著 者:有川浩
出版社:メディアワークス
出版日:2007年3月5日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
「図書館戦争」の続々編。確実に前々作、前作より面白い。前作よりダークな部分がなくて、私としては単純に楽しめた。元々、登場人物たちのそれぞれのストーリーが並行して進むことで、物語に厚みを持たせていたけれど、今回は、主人公の郁を中心にそれぞれのストーリーが縦横に織り込まれた織物のように展開する。
中でも階級章の話は秀逸だ。階級章にあしらわれた花は、菊に見えるが実はカミツレ(カモミール)、花言葉は「苦難の中の力」。図書隊の成り立ちを表す重要な意味が込められていて、しかも郁と上官の関係を深めるエピソードだ。 あとがきにもそれらしいことが書いてあるが、著者の隠し玉だろう。この階級章は第一作から巻末についていたのだから、いつでも書けたエピソードをここで披露したわけだ。
今回のテーマも、前作同様に図書館内の内部抗争だ。しかし原則派と行政派といったイデオロギーの対立ではなく、戦闘職と業務職という部門の間のあつれきだ。県から来た館長が防衛部の活動と権限を制限したことに始まり、女子寮では風呂に入る順番まで業務職が先だというのだから笑止だ。
第三章も良い。あるタレントが、祖父の職業の呼び名が差別用語とされていることに対して感じた抵抗感、その気持ちが分かっていても、インタビュー記事を出版できない出版社、そしてこの煮詰まった状況を解決する技ありの解決策。話の中では、隊長が考え付いているのだが、本当は誰が考えたのだろう。著者自身だろうか?
あとがきによれば、あと1巻出るそうだ。楽しみだ。
にほんブログ村「有川浩」ブログコミュニティへ
(有川浩さんについてのブログ記事が集まっています。)
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
「図書館危機」 有川浩(著) 感想
図書館危機
この巻から巻頭に付いた人物紹介の説明文(というか二つ名?)が的確過ぎて妙に可笑しいものが(笑)。とまあ、そんなコミカルな部分もいつもどおり展開しつつも、あとがきまで読んで改めて読み直せば、作者がようやく出せたと語っていた「カミツレ」が息づい…….