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雑草と楽しむ庭づくり オーガニック・ガーデン・ハンドブック

著 者:曳地トシ 曳地義春
出版社:築地書館
出版日:2011年6月15日 初版 2011年7月1日 2刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 雑草についてそれぞれの特性を知り、雑草との共生を含む上手な付き合い方を教えてくれる本。

 著者は、ご夫婦で農薬を使わないなどの、自然環境に配慮した庭づりとメンテナンスを行っている。いわゆる「オーガニック・ガーデン」だけれど、著者たちが考えるオーガニック・ガーデンは、農薬を使わないというだけでなく、「多様な生きものが生き生きとしたつながりを持つ庭」。オーガニックとは「余計ないことをしない。余計なものを持ち込まない」ということにつきる、とも言う。

 本書の構成は三部構成。第一部が「雑草編」。庭でよく見る雑草86種の特性や対処法を解説する植物図鑑。第二部が「実践編」。雑草を生やさない方法や生かし方、草取りの道具などを紹介する。第三部が「基礎知識編」。雑草のライフサイクル、様々な分類と特性、役割などをコンパクトにまとめてある。分量的には第一部が7割超あって、第二部と三部が残りの半分ずつぐらい。

 私にはとてもありがたい本だった。「はじめに」に「せっかくの庭が持ち主の精神的な負担になっているケースを数多く見てきた」とある。私がそうだった。もちろん庭を世話する楽しみは大きいのだけれど、負担にもなっている。広い庭ではないけれど手をかけないと荒れてしまう。それに雑草は庭だけではなくて、駐車場や隣家との間や家の裏にも、とにかく土のあるところなら生えてくる。そういう人がもっと安心して雑草とつきあえるように書かれたのがこの本だ。

 安心につながるのは例えばこういうこと。「それぞれの価値基準による」としながらも「根こそぎ抜く」のではなく「刈りそろえる」ことを提案。5センチで刈ると雑草の生長がもっとも遅くなる、繰り返し5センチで刈っていると5センチ前後の草しか生えてこなくなる。「根こそぎ」から解放されれば、随分と気が楽だ。

 雑草とのつきあいで「なるほど」と思ったのはこういうこと。「好きな雑草を残す」「ここだけは生やしてかまわないという場所をつくる」「雑草を生け花にする」。こんなつきあい方があるとは思わなかった。著者は、植木鉢に土を入れて何も植えないで置いておくこともある。何が生えてくるかお楽しみ、だそうだ。

 雑草の「雑」には「取るに足らない」という意味だけれど、雑木林の「雑」には「多様な」というニュアンスがある。「雑草と言う名の植物はない」という言葉は多くの人が知っているけれど、著者は雑草に多様性を見ることで、その言葉のさらに先を行っているように思う。それは、様々な庭で実際に生き物や土を対峙しているからこそ行き着いた考えなのだと思う。

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ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学

著 者:森山徹
出版社:PHP研究所
出版日:2011年4月1日 第1版第1刷 8月5日 第1版第3刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「研究って面白いなぁ」と思った本。

 著者は、ダンゴムシやオオグソクムシなどの行動実験を通して「心や意識、私とは何か」を明らかにしようとする研究者。信州大学に在籍して本書執筆の時は助教で現在は准教授になっている。本書は著者の研究成果の一端とその意味を紹介し「心の科学」を展望する。

 タイトルの「ダンゴムシに心はあるのか」は、非常に簡明な問いの文章であるが、その答えは必ずしも明快ではない。「んなものあるわけない」と思う人も、「生き物には心があるに決まっている」と思う人も、結論を急がずに著者の説明を聞くといいと思う。「そういうことなら確かに...」と思うかもしれない。思わないかもしれない。

 まずは「心とは何か」。実はこれが大変に難解な説明になっている。思うに、この「心の定義」がここまで困難なのは、後に「心」を実験で捉えなくてはいけないからだと思う。そのためには観察可能な形で「心」を具象化する必要がある。難解ではあるけれど著者の説明は一歩ずつ進むので、私はなんとか飲み込むことができた。しかしここできちんと説明する自信はない。

 自信がない説明よりも、ダンゴムシの実験を先に紹介した方が分かってもらいやすいと思う。ダンゴムシを出口が複数ある迷路に入れると、出てくる出口が顕著に偏る。これは「交代性転向」という言わばダンゴムシに生物として備わった機能によるものだ。多くの動物種でみられるらしい

 「ああなるほど。それで決まった出口からばかり出てくるのか」と、私なら小ネタを仕入れることができて満足するところだけれど、著者の着眼点は別のところにある。数は少なくてもその他の出口からも出てくるのはなぜか?ほかにも多くの実験で、同様の「予想外の行動」が観察できる。生物として備わった機能に反した行動に、著者は「心」の存在の一端を見る。

 「ダンゴムシの心」の研究にどのような成果が結実するのか?それは分からないけれど、私は前京都大学学長の山極壽一先生のゴリラの研究を思い出した。ゴリラの社会の研究と比較から、人間の社会の輪郭が浮かび上がってきた。ダンゴムシの研究からも私たちの「心」を解明する知見が得られるかもしれない。

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レビュー記事が1500本になりました。

 先日の「JR上野駅公園口」の記事で、このブログのレビュー記事が1500本になりました。2002年の9月に書いた「海底二万海里」が1本目で、それから18年と8カ月です。いろいろなことに感謝です。

 ちょっと分析してみました。

 評価は☆5が42、☆4が696、☆3が698、☆2が60、☆1が4でした。

 カテゴリー別の記事数は、小説が477(279)、ミステリーが276(172)、ファンタジーが242(194)、経済・実用が133(99)、ノンフィクションが130(90)、オピニオンが115(22)、エッセイが59(31)、雑誌が11(4)、その他が144(109)です。
 カッコ内の数字は、レビュー記事1000本の時に集計した値で、比較することで直近500本の傾向が分かります。ファンタジーが減って(2番目に多かったのに4番目になりました)、オピニオンがすごく増えました(2%しかなかったのに16%になりました)。

 作家さん別の記事数では、伊坂幸太郎さん48、有川ひろさん40、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさん37、三浦しをんさん26、東野圭吾さん26、上橋菜穂子さん25、恩田陸さん23、森見登美彦さん22、梨木香歩さん21、村上春樹さん19、塩野七生さん19の順でした。

 今回は、テキストマイニングツールという、文章の分析をしてくれるツールに、レビュー記事のテキストを読み込ませてみました。文字数が約133万文字、単語数が約83万語でした。もはや実感をうまく掴めませんが「とにかくたくさん」書いてきたことは分かりました。「頻出単語と関連」も調べましたが、これはどう見たらいいのか?これからゆっくり眺めてみたいと思います。

 集計を自分のために一枚のシートにまとめました。集計結果

 最後に。いつも言っていることですが、こうして本が読めるのは、暮らしに大きな支障がないからです。そのことは本当にありがたく思っています。その幸せを感じつつ、これからもレビュー記事を積み重ねていきたいと思います。

52ヘルツのクジラたち

著 者:町田そのこ
出版社:中央公論新社
出版日:2020年4月25日 初版 7月5日 4版 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。

 子どもがつらい目に会う話が苦手なので、読むのがつらかったのだけれど、読んでよかったと思った本。

 主人公は三島貴瑚、26歳。友人たちの誰にも言わずに東京から大分の小さな海辺の町に引っ越してきた。携帯電話も解約して。周辺の住人の間では「東京から逃げてきた風俗嬢でヤクザに追われている」という噂が立っている。

 貴瑚が、ある雨の日に出会った中学生の濡れそぼった体は、やけに薄汚れていた。ここで別れてはいけない気がして家に連れて帰ったその子の、肋骨の浮いた痩せた体には、模様のように痣が散っていた。それは貴瑚が見慣れた色だった..。

 物語は、貴瑚がこの中学生と関わることで、一旦は自ら手放した「人と関わること」を取り戻していく様を描く。貴瑚が抱える過去はとても重いものだ。「人と関わること」を手放すに至る事情も重い。この中学生の境遇も負けず劣らず重い。この物語の大半が重い空気に包まれている。

 かなりヘビーな本だった。読むのがつらくて途中で本を閉じてしまいたくなる。それでも最後には明かりが見える。ひどい人間がたくさん出てくるけれど、善良で力強い人も闇を照らす明かりのよう登場する。壮絶な人生を送ってきたけれど、それでも貴瑚は人に恵まれた方なのだろう。読者もそのことで救われる。

 最後にタイトル「52ヘルツのクジラたち」について。クジラは海中で歌を歌うように、鳴き声を出して仲間に呼びかける。その音の周波数はだいたい10~39ヘルツ。しかし52ヘルツのクジラの鳴き声が実際に定期的に検出されているそうだ。その声は、広大な海の中で誰にも受け止めてもらえない。「世界でもっとも孤独なクジラ」と呼ばれている。

 この本は、そのクジラと同じように「受け止めてもらえない声を発している」人たち、そして「その声を受け止めた」人たちを描いた物語。

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2020年の「今年読んだ本ランキング」を作りました。

 恒例となった「今年読んだ本のランキング」を作りました。小説部門、ビジネス・ノンフィクション部門ともに10位まで紹介します。このランキングも今年で12年目。干支がひと回り。生まれた赤ちゃんが小学校を卒業するまでの時間です。
  (参考:過去のランキング 2019年2018年2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年

 今年このブログで紹介した本は101作品でした。☆の数は、「☆5つ」が4個、「☆4つ」が55個、「☆3つ」は38個、「☆2つ」が4個、です。
 「☆5つ」「☆2つ」の一番上と下の評価は昨年と同じ数で、「☆4つ」は一つ多く「☆3つ」は2つ少なくなりました。毎年同じような数に落ち着くのが不思議です。今年は感染症のせいで落ち着かない年になってしまいましたが、私の読書は「例年並み」をキープできました。ありがたいことです。

