23.森見登美彦

四畳半タイムマシンブルース

書影

著 者:森見登美彦 原案:上田誠
出版社:KADOKAWA
出版日:2016年12月16日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 久しぶりの森見登美彦さんの「腐れ大学生もの」と思ったら意外と爽やか、という本。

 森見登美彦さんの新刊。2018年の「熱帯」1年半あまり。安定したペースで新刊が出て、ファンとしてはとてもうれしい。著者の作品にはいくつかの系統があるのだけれど、本書は「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」に連なる物語。

 主人公は京都の大学生である「私」。冒頭に「ここに断言する。いまだかつて有意義な夏を過ごしたことがない」というように、基本的にはダラダラと暮らす腐れ大学生。でも今回は腐れ大学生ながら、後輩の明石さんの映画制作に協力して撮影の手伝いを買って出る。明石さんは映画サークルに所属していて「ポンコツ映画」を量産している。

 事件は、明石さんの映画撮影が終わって、銭湯に行って下宿の学生アパート「下賀茂幽水荘」帰ってきた時に起きた。「私」の部屋には、アパートで唯一クーラーがあるのだけれど、そのリモコンが壊れてクーラーがつかなくなってしまった。京都の夏はオーブンの中のような灼熱の夏だ。

 そのちょっと前から変だった。下宿に帰ってきたら、皆が待ち構えていて「さっき話してたとおり、裸踊りをやれ」という。なにが「さっき話してた」なのかさっぱり分からない。変なことは他にもある。明石さんが撮影した映像を見返すと、なんと悪友の小津が二人映っている...。

 すごくおもしろかった。タイトルに「タイムマシン」とあるように「タイムスリップもの」。まぁドタバタと時間をあっちに行ったりこっちに行ったり。最初は「壊れる前のリモコンを取りに昨日へ..」というちっちゃい話だったのに、どんどんと広がって「全宇宙の崩壊」の危機に..。

 すごくおもしろかったんだけど、ちょっとした違和感もあった。時間が行ったり来たりで結構複雑なのに、話がこんがらがらない。いやもちろん、それはいいことだ。しかし、著者のこれまでの作品でも、同じ時間を繰り返したり、物語を入れ子構造にしたり、プロットが複雑なものが時々あるのだけれど、読んでいる私がその複雑さの中で迷子になってしまう、ということがよくあった。(まぁその迷子状態が、むしろ好きだったのだけど)

 今回はそういうことがない。そこで何気なく見過ごした表紙の「上田誠-原案」という文字を思い出した。上田誠さんというのは、アニメ「四畳半神話大系」の脚本を担当された劇作家で、本書の原案は上田さんの劇団「ヨーロッパ企画」で上演されていた「サマータイムマシン・ブルース」とのこと。なるほど。舞台で演じているのを見ても分かるぐらいに、プロットが練られていた、ということらしい。

 瑛太さん主演、ヒロイン上野樹里さんの映画「サマータイムマシン・ブルース」も観た。こちらも面白かった。

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美女と竹林のアンソロジー

書影

著 者:森見登美彦、伊坂幸太郎、恩田陸、有栖川有栖、京極夏彦 ほか
出版社:光文社
出版日:2019年1月30日 初版1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

知っている作家さん、初めての作家さん、いろいろな作家さんのテイストが楽しめる、詰め合わせギフトのような本だった。

本書は、「竹林愛好家」の森見登美彦さんが「美女と竹林」というテーマで、他の作家さんに作品をお願いしてできたアンソロジー。「お願い」に応じた作家さんが9人。阿川せんり(敬称略。以下同)、飴村行、有栖川有栖、伊坂幸太郎、恩田陸、北野勇作、京極夏彦、佐藤哲也、矢部嵩。これに森見さんを加えた10人の「美女と竹林」(をテーマにした作品)を収録。

まず、知っている作家さんから2人。伊坂幸太郎さんの「竹やぶバーニング」は、仙台の七夕祭りで使われている無数の竹の中から、「かぐや姫」が混入(!?)した竹を探す。「美女」で「かぐや姫」その人が登場するのも、「竹林」そのものが出てこないのも、他の作家さんにはあまりない特徴で、無二な印象を受けた。

恩田陸さんの「美女れ竹林」。「美女らない、美女ります、美女れ、美女ろう」と活用する。このアンソロジー企画の依頼の場面から書き起こしたり、なかなかコミカルな感じで始まるのに、この物語がダントツで怖かった。そういえば恩田さんは、コミカルもホラーも書く人だった。

