている。私は子どもではないので、本当のところは分からないけれど、そう思う。「トムは真夜中の庭で」とか「床下の小人たち」とか「ナルニア国物語」とか、海外の児童文学の古典を読んでいるような気持ちになるから。それは、小沢さかえさんの絵によるところも大きい。

 私が子どものころに夢中で読んだ「コロボックル」シリーズのことも思い出す。

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小説 天気の子

著 者:新海誠
出版社:KADOKAWA
出版日:2019年7月25日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 大ヒット上映中の映画「天気の子」の小説版。映画の方は「公開34日目で興行収入100億円を突破」、前作「君の名は。」を上回るペースだそうだ。

 登場人物もストーリーも映画と同じ。主人公は森嶋帆高、高校一年生。島の出身で、家出して船で10時間以上かけて東京に来た。東京は家出少年に冷酷で、どこを歩いても人にぶつかり、道を尋ねても答えてもらえず。街をさまよい、路上に居場所を見つける他にないが、それも容易には見つからない。

 そんな中で、一人の少女に出会う。陽菜、帆高よりひとつ年上の17歳。マクドナルドで3日連続でポタージュだけの夕食を取っていた帆高に、ビッグマックをくれた店員。帆高が、タチの悪そうな大人から助け出した少女。彼女は「100%の晴れ女」。彼女が祈れば短い間だけれど、雨が降っていても雲が割れ晴れ間が覗く。

 物語は、帆高と陽菜の「恋愛未満」の関係を描きつつ、帆高が身を寄せた編集プロダクションの社長の須賀と、アシスタントの夏美、陽菜の弟の凪の3人を加えた、5人の物語が進む。帆高は家出少年であるだけでなく、ある出来事から警察に追われる。また、晴れ女の陽菜に関する重大な事実が明らかになる。

 読み始めてすぐの第2章で、戸惑いとともにグッと引き込まれた。夏美が一人称で語り始めたからだ。映画では、それなりに重要な役割を果たすにしても、あくまでサブキャラクターで、多くは語られなかった人物。それが帆高のことと自分のことを語る。これによって「重要な役割」にも深みが増した。

 映画が大ヒットしていることで分かるけれど、ストーリーは抜群に面白い。それに加えて、映像では表現が難しい、人物の心情や背景や、場面の設定が書き込まれている。それも監督自身の手によって。「君の名は。」の小説版の時と同じだけれど、映画を観て「良かった」と思う人には特におススメ。

 最後に。映画の物語のラストの評価が分かれているようだけど、私は「これすごくいい」と思った。

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ベーオウルフ サトクリフ・オリジナル7

著 者:ローズマリ・サトクリフ 訳:井辻朱美
出版社:原書房
出版日:2002年10月10日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

ファンタジー小説の源流を感じた本。

著者のローズマリ・サトクリフは、「第九軍団のワシ」などの児童向け歴史小説と、「アーサー王と円卓の騎士」「オデュッセウスの冒険」などの伝承や神話の再話を多く手掛けている。作家の上橋菜穂子さんが「影響を受けた作家」として筆頭に挙げられている。

本書は英国最古の叙事詩である「ベーオウルフ」を再話したもの。勇士ベーオウルフの英雄譚。デネ(デンマーク)の王の館を襲う怪物グレンデルの退治と、ヒイェラーク(スウェーデン南部)で人々を襲う竜の退治、この2つの物語から成る。グレンデル退治はベーオウルフの若かりし頃、竜退治は自らが王となり老いてからの出来事だ。

ストーリーは多少の脚色を除けば伝承のとおりであるようで、いたってシンプル。父が恩義を受けた異国の王を怪物が苦しめている。救援に駆けつけて、どのような勇士も歯が立たなかった、その怪物(とその母親)をベーオウルフは見事に退治する。竜退治の方はさらにシンプルで、竜を死闘の末に退治する。

驚いたのは、このシンプルなストーリーに、今日までのファンタジーで繰り返し語られた「竜」のモチーフがあること。洞窟の中で財宝を守っていること、口から火を吐いて焼き尽くすこと、翼を持っていて飛ぶこと、硬い鱗で覆われていること、下腹には鱗がなくそこが弱点であること。