■小説部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
1 熱源 / 川越宗一 Amazon
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明治から昭和にかけての北海道、サハリンなどの北の大地を舞台に、樺太出身のアイヌら複数の半生を描く群像劇。「私は何者か?」を問うテーマの訴求力と、実話を基にした物語の構成力に圧倒される。
2 書店ガール3 託された一冊 / 碧野圭 Amazon
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書店員の女性2人が主人公のシリーズ第3巻。そのうちの1人がエリア・マネージャーに昇格し、仙台の書店も担当に。物語の背景に東日本大震災があり、「あの時自分は」と「あれから自分は」を考えさせる。
3 満天のゴール / 藤岡陽子 Amazon
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10歳の息子を連れて実家に帰ってきた女性が主人公。廃屋が点在する寂れた土地で、地域で唯一の総合病院がなんとか支えている地域医療に携わることになった。そこで出会った人々やその人生を描く。
4 天上の葦(上)(下) / 太田愛 Amazon
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物語の発端は渋谷の駅前のスクランブル交差点。信号が変わって無人であるべきその真ん中で、青空を指さして老人が絶命した。大きくは「権力と民主主義」をテーマとした緊迫感に満ちたミステリー。
5 少年と犬 / 馳星周 Amazon
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日本の各地の様々な人々を描く6編の連作短編。すべてに1頭の犬が登場する。犬が出会う人々は決まって問題を抱えている。犬だからセリフはない、ほとんど吠えもしない。でもその存在感は圧倒的。
6 常設展示室 / 原田マハ Amazon
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人生の岐路に立つ人々を描いた6編の短編集。どの短編にも世界各地の美術館で常設展示されている、著名な絵画が登場する。その絵画に絡めて、人生や家族に関わる機微をシャープにしかし優しく描く。
7 線は、僕を描く / 砥上裕將 Amazon
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水墨画の大家に弟子入りすることになった大学生が主人公。その水墨画修行を描く。実は主人公には水墨画に向かう「必然」とも言える事情があった。「紙に一本の線を引く」ことの意味を考える物語。
8 いつかの岸辺に跳ねていく / 加納朋子 Amazon
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生まれた時からの幼馴染の男女が主人公。でも恋とか愛とかとは無縁。とは言ってもやっぱりお互い意識して、という甘酸っぱい話だと思ったら、後半はキリキリと引き絞るような緊張感が漂う展開に。
9 マチネの終わりに / 平野啓一郎 Amazon
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天才ギタリストの男性と通信社の記者の女性の物語。物語の始めには38歳と40歳。女性には婚約者がいた。それでも互いの思いは募る。ドロドロしがちな大人の恋愛を美しく描いたラブストーリー。
10 イマジン? / 有川ひろ Amazon
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連続ドラマの制作アルバイトとして働く若者を主人公に、映像制作の現場を描く。監督、スタッフ、キャストが個性的な面々で、爽快なエンターテインメントになっている。社会への問題提起もある。

 今年の第1位の「熱源」は、北海道と樺太、果ては南極と極寒の地を舞台としているのに、とても熱量を感じる壮大な作品でした。この作品と5位の「少年と犬」は、ともに直木賞受賞作です。私と直木賞は相性がいいようです。

 第2位の「書店ガール3」は、書店を舞台としたシリーズものの第3巻です。2人の女性の書店員が生き生きと描かれている人気シリーズですが、本作はこれまでより飛び抜けて心に残りました。東日本大震災が背景に描かれています。あの震災は多くの作家さんに大きな影響を与えたようです。

 第3位「満天のゴール」は、地域医療の現場を描いた作品です。病院まで車で1時間とか2時間とかかかる集落にお年寄りが住んでいる。私事で恐縮ですが、私の父は私がこの本を読んだ2か月後に亡くなりました。読んでいる時は他人事とは思えず身につまされました。

 選外の作品として、 小野不由美さん「白銀の墟 玄の月」、阿部智里さん「楽園の烏」の、2つの人気ファンタジーシリーズの最新刊、恩田陸さん「祝祭と予感」、原田マハさん「キネマの神様」が候補になりました。

■ビジネス・ノンフィクション部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
1 あいちトリエンナーレ「展示中止」事件 / 岡本有佳 アライ=ヒロユキ Amazon
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「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」が展示中止を強いられた事件の克明な記録。「表現の自由を侵す側」対「守る側」という分かりやすい対立構造ではなかったことが分かる。
2 ほんとうのリーダーのみつけかた / 梨木香歩 Amazon
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著者が、2015年当時の社会情勢に危機感を抱いて、若者に送ったメッセージ。それは「社会などの群れに所属する前に、個人として存在すること。盲目的に相手に自分を明け渡さず、自分で考えること」
3 精神科医・安克昌さんが遺したもの / 河村直哉 Amazon
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阪神大震災において、精神科救護所・避難所などで、カウンセリング・診療などを行った医師の記録。震災時だけでなく「その後」の生き方も含めて。心の傷と癒しについて大切なことを教えてくれる。
4 13坪の本屋の奇跡 / 木村元彦 Amazon
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1冊の本を3ケタを優に超える売り上げを出す、大阪の「町の本屋」を追ったノンフィクション。「町の本屋」の苦境のウラには、私たちが知らない書籍流通の悪弊があった。その解消のための闘いの記録。
5 ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー / ブレイディみかこ Amazon
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英国在住の日本人の著者によるエッセイ集。父が英国の白人、母が東洋人というアイデンティティを持った英国の中学生の暮らしを生き生きと描く。英国のことを読みながら、日本のことを考えさせられる。
6 日本の文化をデジタル世界に伝える / 永﨑研宣 Amazon
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日本の文化に関する紙の資料を、デジタルの世界で情報として流通させることの考察。デジタルアーカイブの事業について、考え方から実践・評価まで幅広く、かつ要点を抑えてコンパクトに収めた本。
7 汚れた桜 「桜を見る会」疑惑に迫った49日 / 毎日新聞「桜を見る会」取材班 Amazon
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うやむやのままに忘れられそうになっていた「桜を見る会」疑惑についての詳細なレポート。「明恵夫人の推薦枠」「前夜祭の明細書」「招待者名簿の破棄」などの様々な疑惑を記録し論点を整理している。
8 新聞記者・桐生悠々忖度ニッポンを「嗤う」 / 黒崎正己 Amazon
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満州事変後に世論が軍部支持の一色だったころに、新聞の社説で「関東防空演習」の無意味さ嗤ってみせた記者「桐生悠々」について書いた本。90年前と現代を重ねて、現代の危機と教訓を浮かび上がらせる。
9 女性のいない民主主義 / 前田健太郎 Amazon
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日本では圧倒的に男性の手に政治権力が集中している。それはなぜなのか?それなのに日本が民主主義の国とされている。それはなぜなのか?という問題意識から、ジェンダーを視点にして社会を見直した本。
10 となりの難民 / 織田朝日 Amazon
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突然に収容が決まる。弁護士もつかず身一つで収容される。持病の薬も持ち込めない。期限が決まっていない。在留資格のない外国人「非正規滞在者」を収容する「外国人収容施設」の実態を伝えるレポート。

