著 者:朝倉かすみ
出版社:光文社
出版日:2008年2月25日 初版1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
本好きのためのSNS「本カフェ」で知り合いの何人かのブログで見て読んでみようと思った本。(るるる☆さん、ジーナフウガさん、板栗香さん)
クラス会の話である。40才の大人たちの小学校のクラス会。場末のスナックでの3次会まで流れてきた男3人女2人。冒頭に流れてきた音楽は「夜空ノムコウ」。「あのころの未来に、ぼくらは立っているのかなぁ」。物語を読む前に泣けてきた。
本書は「小説宝石」に2006年から2007年にかけて掲載された短編を6つ収録した連作短編集だ。「田村」はスナックにいる5人には入っていない。タイトルのとおり、この5人は「田村はまだか」と言って彼を待っているのだ。待っている間に5人+αのそれぞれの人生の1コマが、小学校時代のエピソードを織り交ぜながら順々に語られていく。
中にはあまりに赤裸々な表現の話もあるのだけれど、5人自身の人生はどちらかと言うと平凡なものと言える。「六年一組が沸き返った」という小学校時代の出来事が一番の事件かもしれない。登場人物の1人が「紙吹雪が見えた」と言ったそうだけれど、読んでいる私にも見えたような気がする。紙吹雪が。
しかし、大きな事件とは言えないけれど、語られるその1コマはそれぞれの「今」につながる凝縮した1コマだ。その1コマの紹介で、40才になった彼らの今の立場や悩みが鮮やかに伝わってくる。この著者は人物造形や物語の組み立てがうまい。
私は彼らよりいくらか年上で、高校卒業後に実家出て何度も引っ越しをしていることもあり、もう小学校はおろか中学校時代の友達との交流もない。かろうじて高校の同窓会の音信が聞こえてくる程度、大学時代の友達とも何年も会っていない。もし今、会ったらどんな話をするのだろう?
12月になり年賀状を書く時期になった。私の年賀状の大半は、恩師や大学時代の友達、以前の会社の同僚や先輩など、自分を過去とつなぎ止める人たちに宛てたものだ。そんなことを思いながら、るるる☆さんオススメの、作曲者の川村結花さんの「夜空ノムコウ」を聞いたらまた泣けてきた。
この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。
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そうだ年賀状ですね~。私も学生時代の友人が中心で、もう十何年も会ってないのに
年賀状のやり取りだけは続いてますね・・。
同窓会は行ったことない・・というか、私も転居続きで行方不明扱いになってると思う・・・。
改めて、そんな友人たちとの繋がりを考えながら
「夜空ノムコウ」を聴くとしんみりしてしまいます。
この曲がまた今の冬の空気とぴったりマッチしてますね~。(ノ_<。)
るるる☆さん、コメントありがとうございます。
この本は最初るるる☆さんのブログで見つけたんです。
川村結花さんの「夜空ノムコウ」のことも。
私はマイカー通勤なんですが、冬の夜の帰り道に車で
この曲を聴いてると気持ちが学生時代に漂っていきます。
「すべてが思うほどうまくはいかないみたいだ」
改めてそのとおり。
田村はまだか(朝倉 かすみ)
田村はまだか著者:朝倉 かすみ販売元:光文社発売日:2008-02-21おすすめ度:クチコミを見る
自分の人生、
やや持て余し気味の世代のある一夜を、
軽快な文体で描きながらも
ラストには怒濤の感動が待ち受ける傑作の誕生。
(帯文から抜粋)
…
“田村はまだか”は去年の夏に読みました。
おもわず登場人物たちと田村を待っているような気持になりました。
年賀状を準備する季節に思い出す作品です。
“夜空ノムコウ”は作詞家:スガシカオさんは彼が予備校生の時を思い出して書かれた歌だと話されていました。
SMAPの歌で一番好きな歌です。
ホントに、うまくいかない事が多いなぁ。
「田村はまだか」(朝倉かすみ)
札幌のススキノの小さなバー「チャオ!」。
小学校の同窓会から流れた5人が田村を待つ。
田村は飛行機が遅れて同窓会に間に合わなかったよう…
spring-ringさん、コメントありがとうございます。
「夜空ノムコウ」は、予備校生の頃を振り返った歌詞なんですね。
甘さと切なさ、希望と不安がないまぜになったフワフワした感覚は
ちょっと宙ぶらりんな時期から現在を見たからかもしれませんね。
こんにちは。あがさです。
「田村はまだか」本カフェでは大人気ですね^^
私も読みたくなってきました。
最近、某大手SNSで同級生がいないか、一生懸命探してしまう自分がいます。
「あの頃」に少しでも手を伸ばしたいのかなぁ…。
あがささん、コメントありがとうございます。
そう「本カフェ」で何人もの方が読まれいて、興味を持ちました。
それで面白いことに気が付いたんですが、多くの方が「○○さんの
ブログで読んで」とか「薦められて」という具合で手に取って
らっしゃるんですよ。
うまくまとめれば、1本の糸につながるんじゃないかと思うぐらい。
ブログがつなぐ本の縁、いや、本がつなぐブログの縁の方がいいかな?
朝倉かすみ 田村はまだか
深夜のバー。小学校クラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友を待つ。大雪で列車が遅れ、クラス会に間に合わなかった「田村」を待つ。待ちながら各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。今の自分がこうなったのは、誰の影響なのだろう―。それにつけても田村はまだか?来いよ、田村。人生にあきらめを覚え始めた世代のある一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒涛の感動が待ち受ける傑作。(「BOOK」データベースより) 評判がいいのは聞いていたのですが、やっと読めました♪あらすじ紹介のラストの怒…
こちらにもこんばんは♪私の名前が登場していてびっくりしました。(^^ゞ
私もかろうじて中学時代の友人ひとりと交流が続いていますが、ほぼ高校生以上の人としか交流はないですねぇ…それも年賀状のやりとり程度です。でもつい最近になってmixiで高校や大学時代の友人と少し交流が復活したかな?という感じです。(^^ゞ
この作品は最初の短編の完成度が非常に高くてそれだけでもいいんじゃないか?という感じもしましたが、続く短編たちも40年も生きていたら色々とあるよね~という人生の色々が綴られていて、読み応えがありました。また作者も上手いから読ませるんですよね~
あ!ブログをリンクさせていただきました~(^^)
板栗香さん、コメントありがとうございました。
お名前を勝手に使わせていただきました。事後承諾ですがよろしくお願いします。
それぞれの出来事は「誰にでもある」とは言わないけれど「あってもおかしくない」
出来事ですね。そう、40年も生きていたらいろいろと...
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