著 者:トム・ケリー ジョナサン・リットマン 訳:鈴木主税
出版社:早川書房
出版日:2006年6月30日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
本書はIDEOという、世界的に有名なデザイン会社のゼネラル・マネジャーである著者が、IDEOの企業姿勢のキモである「イノベーション」について記した本。日本では2002年に出版された「発想する会社」の続編。
「世界的に有名」と言っても、もちろん誰でも知っているという意味ではない。でも、アップルの1つボタンのマウスをデザインしたと言えば?マイクロソフトのマウスもIDEOの仕事だと言えば?IT関係の製品デザインの実績は特に豊富だから、皆さんも気付かないだけでIDEOの成果を手にしたことがあるハズ。
そして、今やこういった製品のデザインだけでなく、ビジネスのプランニングまでを手掛けるようになって、AT&T、Bank of America、ナイキ、ルフトハンザ、プラダ…と超有名企業をクライアントに持っている。日本企業のクライアントも、NEC、松下、TDK、セガ、ヤマハ…という具合だ。
本書の内容は、イノベーションを継続的に企業に根付かせるためのヒューマンファクターに注目して、これに必要な人材を10個のキャラクターで紹介している。
例えば、顧客の行動などを(詳細に正確に)観察できる人を「人類学者(Anthropologist)」、障害を乗り越えられる人を「ハードル選手(Hurder)」、最高の環境を整える人を「舞台装置家(Set Designer)」、という具合に、読者にイメージしやすいようにネーミングして、それを豊富な事例で肉付けしている。
もちろん、事例の多くはIDEOの実績から取り上げられているので、なんだか自慢話を聞かされているような感覚はある。でも、自慢話は役に立たない、と決まっているわけではない。ビジネスに携わる人、「何かを変えなくちゃいけない」と思っている人にとっては、示唆に富む話をいくつも発見できるだろう。読む価値は大いにある。
例えば、「人類学者」の項でこんなのがある。「病院で患者が快適に過ごせるようにする」というテーマでアイデアを得るには?医者や看護師に話を聞く。患者に入念に作ったアンケートを行う。どちらも妥当だけれどIDEOの社員は違う方法を採った。患者と病院の了解を得て、48時間病室に張り込んでビデオを撮影したのだ。
つまりは、現場の観察が何より重要だということだ。もちろん観察から何かを導き出せるがどうかは、自分の感性にかかっている。しかし、アンケート調査が少しばかりの改善には役に立っても、革新的なアイデアにはつながらないのではないか、とは誰しもウスウス感じている。
自動車王 ヘンリー・フォードの格言が紹介されている。「もし私が顧客に彼らが望むものを聞いていたら、彼らはもっと早い馬が欲しいと答えていただろう」
ちなみに、あと7つのキャラクターは、「実験者(Experimenter)」「花粉の運び手(Cross-Pollinator)」「コラボレーター(Collaborator)」「監督(Director)」「経験デザイナー(Experience Architect)」「介護人(Caregiver)」「語り部(Storyteller)」
私にとって、多くの気付きがあったのは、「人類学者」「実験者」「花粉の運び手」「語り部」の4つの章だ。
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