 第1位の「あいちトリエンナーレ「展示中止」事件」は、報道をなんとなく見ているだけでは分からない、「事件の真相」を垣間見ることができました。「分かりやすい構図」が示されても、そういう時こそ気をつけないといけません。

 さらに4位の「13坪の本屋の奇跡」や10位の「となりの難民」には、おそらくほとんど報道されていない事実が書かれていました。私たちの国や社会は、私たちから見えないところで別の顔を見せているようです。

 第2位の「ほんとうのリーダーのみつけかた」、第7位の「汚れた桜 「桜を見る会」疑惑に迫った49日帝国の慰安婦」、第8位「新聞記者・桐生悠々忖度ニッポンを「嗤う」」は、安倍政権下の日本の社会に危機感を感じた本です。政権は変わりましたが状況がよくなったとは言えません。

 第3位の「精神科医・安克昌さんが遺したもの」は、神戸で生まれ育った私には特別の意味がありました。著者は新聞社の記者だそうですが、よくぞこれだけ取材し原稿を書き、そして一旦は封印したものを出版してくれました。

 選外の作品として、岩田健太郎さんの「新型コロナウイルスの真実 」、内田樹さんの「サル化する世界」、永松茂久さんの「人は話し方が9割」が候補になりました。

書店ガール2 最強のふたり

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2013年4月1日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 重労働で大変なお仕事だとは知っているけれど、書店員っていい職業だなぁと思った本。

 「書店ガール」の続編。主人公は前作と同じで西岡理子と小幡亜紀の2人。舞台も書店であることは同じだけれど、店は変わっている。前作で二人が勤めていた「ペガサス書房吉祥寺店」は、理子と亜紀ら店員の奮闘にも関わらず閉店となり、半年後にオープンした「新興堂書店吉祥寺店」に移っている。理子はスカウトされた形で店長に、亜紀は文芸書担当の正社員として採用された。

 理子は42歳。亜紀は29歳。前作では衝突の絶えなかった二人だけれど、本書ではいい関係が築けている。理子は亜紀を信頼しているし、亜紀は理子を尊敬している。勤め先の書店が大型書店チェーンになって労働環境が良くなったこと、亜紀が仕掛けた本が評判となって本屋大賞を受賞するなど、文芸書担当としての書店員として認められ充実していることも、二人の関係にいい影響を与えているのだろう。

 物語の初めの方で亜紀の妊娠が分かる。そのことで夫の保守的な面が顕わになる。「子供が三歳になるまでは母親の手で育てた方がいいっていうのは、常識だろ」とか言うのだ。亜紀は亜紀で「いずれは子供をと思ってはいたけれど、もうちょっと後がよかったな」というのが本音。業界的な繋がりも広がりつつあり、仕事が面白くて仕方ない時期で、ここで半年、一年休んでしまったら..という不安がある。

 この亜紀の妊娠や夫との関係を折々に描きながら、物語は多くのテーマを取り込みながら進む。書店業界全体の停滞。大型書店と中小の書店の間の齟齬と協調。言葉狩りのような言論空間の閉塞と不寛容。そんな中で協力し味方になってくれる仲間の有難さ。出版に携わる者の喜び。そして理子の恋愛模様まで。

 面白かった。ほぼ一気読み。ストーリーの本筋からは少し離れているのだけれど、心に残った場面がある。物語の中にいろいろな書店が「五十年後にも残したい本」を選ぶ、というところ。私はその書名を興味津々で追った。「あの本が選ばれてる!」とか思いながら。

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勝手に予想!2020本屋大賞

 明後日4月7日(火)に本屋大賞が発表されます。10作品がノミネートされていて、今年はそのすべての作品を読むことができました。

 その10作品は「線は、僕を描く」「店長がバカすぎて」「夏物語」「熱源」「ノースライト」「むかしむかしあるところに、死体がありました。」「ムゲンのi」「medium霊媒探偵城塚翡翠」「ライオンのおやつ」「流浪の月」です。

 何度も予想して一度も大賞が当たったことがないのですが、懲りずに今年も、私の予想を発表します。

 大賞:「熱源」 2位:「流浪の月」 3位:「線は、僕を描く」 4位:「ノースライト」

 「熱源」は、明治から昭和初期にかけての、樺太のアイヌや祖国を失ったポーランド人らの群像劇で、「自分は何者か?」を問う骨太の群像劇です。正直にって他の作品とは一線を画す秀作だと思います。直木賞も受賞していることが気がかりですが、過去にもダブル受賞の例があるので。