次に、初めての作家さんから1人。佐藤哲也さんの「竹林の奥」には驚いた。23ページの作品全部が1段落で構成されているのだ。全編がワンカットの映画みたいだ。同じことを少しずつ表現を変化させて次の文に受け渡す。話もズルズルと物の位置がずれるように進む。一見して読みにくいだけでなく、確かに読みにくいのだけれど、不思議と最後まで読めた。

有栖川有栖さんや京極夏彦さんの作品は、確かにそれぞれの方の特徴が感じられるのだけれど、なぜか「森見登美彦っぽく」感じた。それは、初めての作家さんの何人かの作品でもそう思った。ちょっと不思議。

そうそう。森見さんには「美女と竹林」という作品がある。「妄想エッセイ」という森見さんにしかないジャンルの作品だ。

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熱帯

書影

著 者:森見登美彦
出版社:文藝春秋
出版日:2018年11月15日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 森見登美彦さんの最新刊。体調不良による休筆から、2013年に「聖なる怠け者の冒険」で復帰されて、以降「有頂天家族 二代目の帰朝(2015年)」「夜行(2016年)」そして本書と、1年半~2年間隔でコンスタントに新刊が出ている。ファンとしてはそれがうれしい。

 これはかなり奇妙な構造をした物語だ。冒頭部分に「千一夜物語」の説明がある。「千一夜物語」はシャハリヤール王に侍ったシャハラザートが語った寝物語。シャハラザートが語る物語の中の登場人物が、さらに物語を語ったりするので、いわば物語のマトリョーシカみたいな入れ子構造をしている。そして、本書もそうなっている。

 入れ子構造を簡単に説明する。入れ子の一番外側は、森見登美彦さん自身が登場。次の作品の着想が全く浮かばない日常の中で、学生時代に途中まで読んだところで失くしてしまった「熱帯」という本を思い出す。そして別の日に編集者に誘われていった読書会で、「熱帯」を持った女性と出会う。

 入れ子の2番目は、その女性、白石さんの語り。白石さんは勤め先のお客さんである池内さんに誘われて「熱帯」のことを研究する「学団」という集会に参加する。そして「熱帯」を巡るミステリーに巻き込まれる。3番目は、「熱帯」の謎を追って京都に旅立った池内さんから、白石さんに届いたノートに綴られていた物語。4番目は...。

 このような感じで物語は、最初の森見さんの日常から遠くへ遠くへと流れるように展開する。入れ子のかなり内側の物語に、それを研究しているはずの「学団」の人物が登場したり、そもそも本書のタイトルが「熱帯」なので、「学団」が研究しているのは本書なのか?という考えが頭をよぎったり、循環参照的な複雑さを呈している。

 入れ子の何番目かには、「熱帯」という本に記された(らしき)物語が語られる。これがなかなかの奇想文学で、これだけ取り出しても中編作品になったと思う。それが、この複雑な構造の中に、違和感なく収まっている。著者は良いお仕事をしたと思う。

 「複雑な構造」に「読みづらいのでは?」と思う人もいるかもしれないけれど、それは杞憂だ。構造なんて気にしないでドンドン読んでしまえばいい。循環参照になっていても「へぇ~面白いな」と思えばいい。「あれ?これ、そもそもどういう話だっけ?」と我に返ったりしないでいい。コロコロと転がるような展開に、身を任せてしまうと楽しめる。

 そうそう、「吉田山」とか「進々堂」とか、著者のゆかりの場所を知っている人は、そういうのも楽しめる。

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太陽と乙女

書影

著 者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2017年11月20日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本書は、著者が2003年のデビュー以来14年間にわたって、新聞や雑誌などのさまざまな媒体に発表してきた文章を収録したもの。他の作家さんの文庫本の解説や舞台パンフレットに載せたコメント、といった「レアもの」もある。数えてみると全部で86本もあった。

 「読書」「お気に入り」「自著とその周辺」「旅(ぶらぶら)」「日常」などのテーマに分類されている。私としては「自著とその周辺」がうれしい。けっこう正直な気持ちが伝わってくる。著者は「「作家の言葉」なんて信用できるものではない」と言うのだけれど、たぶん著者独特の「強がり」だと思う。

 特に「四畳半神話大系公式読本」に掲載された「或る四畳半主義者の想い出」が、質・量ともによかった。著者が京都大学に入学し、アパートの四畳半に入居するところから始まり、「太陽の塔」でデビューを果たし、「四畳半神話大系」に至るまでの一部始終。

 さらに中でも「太陽の塔」が「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞した時の、親友明石氏と交わした会話が素敵だ。「君の恥ずべき行状が暴露されてしまうがいいのか?」「かまわん。俺は恥ずべきことは何もしていない」

