「スカイ・クロラ」シリーズの謎解きに挑戦(3/3)

 これまで、いくつかの謎について私の考察を紹介してきましたが、最終回の今回は「スカイ・クロラ」についてです。少し長くなってしまいましたが、お付き合いください。

 「スカイ・クロラ」は「スカイ・イクリプス」を除いた本編5冊の時系列的には最後、出版順では最初の作品です。読む順番について著者の森さんは、 「MORI LOG ACADEMY」で「どこから読んでも良いが、もし5冊を全部読む自信がある人は、第1巻のナ・バ・テアから読むことをすすめる。それが一番誤解がないだろう。もし5冊も読む自信はない、とりあえず1冊、という人には、最終巻のスカイ・クロラを」と書かれています。
 また、「ダ・ヴィンチ」のインタビュー記事には、「「スカイ・クロラ」を最初に書いたことに他意はないんです。これ一作でもう続編は書けないだろうと思っていたから、観念して最後の部分から書いてしまった」とあります。

 このように「スカイ・クロラ」1冊だけになる可能性を、森さんが考えておられたのであれば、「スカイ・クロラ」1冊の中にも、作品世界を見渡すためのヒント、真相に近づくためのヒントが込められているはずです。
 そこで「スカイ・クロラ」を、特に細かい点まで注意して読むことにしました。すると、ヒントという意味では、各エピソードの扉のページにあるサリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」からの引用が目を引きます。このような引用は「無くても良いもの」なので、それがあるということは「何か意味がある」はずです。そう思って読むと「ナイン・ストーリーズ」と「スカイ・クロラ」には、その主題に親和性が見えます。

書影

 「ナイン・ストーリーズ」は、サリンジャーの自薦短篇集で、9つの短編を通じて直接・間接に描かれているのは、グラース家の7人兄弟です。彼らは「これは神童」(It’s a Wise Child)というラジオ番組に次々と出演する、いわゆる天才児たちです。しかし、「ナイン・ストーリーズ」で描かれる成長した彼らの多くは、どこかバランスを欠いた不安定な人間になっています。兄弟の精神的支柱であった長兄シーモアは拳銃で自殺してしまいます。
 「スカイ・クロラ」のカンナミは、自分を指して「特別な子供(325)」と言い、他のキルドレたちにも似た形容がされ、そして大人にならない。グラース兄弟も神童と呼ばれ、そしてうまく大人になれなかった。この2つの物語に共通するのは、フワフワして捉えどころの無い雰囲気だけではなく、描かれているテーマも共通しているのです。森さんは、この引用によって「大人にならない永遠の子ども」の表現を補強したかったのではないでしょうか?

 それから、引用されている6編の短編や引用箇所にも意味がありそうです。例えばプロローグの扉の「テディ」の引用箇所にある「死んだら身体から跳び出せばいい~」は「キルドレの再生」を暗示しているように思えます。「人間の再生」は著者が否定されているので、これはミスリードを狙ったものなのでしょう。
 第1話の扉の「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」の引用部分は、その物語の中でも前後のつながりがよく分からない部分なのですが、「ハツカネズミ」と「観覧車」という言葉があり、これが回し車の中を駆けるネズミ、「前進しない永遠の回転」を想起させます。
 第2話~4話の扉の引用は、引用部分の前後までを含めると、「仮面」「シャロンをきみだと思うことにしたのさ」という言葉があったり、母親が海軍中将になりすましたりします。うがった見方かもしれませんが、「誰かが実はその誰かではない」というトリックが、この物語の中に潜んでいることのヒントかもしれません。
 そして、その考えは第5話の扉の引用「エズミに捧ぐ」ではっきりした輪郭を見せます。「私は依然として登場するけれど(中略)どんなに慧眼な読者でも私の正体を見抜くことはできないだろう。」 これは、カンナミが実はカンナミではない、またはクサナギが実はクサナギではない、という暗示と捉えて問題ないと思います。
 さらに、「エズミに捧ぐ」は、「本当の眠気を覚える人間は(中略)無傷のままの人間に戻る可能性を必ず持っているからね。」という一文で終わっています。これは、「スカイ・イクリプス」で描かれたクサナギの回復物語を感じさせます。森さんは、「ナイン・ストーリーズ」を読み返した読者が、こうしたことに感付く可能性を(かなり低い可能性かもしれませんが)考え、こんなヒントを仕掛けたのではないでしょうか?

 では、続いて、他の5冊との関連性における「スカイ・クロラ」の考察と、いよいよ最後の謎についてです。

 このシリーズは、謎の深さというか混迷度が読む順番で違うように感じました。私は、最初は「スカイ・クロラ」から始まる出版順、2度目以降は「ナ・バ・テア」からの時系列順で読みました。そうすると、時系列順、つまり森さんが「一番誤解がない」とされる「ナ・バ・テア」から読む方が悩まないのです。少なくとも「クレィドゥ~」までは、特に何の疑問もないと言っていいぐらいです。

 「スカイ・クロラ」を最初に読むと、ミツヤの「貴方はクリタさんの生まれ替わり(クロラ302)」のセリフに代表される、クローン技術めいた人間の再生のことが頭に残ります。すると「フラッタ~」でクリタが登場すると「この栗田がカンナミになるのか?」なんて、もしかしたらしなくていい想像をしてしまいます。「クレィドゥ~」では、「死んだクリタにクサナギの技術を移殖してカンナミに..」なんて考えてしまったり。ミズキのこともそうです。「スカイ・クロラ(156)」でトキノの言葉を聞いていなければ、特に妹か娘かなんて悩むこともなかったでしょう。

 とは言え、「ナ・バ・テア」から読んでも「クレィドゥ~」では主人公が誰か分からずに立ち往生し、「スカイ・クロラ」でさらに?が増えるということには変わりがないでしょう。「ナ・バ・テア」を最初にしてこれまで組み立てた私の考察でも、「クレィドゥ~」までは何とか破たんを免れたつもりですが、「スカイ・クロラ」には多くの矛盾が残ってしまいます。どうも全体から浮き上がってしまった感じで、説明がつかないことが多いのです。

