死神の精度

著 者:伊坂幸太郎
出版社:文藝春秋
出版日:2008年2月10日 第1刷 3月5日 第3刷
評 価:☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎作品。2003年から2005年にかけて発表された表題作を含む連作短編が6編収録されている。今回の主人公は「死神」。取り憑かれれば死期が近いという、なんとも不吉な主人公なのだが、著者の手にかかれば「こんなヤツならいてもイイかな?」なんて思ってしまう。

 主人公の死神の名前は千葉。そう死神にも名前があるのだ。仕事をする時の仮の名前なのだが、なぜかみんな市や町の地名になっている。仕事?そう死神にも仕事がある。仕事だけじゃない、監査部とか情報部とかの部署があって、分担して人の死に関する仕事をしている。
 そして千葉は調査部の一員だ。調査部の仕事は、情報部が選抜した人間を調査して、「死」を実行するのが適当かどうかを判断して、結果を監査部に報告することだ。判断はそれぞれの裁量に任されているし、よほどのことが無い限り「可」の報告をすることになっている。やっぱり、彼らが近くに現れたら死を覚悟した方がいいらしい。
 だから彼ら調査部の死神は「死の前触れ」ではあるけれど「死の原因」ではないのだから怨んだって仕方ない。とは言え「こんなヤツなら~」とはとても思えないところだが、なんかイイのだ。千葉には悪意が全くない(「助けてあげよう」とかいう優しい気持ちもないけれど)ところがイイのかも。頼まれたことは、やってあげてしまうところかもしれない。

 伊坂作品の魅力は、シャレたセリフと登場人物にあるが、本書も同じ。千葉が、仕事をする時には必ず雨が降ると言うと、調査対象の女性が「雨男なんですね」と答える。千葉がそれに返した言葉は..。彼の素朴な疑問の数々には思わずニヤリ。登場人物でいうと、最終話の美容院のおばあちゃんがイイ。年をとると何でも見通せるようになるらしい。伊坂ファンへのサービスエピソードもある。

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8つのコメントが “死神の精度”にありました

  1. るるる☆

    私が初めて読んだ伊坂作品が「死神の精度」でした。
    懐かしく思い出しながら、レビュー読ませていただきました^^
    人間界に不慣れで、ちょっとズレた千葉がいい味出してますよね。
    最終話のおばあちゃん素敵な生き方ですね。
    同じ夜が淡々と続いていく、静かな時間の流れ方も
    読んでてとても心地良かったです。

    私はこれが最初だったので、リンクしてるの知らなかった・・
    読み直したら驚きがあるかな?
    千葉さんも「魔王」で調査のお仕事に来られてますよ(^^)

  2. Yo-SHI

    るるる☆さん、コメントありがとうございました。

    るるる☆さんは、この本が「初伊坂」でしたか。
    伊坂作品で連作短編というのはそう多くありませんが、
    短い物語の中で、伊坂さんらしさを味わえて、なかなか
    いいですね。

    「魔王」ナナメ読みですが読み直しました。いました。
    調査してました。教えてくれてありがとうございます。

    教えていただいたお返しに..サービスエピソードの
    リンク先は、るるる☆さんの未読作品(少なくとも
    ブログには載ってないです)ですね。
     

  3. たかこ

    YO-SHIさん こんにちは。

    千葉さんの変な日本語ににんまりでした。
    伊坂ファンへのサービスエピソードとは?
    また謎が深まる伊坂さんです。

    最近、伊坂さん大人気で、図書館の本はすべて貸し出し中です(×_×;)

  4. YO-SHI

    たかこさん、コメントありがとうございました。

    千葉の日本語が変なのか、日本語そのものが変なのか。
    その人が参加すると必ず雪が降る人は何というのでしょうね。

    子どものころからずっと海外で暮らしてきた、私の友達は
    「人魚」と「半魚人」の区別ができませんでした。
    きっと千葉も区別できないでしょうね。

    サービスエピソードのリンク先ですが、たかこさんも未読かも。
    直木賞候補になって、伊坂さんの名前を広めることになった
    あの作品です。
     

  5. 桔梗

    はじめまして。
    ブログ村からたどりつき、いろいろ本のレビューを読ませていただきました。

    「死神の精度」私の中では1、2位を争う伊坂作品です。
    私もこのなんともユーモラスで真面目な死神が大好きで、こんな死神ならいてもいいかと思ってしまいました。

  6. YO-SHI

    桔梗さん、コメントありがとうございました。

    なかなか面白かったですね。伊坂さんの作品の登場人物は
    意表をつくユニークさがありますね。死神のことを「いてもいいかな」
    なんて普通は思わないですよね。

    桔梗さんのブログも拝見しました。
    有川さん、加納さん、伊坂さん、村上さん、私の好きな作家さんの
    名前が並んでいました。そして、知らない作家さんもたくさん。
    恩田陸さんの本をたくさん読んでらっしゃるのですね。参考に
    させていただきます。

    ブックマークにも入れていただいているようなので、こちらも
    右のリンクリストに加えさせていただきました。
     

  7. 桔梗

    こんにちは。
    私の感想も読んでくださったとのこと、とても嬉しく思います。おまけにリンクリストにまで加えてくださってありがとうございます!!
    これからも好きな本には反応して思わずコメント入れてしまうかと思いますが、よろしくお願いします。

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