 最後に。著者のこれまでを語るのに避けられない話題について。著者は2011年の夏に、精神的緊張から体調を崩し、すべての雑誌連載を中断。その後2年足らずの「沈黙」の期間がある。驚いたことに、その頃になんと台湾の雑誌にコラムを書いていたそうだ。そのコラムをはじめとして色々なところで「沈黙」の頃のことが少しずつ語られる。森見さんが、良い伴侶を得られたことも分かる。

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ぐるぐる問答 森見登美彦氏対談集

書影

著 者:森見登美彦
出版社:小学館
出版日:2016年10月30日 初版第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 長編小説「夜行」と同じ日に同じ出版社から刊行。こちらは対談集。作家生活10年を記念して、ということで、その10年間に様々な雑誌等の媒体に掲載された対談をまとめたもの。

 本書の出版元は小学館だけれど、対談の初出の媒体は他の出版社、ということもある。と言うか、確認してみると最近の2点を除いて全部が他の出版社のものだ。幻冬舎、文藝春秋、メディアファクトリー、講談社、早川書房、角川書店、新潮社。出版界あげての10周年のお祝い、という側面もある。

 対談の再録ということになるから、対談相手の了解も必要。そのお名前を順に(敬称略)。劇団ひとり、万城目学、瀧波ユカリ、柴崎友香、うすた京介、綾辻行人、神山健治、上田誠、羽海野チカ、大江麻理子、萩尾望都、飴村行、本上まなみ、綿矢りさ。

 著者自身が「対談の名手ではない」と自信を持っておっしゃっているように、小説の作品のように著者らしいオモチロイことがあるわけではない(巻末の「小説 今昔対談」は著者らしい工夫があるけれど)。しかし、作品を読むだけでは分からない、著者の暮らしぶりや作品執筆の裏側が、会話から見え隠れする。ファンなら楽しめるだろう。

 著者の作品の一群は「腐れ大学生」を描いたもので、著者と不可分に結び付けている人も多い。その嚆矢となったのは、日本ファンタジーノベル大賞を受賞したデビュー作「太陽の塔」だけれど、それはなんと「やけくそで書いて」応募したらしい。

 それまでは「怪談とファンタジーの中間みたいなところをうろうろ」していた。ということは先日の「夜行」や「きつねのはなし」「宵山万華鏡」あたりが、著者がデビュー前から持っていた原点的な方向性だったわけだ。

 最後に本書全般を通して感じたこと。対談相手とよく、互いの作品を分析してみせる。「あの作品はこうなんじゃないですか?」と問いかけると「そうなんですよ!」と、話に弾みがつく場面が多い。相手は作家とは限らないけれど、何かを創作している人で、著者との共通点がある。そういう間柄だと通ずるものがあるらしい。

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夜行

書影

著 者:森見登美彦
出版社:小学館
出版日:2016年10月30日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 長編の小説としては、昨年出版された「有頂天家族 二代目の帰朝」から約1年半、著者の最新作。

 主人公は大橋君。10年前の大学二回生の頃に通っていた英会話スクールの仲間たちと5人で「鞍馬の火祭」の見物に来た。実は10年前にも、この仲間たちとこの祭に来たことがある。その時、仲間の一人の女性の長谷川さんが失踪した。今回こうして皆が集まったのは、彼女に呼ばれたからかもしれない...。

 大橋君は、昼間に京都の街を歩いていて、長谷川さんにそっくりな女性を見かけた。その後を追うように入った画廊で、「夜行」というタイトルが付いた銅版画の連作と出会う。ちなみに画廊には先に入ったはずの女性はいなかった。

 物語はこの後、貴船川沿いの宿に集まった仲間たちの語りが続く。どうした因果か、全員がその「夜行」という銅版画にまつわる不思議な体験をしていた。怪談めいた話を一人ずつ語る様は、5人しかいないけれど「百物語」の様相を示す。

 「今回はこっち系だ!」と一人目の語りの途中で思い、期待が膨らんだ。著者にはエンタテイメント作品や「腐れ大学生」のグダグダな生活を書いた作品が多い。でも、本書のような「妖しさ」を描いたものに「名作」がいくつかあるのだ。「きつねのはなし」「宵山万華鏡」..。

 私は著者と同じように学生時代を京都で過ごした。京都は人口の1割が大学生だと言われる「学生の街」。そこには多少汗臭い活気がある。しかし、1200年の「歴史の街」でもある。小路の向こうの暗がりに異界を感じることが何度かあった。著者の作品の多面性は、京都の街の多面性を映しているのかもしれない、と常々思っている。