謎7 スカイ・クロラが抱える矛盾

 最大の矛盾は時間です。それまでの物語との整合性がありません。時系列をみると、クリタについて言うササクラの「死んだのは一週間くらいまえ(78)」、クサナギの「ここに来たのは、七か月前(89)」という言葉が、「クレィドゥ~」とかみ合いません。「クレィドゥ~」の終わりの時点で非武装地帯での戦闘から半年、仮にエピローグを除いたとしてもサガラが病院を訪れたのが1ヶ月前、クサナギがクリタを撃ったのはその前のはずなので、どうしても説明がつきません。
 「クレィドゥ~」と「スカイ・クロラ」の順番を入れ替えたり、重ねたりという手もありますが、「スカイ・クロラ」が「時間軸上では最後」ということは、「ダ・ヴィンチ」のインタビュー記事でも明らかにされていて、「スカイ・クロラ」が最後ではないという可能性は排除しなくてはなりません。

 次は、「スカイ・クロラ」のクサナギは誰なのか?ということです。「クレィドゥ~(310)」でソマナカは「あれは、別人だ」と言っています。それを受ければ、偽クサナギということになりますが、この偽クサナギには「クレィドゥ~」以前のクサナギの記憶があります。これでは「記憶移殖」はない、という森さんの言葉に反してしまいます。キルドレには、他人の話と自分の記憶を混濁させてしまうという症状がありますが、選択的にクサナギの記憶を混濁させるというのは、都合が良すぎるように思います。
 しかしクサナギが偽クサナギではなく、カンナミは「クレィドゥ」のエピローグから続いてクサナギが持つ別人格だとすると、「スカイ・クロラ」ではクサナギもカンナミもクサナギ、一人二役ということになってしまい、2人がササクラやトキノや他の人の前で会話していることの説明ができません。(レストランの店員などを含めて、その他全員が2人いるふりをしているのでなければ)

 また、性別の問題も出てきます。 トキノと同室であることや、トキノが娼館へ案内したこと(65)や、そこの女に「よろしくね、ボーイ」と言われたこと(68)、シャワーから上半身裸で部屋に戻っていること(143)。カンナミが男性であること示唆する記述はまだ他にもあります。すると、女性のクサナギの別人格という考えと相入れません。
 このような矛盾が問題となるわけですが、実は、偽クサナギの問題と性別の問題は、それぞれに説明をつける方法がないわけではありません。記憶移殖などしなくても記憶を学習することは可能だし、性転換手術を受けたという説明も可能です。しかし最大の矛盾である時間の整合性の問題は残ります。そして、時間の整合性の問題を含めて、全てを説明する仮説が少なくとも1つあります。

 それは、「「スカイ・クロラ」はクサナギの別人格であるカンナミの頭の中の出来事、つまり妄想なのだ」という仮説です。妄想の中の話なので、時間が合わなくても、一人二役でも、上半身裸でウロウロしたってどうということもありません。クサナギの記憶を持っていることも説明ができますし、別人格のカンナミが別の記憶を持っていることも不思議ではありません。色々と悩んだ末に「夢オチ」みたいな話で恐縮ですが、それを裏付ける要素がいくつかあります。

 その1つは、森さんがこのシリーズのもとにしたという、デヴィッド・リンチ監督の映画「ロスト・ハイウェイ」です。前回、「途中で主人公が入れ替り、片方はもう片方が作り出した別人格」ということを書きました。さらに言うと、この映画は最初から最後まで全編が、刑務所の中にいる主人公の妄想という解釈ができるのです。
 もちろん、「スカイ・クロラ」シリーズよりも難解とも言えるリンチ監督の映画ですから、この解釈が正しいとは言い切れませんが、「解釈ができる」というより、私が観た限りでは「他の解釈では説明できません」でした。(「スカイ・クロラ」の謎解きのために、リンチ作品の謎にまでブチ当たってしまって、本当に消耗しました。)

書影

 2つ目は、「スカイ・アッシュ」でクサナギが見た夢(イクリプス230)です。この夢でクサナギは自分が撃った人々を思い出しますが、その最後の1人のところで「あれは、僕だ」と「スカイ・クロラ」のカンナミがクサナギを撃つ場面を思い出します。「あれは、僕だ」ですから、本人による告白とも言えます。
 それから、これは直接的な裏付け要素とはなりませんが、多重人格の中のある人格が「死ぬ」「殺される」という考えは、多重人格者を扱ったノンフィクション「24人のビリー・ミリガン」「ビリー・ミリガンと23の棺」の中にも見られます。「~棺」の方はタイトルからして分裂した人格の「死」を暗示しています。

 3つ目は、エピローグです。それまでとは違って一歩退いた視点で自分のこと、クサナギとのことを振り返っています。一歩退いた視点なので、最初の「夢の中で、僕はただ戦った。」という言葉の「夢」とは、「今見ている夢」という意味ではなく、それまでの話、つまり「スカイ・クロラ」全編のことを指して「夢」と言っているのではないでしょうか。
 冒頭に書いたように、「スカイ・クロラ」1冊の中にもヒントが込められているとすると、最後のシーンに分かりやすいヒントを持ってくるのは極めて自然です。「夢オチ」の物語で最後にガバッとベッドから起き上がるシーンのようなもの、だと考えることができます。ちなみに「ロスト・ハイウェイ」の最後のシーンも、主人公の別人格への変身を暗示する、一種のタネ明かしでした。

 このように「ロスト・ハイウェイ」をもとにした、ということを素直に受け取れば、「スカイ・クロラ」全編が妄想で、先立つ4冊はそこに至る物語と捉えて問題ないと思います。以上、Q.E.D. (ふぅ~、疲れた)

—–追記—–

 この考察に至る前に、同じように「スカイ・クロラ」シリーズの謎を追われた多くの方のブログを拝見しました。その時感じたのは、同じ目的に向かっているのだから協力できないものか、ということでした。メールやコメントで?とも考えましたが、読む時期も違うのでリアルタイムに協力するのは難しそうでした。

 そこで、私が考察に使ったメモを提供することにしました。そうすれば、次の人は私の作業の続きから始められます。幸い、アウトラインプロセッサーソフトを使っていましたので、テキストファイルに出力できました。今後、「スカイ・クロラ」シリーズの謎に挑もうとされる方がいらっしゃったら、遠慮なくダウンロードして使ってください。
 ここを右クリックして「対象をファイルに保存」 (コピー・転載・改変は自由/著作権は放棄していません)

——–
(2010.7.28 追記)
sugiさんから、コメント欄にご指摘をいただき、新たな考察を加えたのでここに追記します。

 「スカイ・クロラが抱える矛盾」に挙げた「性別の問題」が、「クレイドゥ~」のエピローグにもあることが分かりました。エピローグ2ページ目で、ベッドの上段で寝ている奴のことを「彼」と表現していることから、主人公が男性と同室であることが推察されます。
 これは「クレイドゥ~」エピローグのカンナミが、女性のクサナギの別人格だとする考えと相入れません。それ以前の物語の考察(「妊娠して非キルドレ化した」など)から、この主人公が男性の誰かであるという考えも排除すると、残る有力な可能性は、「「クレイドゥ~」エピローグから既に、クサナギ=カンナミの妄想」というものです。

 「都合の悪いものは全部「妄想」かよ、ずいぶん都合のいい考察だな」という声が聞こえてきそうで怖いですが、それは上に書いた「それを裏付ける要素」の3つと、ここに至る長い道のりに免じてご勘弁いただきたいと思います。

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 (森博嗣さんについてのブログ記事が集まっています。)

28つのコメントが “「スカイ・クロラ」シリーズの謎解きに挑戦(3/3)”にありました

  1. 自称エリートサラリーマン

    はじめまして。私もジャンルこそ違いますが、
    書評ブログを立ち上げてみました。

    もしよければ相互リンクしてください!

    当サイトの情報は下記のとおりです。
    ○サイト名: エリートサラリーマンのビジネス書レビュー
    ○URL: http://dreams7.net/

    何卒よろしくお願いします。

  2. YO-SHI

    自称エリートサラリーマンさん、コメントありがとうございました。

    ブログ拝見しました。これからの記事の充実を楽しみにしています。
    右サイドバーの「リンクリスト」に追加しました。
     

  3. YO-SHI

    犬太郎ブックスさん、コメントありがとうございます。

    応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
    ネットの古本屋さんのお仕事も頑張ってください。
     

  4. liquidfish

    クレイドゥの主人公は間違いなく彼女だ。各巻に主人公は1人だけとすると、スカイ・クロラのカンナミは…?
    その先のスカイ・クロラがどういうことなのか、直感的にはわけがわらず、そこで考えるのを放棄してしまってました。 こうして整理された解説を見てかなり納得し、すっきりできました!

    カンナミやクリタの存在や、ミズキがスイトの娘ではないことは、私も同じような経緯で同様に思っていましたが、YO-SHIさんの書き方は丁寧で筋が通っていますね!(・―・)

    無理があると言われがちなフーコとの関係ですが、私も、クレイドゥの主人公が女性だったとしても、フーコとの会話や行動がそこまでイレギュラなものには感じません。文章に書かれていない情報に関しては、読み手が想像して隙間を埋めてしまいますが、最初に読んだときに「親密な男女」を想定して作った枝葉なので、女性同士に急に軌道修正しようとしても難しいのだと思います。実際に「恋人同士」と言えるような関係だった可能性もありますが。笑

    「ナ・バ・テア」でのクサナギがフーコの代わりにティーチャの部屋に入って行ったときの二人の会話とか、その辺りの展開はぶっとんでて好きです。フーコとクサナギが普通以上に仲良くなるきっかけとしても十分有りそうではないかと思っています。

  5. YO-SHI

    liquidfishさん、コメントありがとうございます。

    「かごの鳥」には違いないけれど、「ナ・バ・テア」のそのシーンにも
    見られるように、言動に自由さが覗くフーコならば、クサナギとの特別な
    関係も可能だったでしょうね。

    「筋が通っている」と言われてうれしいです。それに苦心しました。
    あちらを立てればこちらが立たない、ということの連続だったので。
     

  6. RRR

    すごいです。私もどうやって全てに辻褄を合わせることができなくて、ネットで納得のいく答えを探しまくっておりましたが、どこのサイトを読んでも、だってココとココがおかしいよ!って思ってしまっていました。でもこちらの解釈が最も納得いきました。
    さっぱり意味がわからなかったナインストーリーの文章も、こちらの解釈を読んで、全てなるほどと思えました。
    素晴らしいです。その努力と考察力、すごいです。
    このブログを見つけられて良かった。ありがとうございました。
    これからスカイクロラシリーズ、その解釈を元に読み直します。

    他の作家さんの名前も気になります。ぜひ見させていただきます。

  7. YO-SHI

    RRRさん、コメントありがとうございます。

    「ネットで納得のいく答えを探しまくって..」とのことですが、
    半年ぐらい前の私がまさにそんな状態でした。
    そして「ココがおかしいよ」と思っていたのも同じです。

    特に、森さんの「クローン(特に短時間で人間を再生する)や記憶移植
    といった非科学的なものはこの世界にはない。」というヒントを
    取り入れていない考察が多かったです。
    まぁ「スカイ・クロラ」を読み、映画を観たら「人間の再生」という
    アイデアに行きついてしまうのはムリもないのですけれど。

    RRRさんが、私の解釈を支持していただけて良かったです。
    読み直されて、もし何か気が付いたことなどあれば、教えていただけると
    うれしいです。
     

  8. masaki

    お正月休みを利用して6冊読みましたが、どうもスッキリせず、ネットで回答を探しまわってここに辿り着きました。
    とても説得力のある考察だと思います。素晴らしいです。その緻密さに感動しました。

    この記事を読んだ上で、スカイクロラの妄想説だけがスッキリせず、私なりに考察してみたのですが、
    スカイクロラでカンナミがクサナギを撃った。しかし、クサナギは死ななかった。
    と考えると、どうでしょうか?
    当然、普通の人間は左胸(心臓)を撃たれれば死んでしまいますが、クサナギは普通の人間ではなかった。(キルドレであった。)
    キルドレの生命力の強さは他の作品で記述がありますし、カンナミは最後に救急車を呼んでいます。
    カンナミがクサナギを撃ったのはクサナギが顳顬に銃を当てた時で、カンナミはクサナギが頭にダメージを受ける(再起不能になる)のを防ぐためクサナギを撃った。
    という見方も出来ます。
    その後カンナミは裁判、入院、ドール・グローリィへ続く。
    クサナギは病院で治療、キルドレから戻り、ドール・グローリィへ続く。
    というのはどうですか?

