ぼくとルークの一週間と一日

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:大友香奈子
出版社:東京創元社
出版日:2008年8月25日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 ジョーンズの初期の作品。オフィシャルファンサイトによると、児童書としては3作目、「うちの一階には鬼がいる!」の次に出版されたものだ。表紙裏に「現代英国児童文学の女王の初期傑作登場。」とあるが、確かにこれは傑作だ。
 ジョーンズ作品は一定の需要が見込めるのだろう。邦訳されていない作品を求めて、ここのところ過去へ遡る傾向が続いている。まだこんな面白い作品が残されているのだから、出版社が邦訳作品獲得に熱心になるのも分かる。

 両親を亡くした主人公デイヴィッドは、大おじのプライス家に引き取られ、普段は寄宿学校に行っている。休暇になると、プライス家に戻らないといけないのだが、それがいやでたまらない。大おじをはじめ、その家の人々が家政婦まで含めて邪険に扱われているのだ。
 そんな境遇を打ち破り、プライス家の人々にひと泡吹かせようと、デイヴィッドがやったことは、デタラメに考え付いた呪いの言葉を高らかに唱えること。なんとも幼稚な思い付きだが、これが本当に効果があったのか、地面が揺れてレンガの塀が崩れる。と、そこに現れたのがルークという名の少年だ。二人はすぐに意気投合し、デイヴィッドが必要とすればルークが駆けつけるという仲になる。

 そして二人は、「降りかかるトラブルを協力して乗り越え」「大人たちをアッと言わせて」「面白可笑しく暮らして..」という展開は児童文学的にはありだが、ジョーンズに限って言えばあり得ない。どうもルークは普通の少年ではないらしい。言動がちょっと常識からズレているし、誰かに追われているらしい。事件の背景には少年の手には負えない大きな出来事があって...

 ジョーンズが描く家族や親戚は一クセも二クセもある。今回の大おじたちも例外ではない。でも訳者あとがきにもあるように、「人は見かけどおりではない」というのが、ジョーンズ作品のメッセージ。今回も悪人だと思っていた人がそうでなかったりで、テンポの良い物語の展開とともに楽しめる。

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2つのコメントが “ぼくとルークの一週間と一日”にありました

  1. 四季

    YO-SHIさん、こんにちは。
    これ、面白かったですよね。
    私としては、話が意外な方向へと結びついていくのが楽しくて!
    元々大好きな方面なので~。
    (ネタばれせずに、分かるように書くのが難しいんですが…)

    クレストマンシーシリーズの最新作も面白かったですよ!
    YO-SHIさんもぜひぜひ。
    DWJ、まだまだ勢いがありますね。

  2. YO-SHI

    四季さん、コメントありがとうございました。

    四季さんのブログの記事も拝見しました。
    そう言えば、お好きでしたよね。あの方面のお話が。
    私はあまり詳しくないので「これって多分何かの...」
    ぐらいにおぼろに感じただけでしたが、よく知っていれば
    「そうだったのか!!」って感じなんでしょうね。

    最新作の記事が四季さんのブログに載っているのは
    見てるんですが、自分で読むまでは記事は読まないで
    おこうと思って、まだ読んでません。
    近々読めると思います。その時にはコメントを入れますね。
     

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