「あとがき」によると、トールキンもこのベーオウルフを愛したとか。竜のモチーフは、トールキンの「ホビットの冒険」に登場する。「あとがき」の受け売りになってしまうが、「指輪物語」の王たち、例えばアラゴルンやセオデンには、ベーオウルフの面影がある。

ここまでは本書のというよりは「ベーオウルフの伝承」についての感想。最後に本書について。その場面の映像が立ち上がってくるような描写は、著者(と訳者)の力が合わさらないとできない。読み終わって一編の映画を観たような気持ちになった。やはり20世紀を代表するストーリーテラーだと思う。

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鹿の王 水底の橋

著 者:上橋菜穂子
出版社:KADOKAWA
出版日:2019年3月27日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 2015年の本屋大賞、そして日本医師会の日本医療小説大賞を受賞した作品「鹿の王」の続編。

 主人公は医師のホッサル。前作「鹿の王」は、ヴァンという名の戦士とこのホッサルの2人が主人公で、本書はそのうちのホッサルの「その後」を描いている。

 ホッサルは250年前に滅びたオタワル王国の末裔。オタワルの民は、土木・建築・金属などの様々な技術に優れ、東乎瑠帝国に飲み込まれ国が滅んだ後も、その技術力で命脈を繋いできた。中でも抜きんでて優れていた技術が、ホッサルが身につけた医術。皇帝の妃を難病から救ったことで、皇帝の後ろ盾を得て、帝国の中で確かな支持を得て広まりつつあった。

 今回の物語のきっかけは、ホッサルの施療院に出入りする祭司医の真那から、真那の父が治める領国への同道を求められたこと。真那の姪の病をホッサルに診てもらいたいらしい。ホッサルは助手で恋人でもあるミラルと共に、真那の招きに応じる。

 前作の「鹿の王」が日本医療小説大賞を受賞したように、この作品もテーマは「医療」だ。それも「医療とはどうあるべきか?」という奥深いテーマだ。

 真那は「祭司医」だ。東乎瑠帝国の医術は、国教の「清心教」という宗教が根本にある。宗教だから「祭司」医。宗教だから頑なな側面がある。例えば、オタワルの医術で行われる「輸血」は「異教徒の穢れた技」になる。生き永らえたとしても身体は穢され、死後に神の御許に行くことができない。

 医術で治療しても永遠に生きることはできない。身が穢れたと思いながら生きることを強いるのが良いのか?いや、わが子が目の前で死に瀕していても、それを救う方法を知っていても、身体を穢さないことを選ぶのか?難しすぎる。

 この二つの医術の対立以外にも、次期皇帝争い、民族の存亡、愛する人への想い等々、たくさんのテーマが重層的に描かれる。一流のエンターテイメントになっている。

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ヘブンメイカー

著 者:恒川光太郎
出版社:KADOKAWA
出版日:2015年11月30日 初版 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「スタープレイヤー」の続編。「スタープレイヤー」の最後で、主人公の夕月が「ヘブン」という街を目指している。そして本書のタイトルが「ヘブンメイカー」。そうか、夕月が目指す街の創生の物語なんだな、と考える。

 世界観の設定を一応。スタープレイヤーというのは、抽選に当選した人で、地球とは別の惑星に送られるが、そこで十個の願いを叶えることができる。その気になってうまくやれば、街を一つ(それ以上でも)作ることができる。前作で実際にそうしたスタープレイヤーも登場している。

 そして本書。主人公は2人。高校2年生の鐘松孝平と大学生の佐伯逸輝。

 孝平は、ある日見知らぬ部屋で眠りから覚める。部屋の外に出ると街が広がっていて、多くの人がいた。広場のプレートには「ようこそ、死者の町へ」の文字。続いて、この町の創造主かららしいメッセージ。「(あなたたちが)ここを「天国」にできることを私は切に望んでいます」と書かれていた。

 逸輝は、中学の同級生で好きだった華屋律子と、大学生になって再会。ところが律子が殺されてしまう。失意の中でふらりと行った海辺で、大男に出会い抽選。「一等、スタープレイヤー」に当選。そう、逸輝はスタープレイヤーになった。

 物語は、孝平の「ヘブン」パートと、逸輝の「サージイッキクロニクル」パートが交互に語られる。孝平のパートは、人々が協力して街を作り上げていく。逸輝のパートは、スタープレイヤーの能力を使って、思いつきを実現する。例えば、故郷の藤沢そっくりの街を作って、律子を呼び出す、とか。