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有頂天家族 二代目の帰朝

書影

著 者:森見登美彦
出版社:幻冬舎
出版日:2015年2月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本書を手に取って感無量だった。7年あまり前に前作の「有頂天家族」を読んだ時に、既にこの第2弾が予告されていた。その1年半後の2009年4月には、文芸誌への連載が終わったという知らせが届いた。それから待つこと数年。何度か「いよいよ」というニュースがあったが出版には至らず。著者の体調不良による休筆などもあって「もう読めないのかもしれない」とさえ思っていた。

 現代の京都で暮らす狸たちの物語。相当数の狸が人間の姿に化けて京都の街で暮らしている。狸だけではない。天狗も縄張り争いをしながら住んでいる。人間だって相当クセのあるのが跋扈している。そういう設定。

 サブタイトルの「二代目の帰朝」の「二代目」とは、前作からの主要登場人物の一人である天狗の「赤玉先生」の息子のこと。100年前に壮絶な親子喧嘩の末に敗れ、大英帝国に渡っていた。その二代目が急に帰国する。拍子抜けするほどあっさりと。物語が始まって18ページで。

 「赤玉先生」は「如意ヶ嶽薬師坊」という名の大天狗なのだけれど、今はその神通力が衰えて、プライド以外にはその往年の姿は見る影もない。100年前とは二代目との力関係が違う。その急な帰国は、狸たちの世界にも緊張感を走らせた。

 という具合に、なにやら緊迫した雰囲気で始まるのだけれど、これは長くは続かない。なにしろ狸たちは太平楽なのだ。本書の主人公の矢三郎は、中でも極めつけの阿呆と言われている。帯には「阿呆の道よりほかに、我を生かす道なし」と大書されている。

 さらには、矢三郎たち狸兄弟が父から受け継いだ遺訓は「面白きことは良きことなり」。帯の背には「波風を立てて面白くするのよ。」と書いてある。そんなわけで「面白いこと優先」で、ハチャメチャとシリアスとハートフルをかき混ぜたような物語だ。

 矢三郎の、揉めれば揉めるほど湧き上がる「阿呆の血」は、父からだけでなく母からも受け継いでいたことが分かった。前作はテレビアニメ化もされたヒット作。本書を読む前に前作を読んでおくことをおススメする。

 そして...よせばいいのに最後のページに「第三部」が予告されている。もちろん期日は書かれていない。

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Fantasy Seller(ファンタジーセラー)

書影

編  者:新潮社ファンタジーセラー編集部
出版社:新潮社
出版日:2011年6月1日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 大好評の「Story Seller」シリーズ(123Annex)の仲間ということで良いかと思う。ファンタジー作家さん7人の作品を収録したアンソロジー。7人に共通しているのは、ファンタジーノベル大賞で賞を受賞しているということ。

 収録順に作品名と著者を紹介する。「太郎君、東へ/畠中恵」「雷のお届けもの/仁木英之」「四畳半世界放浪記/森見登美彦」「暗いバス/堀川アサコ」「水鏡の虜/遠田潤子」「哭く戦艦/紫野貴李」「スミス氏の箱庭/石野晶」「赫夜島/宇月原晴明」。

 こうして列記してそれぞれの作品を思い出して感じるのは、ファンタジーには、ずいぶんと様々な作品があるのだということ。河童や雷や竜といった和製ファンタジーのキャラクターものや、古典文学をベースにした創作、怪奇現象やホラー色の強い題材、そして学園ものまで。(意外なことに、ファンタジーの定番の魔法系はなかった)

 私としては、馴染のある作家さんということもあって、畠中恵さんの「太郎君、東へ」が楽しめた。徳川時代の初め、関八州に聞こえた河童の大親分、禰々子(ねねこ)の物語。女性ながらめっぽう腕っぷしが強い。利根川の化身である坂東太郎とのやり取りも面白い。

 もう一人の馴染のある作家さんは森見登美彦さん。「こんなところに新作が!」と思ったのだけれど、森見さんの作品は小説ではない。「四畳半」について、自分の作品と絡めながらグダグダと書いたものだ。(「グダグダ」なんて書いたけれど貶すつもりは毛頭ない。「グダグダ」は森見さんの作風なのだ)

 他には、前から気にはなっていた仁木英之さんの「雷のお届けもの」と、「かぐや姫」をベースにした宇月原晴明さんの「赫夜島」がよかった。これを機会に他の作品を読んでみたいと思った。

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深読み「聖なる怠け者の冒険」

 先日読んだ「聖なる怠け者の冒険」が、著者の前著の「宵山万華鏡」「有頂天家族」とつながっていることをレビュー記事に書きました。このことは著者による「あとがき」でも明らかにされています。しかし私は、さらに強いつながりが、「聖なる怠け者の冒険」と「有頂天家族」の間にあるように思ったので、ここに書くことにしました。

