著 者:パトリシア・A・マキリップ 訳:井辻朱美
出版社:早川書房
出版日:2005年3月31日発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「妖女サイベルの呼び声」に続いてマキリップ作品です。本書は「妖女~」から30年近く後の2002年の作品、そして「妖女~」に続いて2度目の世界幻想文学大賞受賞作だ。作家は一生の仕事だと思えば、30年という年月は驚くことはないかもしれない。しかし、息の長い作家だということはできるだろう。
続けて読んだことと、どちらも大賞受賞作ということで、どうしても比較してしまうのだが、良し悪しは言えないが、私は「妖女~」より本書の方が好きだ。本書の方が設定やストーリーがファンタジーのスタンダードに近いから、楽しみ易かったのだと思う。
もちろん、スタンダードとは言えありきたりの物語ではない。著者の持ち味であろう不思議で淡い独特な雰囲気は健在だし、何よりもしっかり性格付けされた登場人物たちが魅力的だ。
舞台はオンブリアという名の都。王が亡くなり幼い王子が即位する。その王を支えるはずの摂政は魔女で邪な野望を持っている。前王の妾妃や甥など幼王を支えようとする人々との攻防が物語のタテ糸。
そして、世界で一番古いと言われるオンブリアには、その地下に影の都が存在する。「影のオンブリア」は、オンブリアの長い歴史が堆積したもので、そこにはあらゆる時代の記憶や人々が今も存在している。
その影のオンブリアの住人である魔女やその僕の少女が、現実のオンブリアの争いに関与し、前王の妾妃や甥も含めたそれぞれの生い立ちや事情がヨコ糸となって、物語の織物を重層的に織りだしていく。ファンタジーファンなら一読をおススメする。
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YO-SHIさん、こんにちは。
この作品、ほんと大好きなんです。
表のオンブリアと裏のオンブリア、現在のオンブリアと過去のオンブリアが
二重写しになっていて、光があるからこそ影があり、影があるからこそ光に惹かれる…
みたいなところがたまらなくて。
オンブリアの場合は、光よりも影が強いですが。
この物語の主役はオンブリアの都そのものでもあるんだなあって思います。
四季さん、コメントありがとうございます。
良い本をオススメいただいてありがとうございます。
この本はすごく良かったです。感謝。
「表と裏」という意味の「光と影」も感じられますが、
映像としての「光と影」までも文章から感じました。
誰か影の映像美を表現できる監督さんに映画にして
欲しいなぁ、と思いました。
「やたら元気な少年少女の活劇ファンタジィ
(訳者あとがきの言葉)」ばかり映画にせずに...。
はじめまして。
私もファンタジー小説が好きなのですが、最近は実用書ばかりで面白い本を探していました。
影のオンブリアは書店でちょっと気になっていたので読んでみたいと思います。
こなちゅさん、コメントありがとうございます。
ファンタジー小説がお好きなら、この本はおススメです。
「杖を構えて魔法で対決!」みたいなことはないので
物足りなく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、英語のFantasyの意味は「幻想」だそうで、
その意味では、この本はまさにファンタジー小説です。
全編に醸し出される雰囲気が、幻想的です。