著 者:ル・グウィン 訳:清水真砂子
出版社:岩波書店
出版日:1976年9月24日第1刷 1989年4月10日第18刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
指輪物語、ナルニア国物語と並んで世界三大ファンタジーの1つとされる。著者のル・グウィンはアメリカ人、SF界の女王、「西の善き魔女」とも言われている。ゲド戦記は現在のところ全6巻あり、本書は1968年に出版されたのに対し、5巻目、6巻目の外伝と「アースシーの風」はなんと2001年、33年の長い時間が流れている。
本書は、主人公ハイタカ(本名はゲド、この世界では本名は魔法的に大変大きな意味を持つので、普段は通称で生活している)の生い立ちから、魔法使いとしての自立を迎えるまでを描く。
善と悪、光と影といった2つの相反するものからなる世界観を色濃く感じさせる。そして言葉の力が強い。今も竜たちが使う古代の言葉は魔力を持っているし、その物の本当の名前を唱えることで相手を支配することもできる。「陰陽師」で、清明が同じようなことを言っていた。言霊信仰とともにこういった考えは、呪術に共通のことなのかもしれない。
ストーリーは、主人公ハイタカが、己の未熟さゆえに、暗黒から影のようなものを引き出してしまい、それに追われる運命を背負う。そして、いくら逃げても最後にはそれと対決しなくてはならない。その影の正体は…、といったもの。少年から青年への成長と自立の物語だ。
全編、呪術的な雰囲気が重く感じられるが、今後が楽しみな滑り出しだ。
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