著 者:近藤史恵
出版社:新潮社
出版日:2007年8月30日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
2008年の本屋大賞の第2位(ちなみにその年の第1位は「ゴールデンスランバー」)。読んでみたいとは思ったのだけれど、受賞直後は図書館の予約が殺到して借りられなかった。以来事あるごとに思い出していたところ、るるる☆さんのブログで見ておススメもいただいたので読んでみた。
物語の舞台は自転車のロードレース。何度かスポーツニュースで、集団やタテ1列になって道路を駆け抜けていくレースの映像を観たことはあるし、「ツール・ド・フランス」なんて大会の名前も知っている。知っているけれど、本書を読んで「知らないも同然だった」と思った。本書で自転車ロードレースを知って興味を持つ人もいるだろう。結構奥が深いのだ。
レースだから、よーいドン!(とは言わないだろうけれど)でスタートして、早くゴールした者が勝ちというのは変わらない。基本的には個人競技だ。でも、上級のレースではチームのメンバーが役割分担して、エースを勝たせるという団体競技になっている。エース以外の役割は、エースの風除けになったり、エースの自転車に故障があれば自分のを差し出すなんてことだってある。
つまり、エースを勝たせるための犠牲。タイトルの「サクリファイス」には、自転車ロードレース特有の意味が込められている。そして、読み終わって分かる、もう1つ別の意味も。
読んでいて「風が強く吹いている」を思い出した。あちらは駅伝のランナーの話だ。どちらもレース中は1人で様々思いを胸に走る。そこには葛藤やドラマがある。走るスポーツは物語向きなのかもしれない。
だとしても、自転車ロードレースの選手が抱える葛藤は、傍目には並大抵のものではない。エースを勝たせるためのアシストは、どんなに良い仕事をしても記録には一切残らない。エースにならなかったほとんどの選手は、全選手生活で1度の優勝も表彰台もない。しかし、プロになるほどの実力はあるのだ。当然、上を目指す心は抑えられないはずだ。250ページ足らずの小品ながら、読み応えアリだ。
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自転車ロードレースの奥深さには驚きましたね。
エースとアシストのシビアな関係も・・
それだけにラストのエース自らが行った最高のアシストは涙です・・。
あいつらを走らせるために・・。
私もこれ読んでて「一瞬の風になれ」を思い出しました。
走ることはドラマですね~。
こんばんは。
一般には馴染みのない自転車ロードレースの世界と人間ドラマが秀逸でした。
短い作品ながら内容が詰まっていて、ほんと読みごたえあり!でしたね(^o^)/
るるる☆さん、コメントありがとうございます。
るるる☆のおススメで読んだのですが、よい本を
ご紹介いただきました。感謝です。
最後のアシストは、寒気がしました。正直言って
感動なのか怖くなってしまったのかはっきりしない
のですが。
—-
チャウ子さん、コメントありがとうございます。
アシストの立場や役割が人間ドラマを生むのでしょう。
これは、フィクションなのでしょうが、実際にも
こうした心の葛藤はあるのではないかと思わせます。
そのリアル感も、本書の魅力なのでしょうね。
サクリファイス/近藤史恵
ぼくに与えられた使命は、エースが勝つために尽くすこと―。
勝つことだけを求められる陸上の世界に、居心地の悪さを覚えていた誓はロードレース界のアシストとしてチーム・オッジに飛び込んだことに、またエースである石尾にアシストとして尽くすことに満足していた。
ある国内レースで、憧れの海外有力チームが若手をスカウトするためにやってきたと聞いて色めき立つ。だが、オッジの若手・伊庭はチームメイトに疎まれてもエースの座を狙い、また、エースの石尾が過去に起こした事故のために、半身不随になった選手の話も耳に入り、誓…
地下鉄の犬/草間さかえ
夜道をふらつきながら歩く男、電柱にぶつかり見事に転ぶ。タバコの自販機を入れ替えてた男は、彼を助け起こす。それだけの一瞬。
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「趣があります」割れた茶碗を修繕したものを愛でる店の主・朝倉。妻と別れてから、所在なくただ「あれ」を入れるものを朝倉に頼むことにした篠田。
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