    これならスカイクロラのカンナミは妄想でもなんでもなく、事実として受け入れられますし、全体が妄想だった説より、奇麗に飛べてるような気がします。
    どうでしょうか?

  9. YO-SHI

    masakiさん、コメントありがとうございます。

    私も正直に言って「妄想説」は気に入っていません。masakiさんの
    言葉を借りれば「奇麗に飛べてない」と思います。
    「ロスト・ハイウェイ」の設定と似ているものの、他につじつまの
    合う説明ができない、という消極的な理由からこの説を採用した
    ようなものなんです。

    masakiさんの考察では、別人格とかのややこしい話も取り入れなく
    ても説明ができていていいと思います。

    私の別人格という考えの基になっている、「主人公はそれぞれ1名」
    という森さんの言葉も、エピローグは別と考えれば、「クレイドゥ~」
    のエピローグのカンナミを別人格とする必要はありません。
    「ドール・グローリィ」で「お姉さまのために編んだのよ」という、
    ミズキがカンナミに言ったセリフも、そのままの意味だと受け取る
    こともできます。

    これで、masakiさんの説で、クリタの死の時期についての矛盾の
    説明もできればいいのですが...

  10. masaki

    YO-SHIさんに比べると、考察不十分で、偉そうに自説を展開したのを少々後悔してます。
    解決の糸口になればなぁ。という思いもありましたので、どうぞご容赦ください。

    私の説の一番の根拠は、そういうのが森さんらしいかなぁ。という程度のものです。お恥ずかしい限り。。。

    ここからの記述も、あくまで解決の糸口になれば。という私の考え方ですのが、聞き流していただいて構いません。

    時系列についての矛盾についてですが、
    主人公であるキルドレは、時間的な感覚が相当いい加減という特性を持ってますから、
    主人公の語る時間的な記述は曖昧。と私は考えています。

    あと、ソマナカという人物が随所で意味深な発言をしていますが、外部の人間であり、軍の情報操作に踊らされているはずで、
    まして事実関係を一切確認できない立場のですから、彼の発言はいい加減。意図的にミスリードを誘う記述である。
    と私は考えています。
    つまり「クレイドゥ」で、クサナギが死んだ。とか、クリタが娼婦と逃げてクサナギが撃った。とか、主人公をカンナミと呼ぶところです。
    「クレイドゥ」で病院を抜け出したのはクサナギですが、ヒーロー的な存在であるクサナギが病院を抜け出した。
    という事実は公表されるはずが無く、クサナギの行動をクリタやカンナミに摺り替えているはずです。
    これは「ハート・ドレイン」でカイが行った手法ですから、十分有り得る話です。

    ということで、クリタの死についてですが、
    「スカイクロラ」のカンナミは、クリタが居なくなったために配転になった。
    というのは間違いない思われます。

    クリタが脱走した後、クサナギに撃たれた。というのは、「ドール・グローリィ」から読み取れますから、
    「フラッタ・リンツ・ライフ」の最後で不時着し、入院したクリタは、もう一度クサナギの基地に復帰した後、
    「スカイクロラ」の直前で基地を逃走し、クサナギに撃たれた。
    つまりソマナカの言った嘘(予言?)が、本当になった。ということでしょうか。

    それにしても相当に難解な話ですね。今回の考察で私もかなり消耗しました。
    一旦、離脱。しようかな。汗

  11. YO-SHI

    masakiさん、引き続きコメントありがとうございました。

    「ご容赦」なんて..。意見をいただいてとてもうれしかったですよ。
    それから、答えに辿りつける保証のない考察で、深みにはまると危ない
    ので、疲れたら離脱してくださってけっこうですよ。

    ソマナカの言葉は真実か否か、あるいはどれは真実なのか?は、
    考える人によって大きく意見が分かれるところです。
    森さんも「何を信じるべきか、ということが重要」とおっしゃている
    ので、書いてあることがすべて真実とは限らないのは明らかなので。

    ソマナカが言う、クリタが娼婦と逃げてクサナギが撃ったという出来事が、
    「その時点ではガセネタだけれども後追いで実際に起きた」とすれば、
    時間的に整合性はとれるわけですね。

    その意見を否定する材料は特にないのですが、支持する材料もない。
    masakiさんもおそらくそう思ってらっしゃるんでしょうが、ちょっと
    強引な解釈ですね。

  12. れもん

    久しぶりに「スカイ・クロラ」を読んで、再度YO-SHIさんのこの記事へ戻ってまいりました^^
    やはり「ナ・バ・テア」から読むべきだったか?!と少々焦っております^^;

    いろいろとメモして読んだ「スカイ・クロラ」ですが、言葉に惑わされていた部分もあったかなと思うところも多々あり。
    とにかく、全6冊、熟読してみたいと思います!

