著 者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2006年11月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
やさしい雰囲気の中で、ちょっと不思議で時に切ない話を書く著者。本書は文芸誌などの様々な媒体に書かれた短編を8編収めた短篇集。著者の作品で「ななつのこ」や「レイン・レインボウ」、「ささらさや」などは、短編同士にもつながりがある「連作短篇集」だが、本書は(ちょっと残念だが)それぞれが完全に独立した物語。
いろいろな加納作品が楽しめる、という意味ではおトクな本。不思議系の「パズルの中の犬」と「シンデレラのお城」。どうしようもなくダメな肉親を描いた「マイ・フーリッシュ・アンクル」と「ポトスの樹」。ほろっとさせる「いい話」系の「セイムタイム・ネクストイヤー」「ちょうちょう」、さらにそこに笑いを振りかけた「バルタン最後の日」。そしてオチが巧みな表題作「モノレールねこ」
「各種取り揃えました」という感じの短篇集だけれど、多くの収録作品に通じるテーマは「家族」。それは「家族を欠いた」ことで始まる物語であったり、「家族の過去」に触れる出来事であったり、「偽りの家族」の物語であったりする。
一番好きな作品を1編だけ紹介する。それは「バルタン最後の日」。ディズニーランドに行くと、しばらくは粗食を覚悟せねばならないという、慎ましい暮らしをしている家族。その家の少年フータが釣ってきたザリガニの「バルタン」が主人公。
悪意はないのだがザリガニの飼い方を知らない家族。「バルタン」は家族の不注意による生命の危機を幾度も乗り越える。そして、家族はなぜか「バルタン」にだけ思いを吐露する。みんな何かを心に抱えている。家族を想うあまりそれが言えないなんて..。「バルタン」もいいヤツなんだけれど、私は「お母さん」に泣けた。
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こんばんは。
「バルタン最後の日」、私もお母さんの気持ちを考えると胸がつまりました。
「バルタン」も含め、家族みんながそれぞれを思いやる、優しい愛がいっぱいつまった作品でした。
温かい切なさがちょっぴり胸に痛くて、でもそれがなんとなく心地よい、加納朋子さんの作品はそんな感じがします。
まひなさん、コメントありがとうございます。
「温かい切なさがちょっぴり胸に痛くて、でもそれがなんとなく心地よい」
加納さんの作品を表すのに、ぴったりな表現ですね。
「バルタン~」のお母さんは切なかったですね。
笑えないだけにさらに切ない。
加納朋子「モノレールねこ」
加納朋子著 「モノレールねこ」を読む。
このフレーズにシビれた。
ぼくは鼻歌を歌いながらその紙を丁寧に折りたたみ、赤い首輪にそっとはさみこんだのだった。
[巷の評判]
三流物書きを目指すたつきに薔薇をでは,
「狂気というものに恐怖ではなく、感動させられたのは初……