 「流浪の月」は、幼児誘拐事件と、その被害者の「その後」を描いた作品です。事件があると、私たちは分かりやすい説明を求めます。本書は、その世間が納得しやすい分かりやすい説明と事実のギャップを浮き彫りにしたものです。

 「線は、僕を描く」は、著名な水墨画家に弟子入りした大学生の物語です。白い画仙紙に墨だけで描く水墨画の世界が、主人公自身の境遇や成長とともに、魅力的かつユーモラスに描かれています。先輩たち登場人物も魅力的でした。

 「ノースライト」は、一級建築士を主人公とした一家失踪事件を追うミステリーを入口にした、様々な要素が縦横に絡む人間ドラマです。入口から予想したものとはずい分違うところに着地して、心地よく裏切られました。

 最後に少し苦言を呈します。ノミネート10作品に「子どものころの出来事のトラウマ」を扱う作品が多いのです。

 主人公に関して、目前で肉親が殺される作品が2つ、両親の突然の死で心に傷を負う作品が1つ、性的虐待を受ける作品が1つ。主人公が父親に叩かれ、別の登場人物が性的虐待を受けている作品が1つ。つまり半数の5作品が「トラウマ」を描いている。(残りの5作品でも、子どものころの父の死がストーリーに絡む作品が1つ、両親が亡くなっている作品が1つ。)

 本屋大賞は、個々の書店員さんの投票によってノミネート作品が決まりますから、総体としての意思があるわけではありませんが、「書店員はトラウマがそんなに好きなのか?」と思わずにいられませんでした。

—-2020.4.7 追記—-

 大賞は「流浪の月」2位「ライオンのおやつ」3位「線は、僕を描く」4位「ノースライト」で5位が「熱源」でした。私の予想の大賞は5位だけれど、2位が大賞、3位と4位は的中です。かなりいいセンいったんじゃないでしょうか。

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2019年の「今年読んだ本ランキング」を作りました。

 恒例となった「今年読んだ本のランキング」を作りました。小説部門、ビジネス・ノンフィクション部門ともに10位まで紹介します。このランキングも今年で11年目。新しい10年の最初の年ととして、新たな気持ちで向き合いたいと思っています。
  (参考:過去のランキング 2018年2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年

 今年このブログで紹介した本は102作品でした。☆の数は、「☆5つ」が4個、「☆4つ」が54個、「☆3つ」は40個、「☆2つ」が4個、です。
 「☆5つ」「☆4つ」は昨年より1つずつ多く、「☆3つ」「☆2つ」は昨年と同じ数です。特に意図していないのに、毎年同じような数に落ち着くのが不思議です。今年も読書を楽しめました。

■小説部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
美しき愚かものたちのタブロー / 原田マハ Amazon
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傑出した美術コレクションである「松方コレクション」にまつわる物語。コレクションを遺した松方幸次郎その人と、そのアドバイザーを務めた美術史家を中心に「日本に美術館を創る」という強い想いを描く。
傲慢と善良 / 辻村深月 Amazon
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婚約者が突然失踪した39歳の男性が主人公。婚約者はストーカー被害にあっていた。主人公は失踪との関係と彼女の行方を調べるために彼女の出身地の群馬に。その過程で彼女と自分との間の溝が浮き彫りになる。
宝島 / 真藤順丈 Amazon
商品ページへ
返還前の沖縄の20年間を、アメリカ軍の倉庫から資材や食料などを盗み出してくる「戦果アギヤー」たちの目で描く。冒頭から主人公たちが疾走していて、そのままの勢いで物語が奔流のように流れる。
鹿の王 水底の橋 / 上橋菜穂子 Amazon
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医療を主なテーマにしたファンタジー。先進的な医療技術と、宗教を根本とした医術。2つを対峙させて「医療とはどうあるべきか?」を、民族の存亡、愛する人への想い、などのテーマとともに重層的に描く。
彼女は頭が悪いから / 姫野カオルコ Amazon
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2016年に起きた「東大生強制わいせつ事件」に着想を得たフィクション。後に加害者と被害者になる男女を主人公に、それぞれの「青春」を描き、そして「事件」が起きる。様々な意味で物議をかもした問題作。
愛なき世界 / 三浦しをん Amazon
商品ページへ
洋食屋の店員の男性が、T大理学部の大学院生の女性に恋をした、でも彼女は「植物の研究にすべてを捧げる」と決めている、という物語。影響を与え合う2人や、他のキャラクターのエピソードがとても心地いい。
テミスの休息 / 藤岡陽子 Amazon
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個人事務所を開いた弁護士の男性と、その弁護士事務所の事務員の女性の物語。事務所で受けた相談の経過を語りながら、2人のこととそれぞれのことを描く。「信頼できる人と一緒にいる」ことの安らかさを感じる。
さざなみのよる / 木皿泉 Amazon
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富士山の近くで生まれ、20代で東京に出て、故郷に戻って43歳で亡くなった女性。生前に関係のあった人々が主人公の14話の連作短編。それぞれの話から浮かび上がる女性はとてもチャーミングな人だった。
下町ロケット ヤタガラス / 池井戸潤 Amazon
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「下町ロケット」シリーズの第4作。前作「下町ロケット ゴースト」と一体の物語。日本の農業を救うかもしれない「無人農業ロボット」の開発を軸に、「何のための技術開発か?」という根源的なテーマを描く。
10 ベルリンは晴れているか / 深緑野分 Amazon
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第二次世界大戦終戦直後のドイツ、ベルリンが舞台。主人公は17歳のドイツ人の少女。ソ連の秘密警察から殺人の疑いのある人物を探すように命じられる。場面の描写が詳細で映像を見たように光景が浮かぶ。