 そんなわけでこれから書くことは、「有頂天家族」をお読みの方でないとよく分からないと思います。また、物語の核心には関わりませんが、両方の作品の内容にも触れます。何の先入観もなく物語を読みたいと思う方は、読み終わってからで良いので、是非ともこの記事に戻ってきて読んでいただけるとうれしいです。

 「聖なる怠け者の冒険」の浦本探偵は「有頂天家族」の矢二郎ではないかと思うのです。

 そのわけは、浦本探偵のセリフに矢二郎と重なることが多いからです。

1.俺には弟がいるんだけど、こいつがへんな騒動ばかり起こすやつでね。でも憎めないやつなんだ。メチャメチャに事態が紛糾するほど生き生きとしてくる...(P203)
 矢二郎はタヌキの四兄弟の次男で、弟の矢三郎は「有頂天家族」の主人公で、まさにそういう性格でした。

2.ずいぶん長い間、引き籠って暮らしていたことがありましてね。その時代には、身の上相談をやっていた(P203)
 矢二郎はあることにショックを受けて以来、カエルの姿で寺の井戸の底に籠っていました。そこで家族や従妹たちの愚痴や相談を聞いていました。

3.俺は知ってるけど言わないでおこう。命が惜しいもの(P205)
 これは、偽電気ブランというお酒をどこで作っているかを聞かれての答です。そのお酒は矢二郎の叔父が製造していて、矢二郎たちと叔父は激しく敵対しているんです。

4.俺ならそんなに疲れる前に、蛙になって井戸に籠もるなあ(P319)
 上の2.に書いたとおり、矢二郎はカエルの姿で井戸に籠っていたことがあります。

いかがでしょう?これは間違いない、と思いませんか?

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聖なる怠け者の冒険

書影

著 者:森見登美彦
出版社:朝日新聞出版
出版日:2013年5月21日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 森見登美彦さん3年ぶりの長編小説。2009年から2010年にかけて、朝日新聞に連載された同名の作品を全面改稿したもの。私は、新聞連載を欠かさず読んでいたが、全面改稿の「全面」に誇張はなく、全く違う物語に生まれ変わっている。発売に当たって朝日新聞に掲載されたインタビュー記事によると、なんと6回も書き直したそうだ。

 主人公は小和田君、京都郊外の化学企業の研究所に勤める若者。夢で「アア僕はもう、有意義なことは何もしないんだ」と呟き、その夢の中でさらに眠ってしまう、という怠け者。同僚たちに「田んぼのタニシと良い勝負」と言われるぐらい、静かな生活を送っている。

 そんな小和田君に、タヌキのお面に黒マントの変てこな怪人「ぽんぽこ仮面」が、「自分の跡を継げ」と言って付きまとう。さらに「ぽんぽこ仮面」を捕まえようと、得体のしれない組織が追いかけまわしているらしい。

 この「小和田くんに付きまとうぽんぽこ仮面」と「ぽんぽこ仮面を追う謎の組織」という2つの追いかけっこが、絡まりあって物語が進む。そこに可愛らしい探偵助手の「玉川さん」や、やたらと明るい「恩田先輩」とその彼女の「桃木さん」、スキンヘッドの「後藤所長」ら、個性的な登場人物が絡む。もう絡まりあって何だか分からなくなってくる(笑)

 この物語は「有頂天家族」と「宵山万華鏡」とつながっている。舞台が祇園祭の宵山の京都、という共通点もあって、雰囲気が「宵山万華鏡」に似ている。つまり「きつねのはなし」から連なる、京都の「妖しさ」が見え隠れする物語。著者お得意の「腐れ大学生モノ」とは別の系統の作品。私はどちらかと言えば、この「妖しい」系統の作品が好きだ。

 ファンには周知のことだけれど、著者は体調を崩して休筆していた。復帰作とも言えるこの本が出版されて、私はとても嬉しい。クライマックスにかけてのハチャメチャぶりには、「ちょっとガンバリ過ぎじゃないの?」と心配してしまったけれど、元気になられた証だと思うことにした。

 嬉しいお知らせが続く。本書に「森見新聞」というチラシが挟み込んであって、それによると、TVアニメ「有頂天家族」が7月7日から各局で放映開始、「有頂天家族2(仮)」が秋に幻冬舎から、「夜行」が冬に小学館から、それぞれ刊行予定。

(2013.6.18 追記)
この物語を深読みした、深読み「聖なる怠け者の冒険」という記事を書きました。

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