    やはりとても参考になりました^^
    かなりの労力をかけて作られた考察とのことでしたが、素晴らしいですね。

  13. YO-SHI

    れもんさん、コメントありがとうございます。

    禁断の「スカイ・クロラ」の謎解きに戻ってきてしまったんですね(笑)

    今から挑戦、という人に言うのはお節介がすぎるとは思いますが、
    ハマりすぎると消耗しますから、気をつけてくださいね。
    「勇気ある撤退」もアリですよ。
     

  14. sugi

    YO-SHIさん、はじめまして。
    「スカイ・クロラ」シリーズにはまってしまい、謎解きの最中です。

    YO-SHIさんの『「クレィドゥ~」のエピローグはクサナギの別人格』『「スカイ・クロラ」はクサナギの別人格カンナミの妄想』という考察でこれは正解なんじゃないかと私も思っているんですが、
    少し気になることがでてきたので、YO-SHIさんの意見をお聞かせください。

    『「クレィドゥ~」のエピローグの○○○がクサナギの別人格カンナミ』だとすると、
    ①カンナミの同室が男性であること
    ②ソマナカの言った「半年まえに復帰したクサナギに会ったけれど、別人だ」
    の2つがひっかかるのです。

    ①「スカイ・アッシュ」のラストで、フーコは○○○(クサナギ)を見て「変わってないわ」と言っていることから、
    ○○○(クサナギ)は、カイによって記憶を消されて性転換(女性→男性)されたとは考えられないので躰は女性のままだと思うのです。
    でもそうなると、いくら別人格とはいえ外見は女性ですから、男女を同じ部屋にするのはどうなのか、ということ。
    ②『「クレィドゥ~」のエピローグをクサナギの別人格カンナミ』とすると、ソマナカの言う『半年前に復帰した指揮官クサナギ』は一体誰なのか?、ということです。
    ソマナカは復帰した指揮官クサナギに会っている。
    別人格カンナミは半年前に配属した新人パイロット。
    ですから、この2人は別人だということになると思います。
    ソマナカが嘘を言っているとも考えたのですが、
    「アース・ボーン」でのトキノとマシマの
    「クサナギ氏からフーコがお金を貰った」「クサナギ大尉のことか?」
    という会話により、実際にクサナギ大尉が存在することになるので
    ソマナカの発言は本当だと思っています。

    この2つがひっかかり、
    どちらもクサナギというのは有り得ないでしょうから、
    だったら『半年まえに復帰した指揮官クサナギは、○○○(クサナギ)』で、
    半年まえにサガラを撃った○○○(クサナギ)は、その直後、指揮官として復帰しますが、
    サガラの注射でキルドレに戻ったことが原因で
    『大勢の人間の人生が自分の中に入り込んでくる』(たぶんこの大勢というのは、クサナギが非キルドレ時に関わった人たちや出来事などではないでしょうか?)ことになった○○○(クサナギ)は、
    その為、記憶障害というか人格崩壊的なものになり、長期入院。

    長期入院している間の○○○(クサナギ)の頭の中というか夢・妄想みたいなものが、
    「クレィドゥ~」のエピローグ~カンナミ約5年近いパイロット生活~「スカイ・クロラ」になるのではないでしょうか?

    クサナギは、非キルドレの際にカンナミ少年と会っていて
    とても印象的というかクサナギの心に影響を与えたため
    夢の中でカンナミ(=クサナギ視点)のようになったのではないでしょうか?

    「スカイ・クロラ」でカンナミがクサナギを撃ったのは、
    エピローグでカンナミは「彼女は生き返る。僕だって生き返る」の発言から、クサナギが回復するきっかけのようなものだったのではないかと。

    「スカイ・クロラ」でカンナミが中庭で看護婦らしき人と会話しているのは、実際の出来事で、つまり○○○(クサナギ)自身であるということ。
    カンナミがクサナギを撃ったことで、
    ○○○(クサナギ)は徐々に回復してきているのではないでしょうか?

    また、『「クレィドゥ~」エピローグは長期入院中の○○○(クサナギ)の頭の中というか夢・妄想みたいなもの』であれば、
    カンナミは男性なので、同室が男性でも問題ないですし、

    『「クレィドゥ~」エピソードと「スカイ・クロラ」が長期入院中の○○○(クサナギ)の頭の中というか夢・妄想みたいなもの』だとしても、
    クサナギには間違いないので
    森さんの「主人公(一人称)はそれぞれ1名」とは矛盾しないのではないかと思います。

    その後、随分回復したエピソードが「ドール・グローリィ」
    そのまたさらに後、完全に回復したクサナギがパイロットを辞職して「スカイ・アッシュ」で登場するのではないかと思います。

    また、「アース・ボーン」と「クサナギがクリタを撃つ」話は、
    『半年まえに復帰した指揮官クサナギ』が長期入院するまでの間の出来事というのは有り得ないでしょうか?

    ほんとうに、長々と申し訳ありません。
    まとまりのない文でわかりにくいかと思いますが、
    お時間がある際で構いませんので、YO-SHIさんのご意見をお聞かせ頂けたらと思います。

  15. YO-SHI

    sugiさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

    あんなに集中して考えたこの考察も、時間とともに周辺部から記憶がぼやけてしまって、
    考えをまとめるのに時間がかかってしまいました。

    結論から言うと、sugiさんのお考えに90%賛同します。sugiさんのお考えの骨子は、
    「スカイ・クロラ」だけではなく、「クレイドゥ~」のエピローグからクサナギ(または
    別人格のカンナミ)の夢・妄想なのではないか、ということですね。

    その理由が、(1)「クレイドゥ~」のエピローグでカンナミの同室が男で、人格が変わろう
    とも身体は女なのだからこれはどうなのか、ということと、(2)ソマナカの言う「半年前に
    復帰した指揮官」は誰なのか?の説明ができないということかと思います。

    (1)は見落としていました。ベッドの上段で寝ている奴を「彼」と表現していることから、
    男と同室だったということになり、ご指摘の通り「これはどうなのか」です。

    しかし(2)については、復帰したのはクサナギの替え玉、ということでも説明がつくと思い
    ます。sugiさんのお考えでは、クサナギが一旦復帰して直後に長期入院ということですが、
    それではソマナカの「あれは、別人だ」という発言と却って合わなくなってしまいます。

    まぁその点も「クレイドゥ~」のエピローグから夢・妄想、ということになれば、ソマナカ
    発言(「復帰」も「別人」も)自体が、事実ではないので問題ではなくなります。

    また、「アース・ボーン」と「クサナギがクリタを撃つ」話は、「復帰した指揮官クサナギ」
    が長期入院するまでの間の出来事、という仮定もされていますが、これはどのような理由から
    でしょうか?