 今年の第1位「美しき愚かものたちのタブロー」の原田マハさんは、一昨年は「暗幕のゲルニカ」で5位に、昨年は(10年以上前の作品ですが)「カフーを待ちわびて」で2位。すっかり私の好きな作家さんになりました。

 第2位の「傲慢と善良」は、予想外の展開に翻弄されましたが、最後にはしっかり着地しました。「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」と似た二部構成がそれを可能にしていると思います。ただ「予想外」と思うのは男性だけで、女性なら最初から分かる、という意見もあります。

 第3位「宝島」は、直木賞受賞作。返還前の沖縄を「内側から描いた」作品です。私たちが接する沖縄の情報は、本土からさらに言えば東京から、つまり外側から描かれたものですが、内側の視点では違うものが見えているのだろうなぁ、と思いました。

 選外の作品として、 門井慶喜さん「銀河鉄道の父」、夏川草介さん「新章 神様のカルテ」、伊坂幸太郎さん「クジラアタマの王様」が候補になりました。

■ビジネス・ノンフィクション部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
武器としての世論調査 / 三春充希 Amazon
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世論調査をはじめとする政治に関する様々な調査データを、自然科学のデータ処理の方法を活かして、精緻に分析した本。「内閣支持率が実感と違う」と思う、私の違和感の理由がこれで晴れました。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) / ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング Amazon
商品ページへ
世界の様々な事実を、私たちがどれだけ誤認しているかを知らせてくれる。報道で知る「世界」は、センセーショナルな方向への偏りがあって、多くの人が悲観的に捉えている。そのことを知る必要があると思いました。
戦争の記憶 コロンビア大学特別講義-学生との対話- / キャロル・グラック Amazon
商品ページへ
第二次世界大戦を各国の人がどう記憶しているのか?をテーマとした、日本、中国、韓国、アメリカ、カナダ、インドネシアの学生との対話を収録。各国で「自国に都合が良い記憶」が政治に利用されていることが分かります。
帝国の慰安婦 / 朴裕河 Amazon
商品ページへ
いわゆる「慰安婦問題」について、感情や政治的立場を排して、事実に忠実にあろうと努めた報告書。日韓の間はもちろん、国内でも主張が対立しているけれど、どの主張も問題を不用意に「単純化」していると分かります。
「決め方」の経済学 「みんなの意見のまとめ方」を科学する / 坂井豊貴 Amazon
商品ページへ
多数決は人々の意思をまとめて集団としての決定を与えるのに適しているのか?という問いに答えた本。多数決は二択の投票以外には向いていない、もっと優れた決め方がいくつもある、ことが分かります。
命に国境はない 紛争地イラクで考える戦争と平和 / 高遠菜穂子 Amazon
商品ページへ
著者は2004年の「イラク日本人人質事件」の人質の一人。今もイラクで人道支援をしています。イラクの現状と日本やアメリカの見え方を、現地に身を置いて伝える。私たちが知っていることとは、まったく違いました。
PTAのトリセツ~保護者と校長の奮闘記~ / 今関明子 福本靖 Amazon
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神戸市の中学校で実際に成し遂げた「PTA改革」の報告。ネガティブな文脈で語られることの多く、不要論まで言われるPTAについて、「ではどうすればいいのか?」という答えがここにあります。
絵を見る技術 / 秋田麻早子 Amazon
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「名画をちゃんと見られるようになりたい」という人のために、絵画の見方を「絵画の構造」の視点から説明。「バランスがいいな」と感じるのはどうしてか?を言葉にできます。この次に美術展に行くのが楽しみになりました。
物語と歩いてきた道 / 上橋菜穂子 Amazon
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著者が30歳から53歳までの間に書いたエッセイ、インタビュー、スピーチを14編収録した本。物語作品に比べると長くは残らない文章を、「足跡」として集めることで、著者が辿って来たくねくね道が浮かび上がります。
10 55歳からの時間管理術 「折り返し後」の生き方のコツ / 齋藤孝 Amazon
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「無理がきかなくなる」「社会的な立ち位置に変化がある(暇になる)」のが、だいたい55歳ぐらい。そうなったときに時間をどう使えばいいのか?人生100年時代の後半生の「コツ」や「心構え」を指南してくれる。

 第1位「武器としての世論調査」、第5位「「決め方」の経済学」は、どちらも選挙制度に関わる作品です。ここ何回かの国政選挙の結果に大きな違和感を私が感じていて、その気持ちがこれらの本を読むきっかけになりました。違和感の原因が相当程度明らかになりました。

 第3位「戦争の記憶」、第4位「帝国の慰安婦」、第6位「命に国境はない」は、どれも「戦争」に関する本です。そして「戦争の記憶」で主テーマになっている「それぞれに都合の良い記憶」のことが書かれています。それは、第2位「FACTFULNESS(ファクトフルネス」に、さらには第9位「物語と歩いてきた道」に書かれた「他社への理解」にまで通じています。

 選外の作品として、広野郁子さんの「「60点女子」最強論 」、伊藤羊一さんの「1分で話せ」、朽木ゆり子さんの「消えたフェルメール」が候補になりました。

真田忍者で町おこし

著 者:くノ一美奈子
出版社:芙貴出版社
出版日:2019年9月14日
評 価:☆☆☆☆(説明)