 2つのパートは、別々の物語を紡いでいくが、予想通りにやがて交錯する。

 ちょっとグロテスクな場面もあるけれど、面白かった。孝平も逸輝もいいやつだ。前作もそうだったけれど、願いがなんでも叶うというのは、思うほどいいことではない。

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風と行く者 守り人外伝

著 者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:2018年12月 初版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者の代表作と言える 「守り人」シリーズの外伝。シリーズとしては2012年の「炎路を行く者」以来6年ぶり、小説作品としても「本屋大賞」を受賞した2014年の「鹿の王」以来4年ぶりの作品。まぁとにかく久しぶりに著者が綴る物語を読むことができてうれしい。

 主人公はシリーズ全体の主人公でもある、女用心棒のバルサ。本編の最終巻「天と地の守り人 第三部」の、タルシュ帝国との死闘から1年半。荒廃した国土で復興が始まっていた。バルサは訪れた市で、16歳の頃に養父のジグロと共に護衛をしたことがある「風の楽人」たちに出会い、再びその護衛を引き受けることになった。

 物語は、現在と16歳の頃の記憶を行き来しながら、時にはその2つが重なるように進む。今回も過去にも「風の楽人」たちは狙われていた。その頭の女性には、ある禁域の封印を解く力がある。その力を排除しようとしているらしい。背景には、氏族間の衝突と融和の歴史があり、数百年前の事件も絡んでいるようだ。

 著者の研究者としての専門分野である文化人類学的な視点を、心躍る深い物語に落とし込んでいて、まさに「上橋菜穂子らしい」作品になっている。そして「守り人」のファンであれば、多くの人が読みたいと思うであろう「ジグロとバルサ」の物語を、たっぷりと堪能できる。うれしい。

 「あとがき」によると「いさんで書きはじめて数百枚も書いたのに、とちゅうで書けなくなった物語」が、著者には数作あるそうだ。本書もそうしたもののひとつ。それが何かのきっかけを得て書けるようになることがある。その他の「書けなくなった物語」にもそんな時がくることが待ち遠しい。

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スタープレイヤー

著 者:恒川光太郎
出版社:KADOKAWA
出版日:2014年8月31日 初版 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 これまでに読んだことのない作家さんの作品を読もうと思って、図書館の書棚を巡っていて見つけた本。著者が、日本ホラー小説大賞を受賞してデビューされた「ホラー作家」だと知ったのは後からで、本書は「異世界ファンタジー」。

 主人公は斉藤夕月、女、34歳、無職。買い物の帰りに「運命のくじ引き」を引いた。三等・一億円、二等・五億円、一等・???。明らかに胡散臭いけれど。そうしたら一等が当たった。一等は「スタープレイヤー」。スタープレイヤーになると、地球とは別の惑星に行って、十個の願いを叶えることができる、という。

 信じられない話だけれど、それは本当だった。夕月は、実家を豪華にした家を建てて住む場所を確保し、若返りと美容整形をして絶世の美女になり、壁で囲まれた広大な庭園を造って宝石をバラまいた。我ながら「下品だ」と思いながら。これで使った願いは3つ。まだ7つある。

 この後、他のスタープレイヤーが訪ねて来たり、そのスタープレイヤーが作った「村」を訪問したり、そこから現地民の村を訪ねていったりする。自分の家の周囲しか描かれていなかった地図が、徐々に範囲を広げていくように、夕月の世界も、そして読者の世界が広がっていく。

 世界が広がるのは良いことばかりでなく、衝突も起きるようになる。この世界ではスタープレイヤーは、死者さえ生き返らせる「全能の神」のような存在。しかし、使える回数に限りがあるその力を「何に使うか?」は、とても悩ましい問題だ。本書の主題はたぶんそういうこと。何人ものスタープレイヤーが登場するが、幸せに暮らしている人ばかりではない。

 面白かった。夕月の願いの使い方は、最初は「下品」かもしれないけれど、分かる。途中、ちょっと危なっかしいこともあったけれど、概ね「良い使い方」を心得るようになった。帯に「新シリーズ、堂々開幕」とあるので、この後も続くのだろう(続編「ヘブンメイカー」が既に出ている)。楽しみだ。

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