    「有り得ないでしょうか?」ということであれば「有り得ないことはない」と思います。
    しかし、これではソマナカがサガラに話した「クサナギ大尉がクリタを撃った」という話が
    「予言」になってしまいます。それでも、「復帰したクサナギ」がクリタを撃った、とする
    理由が思い付かないのです。

    それから「スカイ・クロラ」でカンナミがクサナギを撃つのが、クサナギが回復するきっかけ
    というのは良い見立てだと思います。多重人格者の回復(人格の統合)の過程での「ある人格
    の死」は、「ビリーミリガン」にも登場しています。ただし「元の人格が死んで別人格が残る」
    という形でも良いのかどうかは定かではありませんが。

    sugiさんのご指摘を取り入れて、記事に「追記」をしました。また、ご意見等あれば、遠慮なく
    コメントしてください。この度はありがとうございました。

  16. tanabe

    最近スカイクロラの原作を読み、さっぱり意味がわからなかったのでこの考察サイトを訪ねました。
    7年前の更新が最後のようですが、一応コメントさせてもらいます。
    「クレイドゥ~」のエピローグでベッドの上が男性云々の話ですが、男女同室が禁じられているという表現は作中になかったと思います。
    ナ・バ・テアp77でのクサナギと合田の会話にてクサナギが性別の理由からフロアも違う一人部屋を設けられていると書かれていますが、合田は「安全面からの配慮」という風に答えており、「規則で決められいる」とは答えていません。つまり基地の司令官(ここでは合田)の裁量に任される範囲内の事。合田は女性パイロットとコンビを組んだり、部下として世話をしていた経験のある良識者だから配慮をしたわけで、逆に、キルドレを兵器としか見ていない司令官などは空いている部屋、ベッドにどんどん詰めて入れるような方式を取るかもしれません。

  17. YO-SHI

    tanabeさん。コメントありがとうございます。
    お返事が遅くなってしまって申し訳ございません。
    記憶を呼び戻すために、関係ありそうな部分を読み直していました。

    確かに「男女同室が禁じられている」という表現はなかったように私も思います。
    部屋を割り当てるの性別を気にしない司令官がいるかもしれない、というご意見は、
    なるほどその通りですね。

    著者の森博嗣さんも「非科学的なものはこの世界にはない」とはおっしゃってますが、
    今の日本の一般常識が当てはまるとは、おっしゃってないですからね。むしろ、
    そういったことを疑った方がよいようなニュアンスを、森さんの発言からは感じます。

    この「男女同室」を根拠にして「クレイドゥ~」のエピローグからカンナミの妄想
    だとしたのですが、tanabeさんのご意見に従うと、その必要はないわけですね。

    また、このエピローグが妄想だとすると、ソマナカの言動が妙に客観的事実に
    基づいていることが、少し違和感を感じるのですが、これが実際にあったこととなら、
    その違和感はなくなりますね。

    「男女同室もありうる」説について、もう少し検討してみます。

  18. テッペ

    スカイクロラを読んだのは結構前なのですが、
    ずいぶん昔にホームページでしたが面白くよませてもらいました。
    「ロスト・ハイウェイ」は観たことがありませんが、参考にしたというなら、まさにその通りなのだと思います。

    他に個人的に関係あるかな、と思ったことがあるので、(今更ですが)考察していただけたら。

    まず、森氏は「スターエッグ」なる絵本も出していて、元になったのはもちろん「星の王子様」
    「星の王子様」の主人公は飛行機乗りで、作品のテーマはたしか「イノセンス」だか「ピュア」だったかな?
    結構「飛行機に乗りたいだけ」なのに、そのために戦い、さらには戦いからも離れさせられてしがらみを背負っていく感じが、リンクしている気がします。

    次に「スカイクロラ」を読んで初めに感じたのが「ライ麦畑で捕まえて」に似てるなぁということ。
    主人公の一人称で話が進み、主人公の話であるがゆえに、内容につじつまが合わない感じと、
    最後の場面が確か、病院か何だかで、主人公が病院にいれられていた的な感じだった(と思う)
    サリンジャーを持ってくるあたり、「ライ麦~」をもってきてるのも結構ありなんじゃないかと。
    もっというと「ライ麦~」のテーマも「イノセンス」だった(気がする)
    なんかそのテーマを聞いたときにつながった気がしたんで、その辺確認して考察しませんか(なげっぱなしですが)

    押井守も「イノセンス」とか映画作ってるし、もう自分の中では「スカイクロラ」のテーマも「イノセンス」です。

    あと、フーコが「あの子変わってるから」って言われてる場面があった気がしました。(昔に読んだので完全な脳内変換の可能性も)
    これが同性愛(もしくはバイセクシャル)のヒントか?と、スカイイクリプスを読んで思ったことがあった(ような)

    暇を見つけてもう一度読んでみます。

  19. YO-SHI

    テッペさん、コメントありがとうございます。

    お返事が遅くなって申し訳ございません。

    しっかり読んだのは9年近く前でもあり、記憶の底に沈んでしまって、
    確かなことは何も浮かび上がってこないので、少しお返事に困ってました。

    「スターエッグ」という絵本のことは知りませんでした。今度読んでみます。

    「星の王子様」と「ライ麦畑でつかまえて」は、読んだことがあります。
    確かに似たところがあるように思います。
    特に「ライ麦畑」のホールデンが精神を病んでいることが示唆されて、
    全体的に現実感が揺らいでいるところです。

    扉のページに「ナイン・ストーリーズ」の引用がある以上、サリンジャーと
    関係があるのは確実だと思いますから、「ライ麦畑」との関係を考察すると
    何か出てくる可能性はありますね。

    ただ、考察はとても消耗します。今はそういう元気がありません。
    いつか機会があれば..と思っています。

  20. ヨセフカ

    はじめまして。考察という心身を消耗する行為を、情熱的で非常に繊細に進めてこられたことに敬意を表します。本当にすごいと思います。
    私はスカイ・クロラには映画から入りました。小説を幾度となく読み返しながら、8年ほど、少しずつですが考察し続けています。しかし、ネットにまとめるようなこともしておらず、このようなことを続けてこられたこと、心から尊敬しております。

