著 者:スティーブン・ウェッブ 訳:松浦俊輔
出版社:青土社
出版日:2004年7月8日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
本書は、物理学者である著者が、「フェルミのパラドックス」と呼ばれる疑問の50通りの解を紹介し、その解に関連した学問上の話題を解説したものだ。「フェルミのパラドックス」とは、「銀河系に恒星間通信ができる地球外文明(Extra-Terrestrial Civilization:ETC)が相当数あると推定されるのに、どうしてまだこちらへ来ていないのか、せめて向こうからの声が聞こえてこないのか?みんなどこにいるんだろう?」というものだ。
「銀河系にETC(車に載せるのじゃなくて「地球外文明」)が相当数あるって考えるのが、そもそも間違いじゃないの?」と多くの人が思うだろう。私もこの解を示せと言われれば、そう答えるだろう。
ところが、銀河系には数千億もの恒星があり、一定の割合でそれぞれ複数の惑星を持っている。「(地球には特別なところは特にないとする)平凡原理」を適用すれば、生命にふさわしい環境は億単位で存在するはずなのだ。
それでも先の「銀河系にETCが..間違いじゃないの?」と言うのであれば、「そのうちの知的生命が誕生する割合は..。さらに..」と考えていって、最終的に地球に対して通信を行うETCがゼロになることを示さなければ、解を示したことにはならないのだ。
そして、このパラドックスに対して50通りもの解がある。このことにまず驚く。人類の想像力、知的探求心に、無限の可能性を感じる。もちろん、ある解を発展させて別の解を導いているものもある。また著者の判断では「これではこのパラドックスの解としては不十分」というものもあり、どの解も同じように確からしいわけではない。
しかも、読み物としてはあまり確からしくないものの方が面白いから厄介だ。私が一番気に入ったのは、解1の「彼らはもう来ていて、ハンガリー人だと名乗っている」だ。フェルミがいたロスアラモス研究所には、(ノイマン型コンピュータで有名な)フォン・ノイマン他、人間離れした知性を持ったハンガリー人研究者が何人もいたそうだ。
また、本書は科学知識の広く浅い読み物としても面白い。「フェルミのパラドックス」の解の紹介という形を取ってはいるが、取り上げられる話題が豊富だ。UFO、太陽系、宇宙物理学、相対性理論などは、本書のテーマから考えてありそうな話題だが、その他にもDNAや生命の誕生、進化など、ちょっと知的好奇心をくすぐる話も満載だ。
難解な話も少なからずあり、くじけそうになるかもしれないけれど、宇宙と科学にちょっと興味がある方の話題作りに役立ちそうだ。
この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。
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これはすごく読んでみたくなりました!
いつも書き込みせずに潜伏してますが、
YO-SHIさんのレビューはいつも丁寧で読みやすいです。
ジャンルの幅が広いのが嬉しいです。
liquidfishさん、コメントありがとうございます。
宇宙人はいるのか?と言うテーマに、硬軟ほんとうに色々な解が出されています。
カタい解のところは、何度読んでも分からない、ということもあるかもしれませんが、
教科書ではないので、それも楽しんでしまえば面白いですよ。
今「ナ・バ・テア」を読んでます。
「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」 S・ウェッブ 松浦俊輔 訳 青土社
けいちゃっぷさんとゴキゴキさんのブログで紹介されていて、
気になって読みたかったが、
ど田舎の市内の本屋には置いてなく、
市外へ車を走らせ、最近やっとGET!(素直にアマゾンに注文しろよw)
本との出会いが人との出会いより重要だと思ってる私には、
本…
はじめまして。
日本ブログ村経由で辿り着きました。
この本は話題が広くてお得で良い本でしたね。
難しい話題もギャグとしか思えない話題もあって
とても楽しめました。
goldiusさん、コメントありがとうございます。
そうなんですよね。難しい物理学や生物学の話も、SFの話も、
ギャグっぽいのも同じ調子で語ってるんですよね。
私も楽しみました。
天文学、宇宙物理学、相対性理論など部分は
私には難解だと想いますが、とても興味津々です♪
西はりま天文台に行きますと、当たり前(真面目に?)に
地球外知的生命探査の研究がされていました(笑)。
今、図書館の予約本がいっぱいいっぱいなので
次回も予約を入れて是非読んでみたい本です。
私は偏った分野の本を読む傾向があるのですが、
YO-SHIさんのサイトでは、様々の分野の本をご紹介して
頂けるので、とても愉しみです♪。
かりん。さん、コメントありがとうございます。
宇宙物理学や相対性理論は、確かに難解かもしれません。
手に負えなければ、そこは流しておいて、50個の解を
1つづつ読んでくだけでも、面白いですよ。
そうそう、相対性理論の話が、今までで一番分かり
やすかったのは「エレガントな宇宙―超ひも理論が
すべてを解明する」という本の前半部分です。
(後半は?????でした)
広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由-スティーブン・ウェッブ
「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」 スティーブン・ウェッブ この本は物理学者のフェルミという人が研究者仲間とのランチの時に言った、「みんな、どこにいるんだろうね」に対する50の反論が書いてある。フェルミは優秀な物理学者で原子力発電の原理など多く…..
こんばんは。
YO-SHIさんとは結構好みの分野が重なっているようで、過去ログを仕事をさぼりながら追ってしまいました(笑)
この記事も読みながら、自分が読んだときのことを思いだし、思いだし読んでいました。
科学、特に宇宙人、人間の存在って、どんな分野もなんかしら言いたいことがあるんだなって思わせてくれる作品でしたね。
どんな分野のことにも有益な入門書となる良書だと、僕は思いました。
>宇宙と科学にちょっと興味がある方の話題作りに役立ちそうだ。
飲み屋のネタにちょうどいいんですよね。
kbbさん、コメントありがとうございました。
好みが重なっているようですから、これからも同じ本を
読むこともあるでしょう。その時は、コメントなどを
いただけるとうれしいです。
右のリンクリストにkbbさんのブログを登録しました。
私もときどきのぞかせていただきます。
広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス
書評リンク – 広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス