オデュッセウスの冒険 サトクリフ・オリジナル5

書影

著 者:ローズマリ・サトクリフ 訳:山本史郎
出版社:原書房
出版日:2001年10月10日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 著者が伝説や神話の再話を試みた作品群、サトクリフ・オリジナルの第5弾。第4弾の「トロイアの黒い船団」の「イーリアス」に続いて、ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」を基にしたもの。「イーリアス」が描いたギリシアとトロイアの間の戦いの後、ギリシアの勇将イタケの王オデュッセウスが故郷を目指す冒険が描かれている。

 「故郷を目指す冒険」?伝説だから確かなことは言えないけれど、小アジア半島のエーゲ海沿岸にあったとされるトロイアから、オデュッセウスの故郷イタケ島とされる島までは、ギリシア半島を回って距離およそ1000キロ。遠いようでも船で数日の距離。冒険と呼ぶには近すぎる。
 ところが、トロイアを発った船団は風に恵まれず、いきなり正反対の方向のエーゲ海の北「トラキア」に流れ着いてしまう。その後も神々や巨人族、魔女、そして手下らの軽率な行いに翻弄されて、実に故郷イタケ島の土を踏むまで19年もの歳月がかかってしまう。

 まぁ次から次へと災難に会いその度に部下たちを失いながら、その都度の判断によって危機を逃れる。現代の小説のような捻りや伏線などはないけれど、その物語は正に英雄譚。屈託なく楽しめた。
 実は、故郷へ帰るまでの冒険は本書の前半分。後半は、帰り着いた故郷での物語。余りに長い王の留守の間に、不作法な貴族たちに好き放題にされていた宮殿の大掃除だ。冒険もいいけれど、こっちの方が面白かった。

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5つのコメントが “オデュッセウスの冒険 サトクリフ・オリジナル5”にありました

  1. YO-SHI

    ブック人気ランキング娯楽部さん、コメントありがとうございます。

    リンクありがとうございました。
    貴ランキングサイトのご発展をお祈りいたします。

  2. chai

    久々にお邪魔します[E:happy01]
    オデュッセウスの冒険は確か、映画(テレビ放映!?)かビデオで観ました。
    なかなかよくできた映画でした。[E:good]
    冒険物は基本的に好きなので、楽しんで観た思い出があります。
    本では、帰り着いてからの話もあるようですね。[E:sagittarius]

  3. YO-SHI

    chaiさん、コメントありがとうございます。

    「オデュッセイア」は、映画になってるんですね。
    本を読んでいて、映画向きのストーリーだと思っていました。
    手に汗握る「冒険映画」。娯楽映画の王道ですね。
     

  4. 投資一族のブログ

    ホメロスの世界 7/8~漂流地はどこか?

    オデュッセイアが成立した前後の、ギリシア人の西方への進出について、簡単に述べておこう。紀元前8世紀中頃から2世紀間は、ギリシア人の植民活動の時代であり、西方にも多くの植民市が建設された。たとえば、シケリア(シチリア)島のシュラクサイは734年に建設され、マッサリア(今日のマルセイユ)は600年に建設されている。「オデュッセイア」が成立したのは、この植民時代の初期の頃であったであろう。ヘロドトス(「歴史」第4巻152)によれば、サモス島の商人コライオスは、エジプトへ航行する途中で大嵐に遭い漂流して、は…

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