    内容についての主張ですが、私のものと概ね似ていると思っています。
    しかし
    ・スカイ・クロラとクレイドゥ・ザ・スカイの時系列が反対なのではないか?
    ・スカイ・クロラは完全な妄想ではなく、クサナギから分離したカンナミの都合のいいように、事実から本文のように変換されているのではないか?
    という上記2つについて、少し食い違いました。

    まず時系列についてですが、雑誌のコメントが根拠にスカイ・クロラを最後としていると思いますが、当雑誌での記述は「最終巻」であって、時系列的に最後の巻という森先生の記述は見つけられませんでした。また、クロラ→クレイドゥと考えると
    ①クレイドゥ冒頭の入院の理由→自殺とは発表できないため、戦闘で死んだことにし、キルドレ化の注射で肉体的に回復、と考えると説明しやすい
    ②クレイドゥでは主人公は今までにないほどの錯乱状態にあるが、これは主人格である「クサナギ」を失ったためではないか
    ③クサナギがフーコと仲良くやった経緯が不明→クロラがそのまま経緯なのではないか?
    と説明がつきやすいと思うのです。
    カンナミという人格が持っている記憶は、クロラでウリス基地に配属後であり、その前の記憶は断片的な創作の記憶であると考えています。矛盾のないように創作された記憶たち、こういったものが作中に多く存在すると仮定すると、クレイドゥエピローグは、いわば「つなぎの記憶」なのでは?と考えます。こうすると、男女同室などの問題は氷解します。

    次に完全な妄想ではないのでは、という部分についてです。
    これは、ボーリング場などの例外を除くと、クサナギとカンナミが同時にいる際、どちらかは沈黙していることを根拠に上げさせてください。
    予備クサナギという一人の人間がいなくても、ほとんどのシーンで辻褄は合うわけです。(例外のシーンは、そのシーンそのものが架空の記憶である可能性を考えていますボーリング場でのやりとりは、例えば栗田と土岐野と一緒にボーリングに行ったことがあり、栗田にカンナミを被せた?と考えることも出来るかと)
    三ツ矢、土岐野の2人が知らないはずのことを知りすぎているなど、妄想という線は、私は間違いないと思っています。

    作中での根拠がいまのところなく、雑誌での記述も森先生の発言としては明確なものでは無い、ということもありますので、クロラ→クレイドゥ説でもう一度簡単にでも考察をして頂けないでしょうか…?
    考察は本当に身も心も擦り切れる行為ですし、既に考察を完成させてから10年が立っていることなど、厳しいとは思いますが、どこか心に留めておいていただけたらと思います。
    最後になります。わがままを挙げましたが、どうかご自愛ください。私もずっと考察を続けていますが、本当に少しずつです。もし万が一心と体にゆとりが出来たら、どうかまたお考えを聞かせてください。

  21. YO-SHI

    ヨセフカさん、コメントありがとうございます。
    お返事が遅くなって申し訳ございません。

    8年間も考察を続けておられるとのこと、たいへん素晴らしいことだと思います。敬意を表します。

    また、概ね似ていると言っていただいて、ホッとしています。自分勝手な考えに陥っているのではないかと心配していましたから。

    先に「完全な妄想ではない」については、異論はありません。妄想とは言え、記憶に基づいたものもあるはずなので、事実も含まれているでしょう。

    次に「クロラ→クレイドゥ説」ですが、これには私は否定的な考えを持っています。

    おっしゃる通り、雑誌「ダ・ヴィンチ」のインタビューでは、「時間軸上では最後」は雑誌の地の文で書いてあるだけで、森さん自身の発言は明確なものではなく「最後の部分」とおっしゃっているだけです。

    これをして「スカイ・クロラ」は、本当は時間軸で最後ではないのではないか?とする意見を持つ方が少なからずいらっしゃるのも知っています。

    しかし、この後に出た様々な媒体で、「スカイ・クロラ」は時間軸で最後、が既成事実として扱われています。

    例えば「スカイ・クロラ」の英語版電子書籍では、本の紹介文に「chronologically the last story」と書いてありますし、巻末の森さんのインタビューでもインタビュアーが「the last story in the timeline」と発言し、森さんも否定していません。

    とは言え、私も今回、森さん自身の発言を探しましたが、「最終巻」はあっても「時間軸で最後」は見つかりませんでした。

    森さんも「何を信じるべきか、ということが重要」とおっしゃっているので、ヨセフカさんが、森さんの発言以外を信じず、時間軸で最後とは確定していない、と考えられるのは、ひとつの考え方だと思います。

    「クロラ→クレイドゥ」ならば、いろいろなことが説明しやすいのはその通りですが、私としてはもう少し積極的な理由がなければ、この説は取れない、と思っています。

    ご期待に沿えず申し訳ございません。

  22. 通りすがりの者です。

    こんにちは。自分なりに色々考えて、そうとしか思えないという結論がどこかに書いてないかと探していてここを見つけました。
    やはり『スカイ・クロラ』は、入院中に見たクサナギ・スイトの夢だったのですね。
    「散香に乗れることを約束する。私と一緒に、戻りなさい」と『クレイドゥ・ザ・スカイ』でカイに言われて従ったクサナギは、そのまま入院させられたのではないかという気がしてならないのです。だって、こんなアブナイやつ戦闘機になんて乗せられないでしょ?カイが希望しても上が許さなかったと思います。

    そして長い長い入院生活の中で見た夢が、『スカイ・クロラ』。
    『スカイ・クロラ』の中で、クサナギはキルドレになって14年だと言っています。対するカンナミはパイロットになって5年。
    カンナミとは戦闘機に乗っていた頃のクサナギですから、9年の開きがあります。

    10年ほど入院していたというのは『ドール・グローリー』にある通りなので、病院に閉じ込められて飛ぶことができないクサナギと、まだ飛んでいた頃のクサナギ(カンナミ)の対話が『スカイ・クロラ』という物語なのではないかなと、私は思いました。
    『スカイ・クロラ』の中では、クサナギは戦闘目的では一度も飛んでいないです。自分の戦闘機すら持っていません。
    飛べないクサナギと飛べた頃のクサナギ(カンナミ)。その対話。

