著 者:梨木香歩
出版社:新潮社
出版日:2001年8月1日発行 2008年2月25日第51刷
評 価:☆☆☆(説明)
「家守綺譚 」の著者による100万部超の大ベストセラー、「渡りの一日」という後日談の短編を収録した文庫版で読んだ。2008年6月には映画が公開されている。
本書の背景に流れる時間も、「家守綺譚」と同じく現在とは違う。いや「時代」としての「現在」ではなくて、便利なものに囲まれて暮らしている「生活」としての「現在」とは違う、という意味だ。
飼っている鶏の卵を採って朝食に食べ、大物の洗濯はタライを使って足で踏む。そんな生活は、日本ではいつごろまで普通に見られたのだろう。私には小さい頃に田舎に行って、そんな光景を見たかすかな記憶しかない。それが、そこでは普通のことだったのかどうかも分からない。
物語は、学校へ行けなくなった中学生の少女 まい が、母方の祖母との素朴で平和な暮らしのなかで、心の健康を取り戻していく過程を描いたもの。祖母は英国人、祖父は日本人でまいが小さいころに亡くなっている。
「西の魔女」とは、この英国人の祖母のことだ。自分の家系は魔女の家系で、自分の祖母(つまり、まいの高祖母)は、予知能力があったという話をまいに聞かせている。そして、自分も魔女になれるかというまいに、魔女修行を勧める。
しかし、祖母が言う魔女とは、魔法使いのことではなく、自然から得た知恵を活かして、身体を癒したり、困難をかわしたり、耐え抜く力を持った者のこと。そして、ここがこの本の主題だと思うが「外からの刺激にいたずらに反応しないこと」、つまり、自分で考え判断することができる者が上等の魔女だと言う。
長く読まれている話だけあって、良いお話だ。色々なメッセージも伝わってくる。子どもには子どもの、大人には大人の読み方があって、世代を越えて読める。「大人の読み方」ということになるだろうか、私には、まいの父と隣家のゲンジが、何かを象徴しているようで気にかかった。
良い人であるが、ものの表層だけで本質を見ない父。品性を学ばないで年をとってしまい、悪い人ではないのだが、まいにとっては汚れた大人にしか見えないゲンジ。祖母が言う上等の魔女とは対極にある人物像だ。自戒をこめて言うが、こういう大人が実は多い。
本書の本筋からはズレてしまうが、感じたことを1つ。まいが学校へ行けなくなった理由はいじめだ。女子のグループ作りがなんとなくあさましく感じて、そういうことをしなかっただけのために、クラスの女子全員を敵に回してしまったのだ。
こういったことは人の性として直しようがないのかと、暗くなってしまった。本書が単行本で出版されたのは1994年だ。それから十数年経ったが、何かが良くなったという話は聞かない。
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西の魔女が死んだ (新潮文庫)
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本のタイトルも、映画化されたのも知ってはいたのですが、そんな前(1994)だったとは・・
日常生活にまぎれてなかなか読みきれていませんが、そのうち必ず読みたいと思います。
ぷぅちゃん☆さん、コメントありがとうございます。
出版されたのは、十年以上前なんですね。私も意外でした。
長く今でも良く売れている本だそうなので、紹介される機会も
多いようです。
活中のぷうちゃん☆さんとしては、今でなくてもいつかは
読む価値はあると思いますよ。
haruと言います。コメントありがとうございました。
作中のゲンジさんについて、彼は何を象徴をしているのかしらともやもやしていました。「品性を学ばないで年をとってしまい、悪い人ではないのだが、まいにとっては汚れた大人にしか見えないゲンジ。」・・・すっきりしました。こちらを読ませていただいて良かった。
まいが、鶏を襲った動物について疑う場面がありました。また、「お気に入りの場所」を浸食されてしまうと疑った場面も。そして、そんなまいに言ったおばあちゃんの言葉。
外からの刺激だけでなく、自分から発せられる不確かな声にも揺らいではいけないのですね。
今、YO-SHIさんの記事を見て、そんなことを改めて感じました。
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やっぱり最後の3ページで泣きました。
タイトルの西の魔女とは、主人公まいのおばあちゃんのこと。登校拒否になったまいは、祖母の家で暮らす……
haruさん、コメントありがとうございました。
ゲンジのことは、読んでいる間中、気になっていました。
美しい物語の中の汚点というか、調和を乱しているというか
とにかく、あって欲しくない異物でした。
それで、改めて考え直して思い至ったのが、おばあちゃん
以外の大人は、それぞれ大人の何かを象徴しているのでは
ないか?ということだったのです。まいの母親も含めて。
それで、ゲンジはあのように表現してみました。
こんにちは☆
はじめまして。ゆず。です。
先日はコメントありがとうございましたm(_ _)m
読書ブログをされているとあったので、
早速遊びに来てしまいました(笑)
YO-SHIさんの感想ってとても深くて、
なるほどーって思う事が多いです^^
私はどちらかと言うと感情的に感想を書く事が多いので。
勉強になります☆
それにしても色々なジャンルの本を読まれているのですね!
そちらもまた参考にさせて戴きます☆