 忍者の実在を強く実感した本。

 著者のくノ一美奈子さんは長野県上田市の温泉旅館の女将さんで、真田忍者をテーマとした街の活性化の活動に取り組んでおられる。2015年から地元の新聞に連載をはじめ、本書はその連載を基に加筆修正を行って、5年間の活動をまとめたもの。

 全7章。第1章で「町おこし」のことを語り、第2章で「忍者食」を研究、第3章で「忍者の修行」を現代のスポーツにつなげ、第4章で「真田忍者のルーツ」を史書によって探求、第5章は「くノ一」の考察、第6章は「真田家の歴史」を忍者を軸にして俯瞰、第7章で「真田十勇士と立川文庫」を研究。変幻自在。「忍者」というワンテーマを入口にして、その奥に、これほどの豊饒な世界が広がっているのに驚く。

 全編にわたって興味深いことが書かれているのだけれど、特別に強い印象が残ったのが、第4章に含まれる「伊与久一族」に伝わる伝承。伊与久一族は、真田忍者である「吾妻衆」の一翼を担った家系。この文章は伊与久家の末裔である伊与久松凮氏の特別寄稿。そこには松凮氏が祖母から伝えられた伝承と、自身が身をもって体験した体術などの修行が記されている。

 「特別寄稿」を強調したのでは著者に申し訳ないけれど、これも著者の熱心な活動あっての寄稿だと思う。私はこれで忍者の実在(それも現代まで続く)を強く実感した。

 巷に流れる風聞に、外国人に「忍者って本当にいるのか?」と聞かれたら「最近はとても少なくなった」と答えると喜ばれる、というのがある。私はこれからは自信と実感を持って答えられる。「とても少なくなった」と。

 Amazonでの取り扱いがないようなので、興味を持たれた方は、出版社の芙貴出版社(TEL 0261-85-0234)にお問い合わせください。

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2018年の「今年読んだ本ランキング」を作りました。

 恒例となった「今年読んだ本のランキング」を作りました。小説部門、ビジネス・ノンフィクション部門ともに10位まで紹介します。
 このランキングも今年で10年目です。これで小説部門は100作品、ビジネス・ノンフィクション部門は75作品を、選んできたことになります。
  (参考:過去のランキング
2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年

 今年このブログで紹介した本は102作品でした。☆の数は、「☆5つ」が3個、「☆4つ」が53個、「☆3つ」は40個、「☆2つ」が4個、「☆1つ」が2個、です。
 「☆5つ」は、この数年は3個か4個で安定しています。「☆4つ」「☆3つ」もたいたいこのぐらいの割合で、今年も読書を楽しめました。「☆1つ」を付けたのは10年ぶりです。

■小説部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
みかづき / 森絵都 Amazon
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昭和の高度成長期に、理想を持って学習塾を立ち上げた創始者夫婦と、その一族三代の大河小説。大らかな夫と意思の強い妻、その血を受け継いだ子ども達が、衝突しながらも支え合うドラマ。
カフーを待ちわびて / 原田マハ Amazon
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沖縄の離島の海と空、ゆったりとした時間を背景にしたラブストーリー。商店を営む男性と、遠くから来て住み込みで働く若い女性の暮らしぶりを描く。デビュー作にして完成度の高い作品。
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ / 辻村深月 Amazon
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殺人を犯して逃走中の幼馴染を案じて、その行方を捜すライターが主人公の第一部と、逃走中の幼馴染が主人公の第二部からなる二部構成。ミステリーと女友達の人間ドラマの2つが楽しめる。
また、同じ夢を見ていた / 住野よる Amazon
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主人公は小学生の少女。他人にどう思われようが、正しいと思ったことをする。学校に友だちはいないけれど、町には親しくしている大人がいる。少女の成長を感じる物語。大仕掛けあり。
キッチン風見鶏 / 森沢明夫 Amazon
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港町にある洋食屋が舞台。その従業員やお客さんが入れ替わりで主人公を務める。その何人かは幽霊や守護霊が見える。たくさんの物語が同時に進む「誰かを思いやる心」を描いた作品。
最果てアーケード / 小川洋子 Amazon
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使用済みの絵葉書や人形用の義眼など、売れそうもない品々のお店が集まるアーケードが舞台。お店ごとのエピソードを積み重ねていくと「何かが少しだけおかしい」という思いが募る。
原発ホワイトアウト / 若杉冽 Amazon
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現役キャリア官僚のリアル告発ノベル。原発推進のありようを小説の形で伝える。集金・献金システムや、デモ潰しの手法は、具体的で説得力がある。昨今のニュースで思い当たる節もある。
百貨の魔法 / 村山早紀 Amazon
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50年続く地方の老舗百貨店が舞台。従業員やテナントの店員らが入れ替わりで主人公になる。その一人ひとり、お客さんの一人ひとりの物語を、百貨店に伝わる子猫の伝説とともに丁寧に紡ぐ。
盤上の向日葵 / 柚月裕子 Amazon
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将棋の駒と一緒に、山中で発見された死体遺棄事件の捜査に携わる刑事が主人公。捜査の進展と容疑者の生い立ちを並行して描く。将棋の棋士の勝負の世界と、人間の深い業を描いたドラマ。
10 マスカレード・ナイト / 東野圭吾 Amazon
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高級ホテルが舞台のミステリーシリーズ第3弾。殺人の犯人が仮装パーティーに現れる、という密告状が届き、刑事がクラークとなって捜査にあたる。コンシェルジュの仕事ぶりも見どころ。

 今年の第1位「みかづき」は、昨年の本屋大賞の第2位。本屋大賞の関連では、第8位の「百貨の魔法」は今年の本屋大賞の第9位、第9位の「盤上の向日葵」は同じく第2位と、私と本屋大賞は相性がいいらしいです。(ちなみに昨年、私が第1位にした「かがみの孤城」は、今年の本屋大賞でも第1位になりました)

 第2位の「カフーを待ちわびて」は、著者のデビュー作で10年前の作品です。「暗幕のゲルニカ」「楽園のカンヴァス」「サロメ」「たゆたえども沈まず」のアートミステリー作品で、ファンになりましたが、ラブストーリーのこの作品もすごく好きです。続編の「花々」と併せて楽しんでいただきたいです。

 第4位「また、同じ夢を見ていた」、第5位「キッチン風見鶏」、第6位「最果てアーケード」、第8位「百貨の魔法」は、「不思議+ハートウォーム」な作品で、私はそういうのが好物のようです。

 選外の作品として、 今村昌弘さん「屍人荘の殺人」、碧野圭さん「書店ガール」、石田衣良さん「うつくしい子ども」、三上延さん「ビブリア古書堂の事件手帖」が、心に残りました。

■ビジネス・ノンフィクション部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
「南京事件」を調査せよ / 清水潔 Amazon
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「南京事件」「南京大虐殺」について、調査報道の手法で取り組んだレポート。関係者から話を聞き、資料や記録を調べ、分かったことを別の方法で「裏取り」する。渾身の力を込めた報告
AI vs. 教科書が読めない子どもたち / 新井紀子 Amazon
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「いずれは万能に」と思われがちなAIが、実は「意味は分かっていない」と、その限界を指摘。その一方で、今の中高生も大半は同じように「文章の意味が分かっていない」ことも明らかに。
世界の中で自分の役割を見つけること / 小松美羽 Amazon
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気鋭の現代アーティストである著者が、自分の半生と自分に与えられた「役割」について記したもの。この本を通じて「あなたのこれから」を見つけて欲しい、という祈りが込められている。
安倍官邸vs.NHK / 相澤冬樹 Amazon
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「森友学園問題のスクープを連発して左遷されたNHKの記者」が著者。著者がどう取材して、どう報じられたか(報じられなかったか)を記すことで、この問題とNHKの異常さを浮かび上がる。
日本が売られる / 堤未果 Amazon
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「規制改革」の名の下に、「水」「土」「農地」「森」「海」「学校」「医療」「食の選択」が、値札を付けられて売られる。「日本で今、起きているとんでもないこと」が書かれている。
マーケットでまちを変える / 鈴木美央 Amazon
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普段は道や公園などの場所に、ある期間だけ仮設テントなどのお店が集まってお客さまを迎える「マーケット」。「日本中のまちを、マーケットから変えていく」。それができそうに感じる本。
フェルメール最後の真実 / 秦新二、成田睦子 Amazon
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フェルメールの作品に「旅をさせる」(所蔵館から借り出す)ことの実際を、臨場感のある筆致で記したもの。現存する37作品すべてをカラーで掲載、来歴などを含めて解説。実物が見たくなる。
スノーデン 監視大国 日本を語る / 自由人権協会 Amazon
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「デジタル時代の監視とプライバシー」をテーマに、スノーデン氏のインタビューを含む、講演、パネルディスカッションを収録。日本では捜査機関の監視を制限する法律がないことを指摘。
日本史の内幕 / 磯田道史 Amazon
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歴史学者の著者による、古文書にまつわるエッセイ集。ほぼすべてのエッセイに、根拠となる古文書を示し、その意気込みが伝わる。日本の出版文化、災害からの再起など、テーマは深く広い。
10 赤松小三郎ともう一つの明治維新 / 関良基 Amazon
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「全国民に参政権を与える議会の開設」「法の下の平等」など、現行憲法につながる憲法構想を日本で初めて提案した、赤松小三郎の研究書。赤松にだけでなく、憲法観にも新しい光を当てる。

 第1位「「南京事件」を調査せよ」、第4位「安倍官邸vs.NHK」、第5位「日本が売られる」は、ジャーナリストによる作品です。ここ数年、ジャーナリズムに対する期待と不安を感じていますが、このように骨太な報告が出版されることに、小さな安心を感じました。

 第2位「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」は、深刻な問題提起を含んでいると思います。本書では「中高生」ですが、調査をすれば大人も同様の結果なのではないでしょうか?つまり「文章を読んでも意味が(正確に)理解できない」。様々な場面で対話がまともに成り立たないのは、このせいではないかと思います。

 第3位「世界の中で自分の役割を見つけること」、第6位「マーケットでまちを変える」は、何かに真剣に打ち込み結果を出している人の「確かさ」を感じます。その姿を見て、自らのことを顧みると、やりたいこと、やった方がいいことが浮かんで、少し力づけられます。

 選外の作品として、小室淑恵さんの「働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社」、鈴木博毅さんの「「超」入門 空気の研究」、小西美穂さんの「小西美穂の七転び八起き」が、良かったです。特に「働き方改革」は、私の「これから」につながりそうな気がします。