    トキノの役割は、夢の中の案内人。「一応、案内するのがさ…… つまり、俺の役目かなって」のセリフのとおりです。
    続く「昨日の夜もそこで?」に「いや……」と首を一度だけふって睨んだのは、『昨日の夜カンナミの居る部屋に帰って来るときに“存在を始めた”から』つまり、夢の中でそのとき産まれたから。昨日の夜はまだどこにも居なかったから。
    トキノが色々知りすぎているのは、夢の中の案内人だから。という解釈です。

    もう殺して欲しいと願うクサナギは入院中の草薙水素の願い。戦闘機で出撃するカンナミは入院中の草薙水素の願い。
    「飛行機に乗りたい。でももう乗れない」という気持ちを整理するための物語が『スカイ・クロラ』だったのではないかなと思えます。
    もう9年も入院している。いいかげん開放して欲しい。飛行機に乗りたいという夢から。飛行機で敵と踊りたいという渇望から。
    そのクサナギの切望から生まれたのが、『スカイ・クロラ』という物語だったのかなと。

    『クレイドゥ・ザ・スカイ』のエピローグから、もうすでに夢というか幻想なのでしょうね。きっと。
    クサナギは、カンナミとして赴任することなどなかった。エピローグの前に、もう一度病院に連れ戻されて入院していた。
    もしかしたらクサナギの偽物は司令官としてどこかの基地に赴任していて、それを、見舞いに来たソマナカから聞いたのかもしれませんけれど。

    シリーズ最終話『スカイ・アッシュ』。空に漂う灰。
    その最後をしめくくる「そう……、夢のようだね、なにもかも」というクサナギのせりふ。
    やっと夢からさめたクサナギのせりふ。『スカイ・クロラ』によって、夢からさめることができた。

    彼女が、夢からさめて普通の女性としての幸せを手に入れられるようになることが暗示されているのだとしたら、これは、このシリーズは、結局いいはなしだったのではないかなと、少し思います。

    1. YO-SHI Post author

      通りすがりの者です。さん、コメントありがとうございます。

      とても興味深く拝読しました。
      正直に言って、自分の考察も細部は覚えていないのですが、トキノのセリフには何の注意も払っていなかったと思います。
      コメントを読んで「もうこれしかない」と思いました。

      トキノに注目して、もう一度スカイクロラを読んでみたいと思います。

      1. 通りすがりの者です。

        お返事ありがとうございます。
        『スカイ・クロラ』がクサナギの見た夢だと判断した理由は色々あるのですが、全部を書くと冗長になりすぎるし、あくまでも私個人の考えなので割愛します。ただ、そう判断する根拠になった人物が2人居るというのだけ書いておきます。

        トキノ。そして、フーコ。

        『スカイ・クロラ』が現実だとしたら、そこには『偽物のクサナギ』と『偽物のクリタ』が居るはずです。
        偽クサナギに関しては、事前に偽物として成り済ますためにクサナギの情報を “教えられていた” と解釈することは可能です。
        記憶の植え付けはできなくても、情報を記憶させることはできるのですから。

        偽クリタに関しても、フーコのせりふ「ジンロウも、最初の日に同じこと言った」が、前任者のことを知らないという意味ではなく「ジンロウって誰なのか、知らないから」と偽クリタが言ったという意味であったのなら、記憶をなくして戻って来たという設定でやって来た偽クリタが、7か月前にフーコの元を訪れたときに『以前のことは憶えていない』という意味のことを言ったという解釈もできます。

        ただ…。それではフーコがまだ娼館に居ることが説明できないのです…。
        『スカイ・クロラ』が現実だったとしたら、このときクサナギは自分をカンナミだと思っている。
        なので、その後フーコにクサナギとしてお金を渡すことができたとは思えないのです。
        その後渡すことができないのにフーコはクサナギからお金をもらっている。

        つまり、『スカイ・クロラ』の時点で、もうすでにフーコはクサナギから娼館を抜け出すために必要なお金をもらっている。ということになります。
        なのにまだ娼館に居る。
        これが説明できないのです。

        なぜフーコは、『スカイ・クロラ』の時点でまだ娼館に居るのか。
        なぜクサナギとクリタの両方を知っているトキノが、『スカイ・クロラ』の中で違和感を感じていないのか。
        それが、「この物語は草薙水素の夢だ」と私が判断した根拠です。

        クリタ、と、フーコ。
        特に、フーコ。
        この2人の説明のつかない言動が、私がこれは夢だと判断した理由です。

        1. 通りすがりの者です。

          あ。あと、もうひとつ。

          『カンナミ』という人物は、現実には存在しなかったのだと思っています。
          最初にクサナギがカンナミと会った病院の中庭。あのときカンナミに付き添っていたとクサナギが思った看護師は、実は窓からクサナギを見ていただけなのではないか。
          二度目に会った病院の屋上で、カンナミと一緒に居たと思った看護師は実は一人で屋上に居て、近寄って来たとき『クサナギに話し掛けた』のではないか。
          三度目に会った時、カイが『ヒガサワを入れて17人』という意味で17人と言ったのなら、そこにカンナミは居なかったことになる。現に、カンナミは手も揚げていないし質問もしていない。
          四度目は明らかにクサナギの夢あるいは幻想だと思われる。
          カンナミは、誰とも接触していない。つまり会話もしていないし身体的な接触もしていない。クサナギ以外の人とは。

          そして、これが一番の根拠なのですが、それまで『カンナミ』としてしか言及されていなかった彼のファーストネームを、クサナギは『クレイドゥ・ザ・スカイ』で口にしている。
          『カンナミ・ユウヒチ』というフルネームが、知っているはずのないクサナギの口から出ている。

          彼女はなぜ『ユウヒチ』というファーストネームを知っていたのか。カンナミは一度も口に出していないのに。
          それは、カンナミという人物がクサナギの作り出した幻想の中の人物だったからだと、私は解釈しました。

          カンナミ・ユーヒチなどという人物は存在しなかった。
          それはクサナギ・スイトが頭の中で作り出した幻想の中にだけ存在する人物だった。
          とすれば、カンナミ・ユーヒチが戦闘機に乗って戦う『スカイ・クロラ』は現実であるはずがない。
          ということなのです。

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