一角獣の殺人

書影

著 者:カーター・ディクソン 訳:田中潤司
出版社:東京創元社
出版日:2009年12月25日第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 不勉強のため知らなかったのだけれど、著者は本書のカーター・ディクスンの他、本名のジョン・ディクスン・カーなどの名義で、1930年から70年代にかけて実に80作余り、特に30年代には年に4作も5作もを発表している。つまりは超売れっ子作家であったわけだ。本書はその全盛期とも言える1935年の作品。

 主人公は元英国情報部員のケンウッド・ブレイク。彼が元情報部員というだけでなく、この物語は英仏の国境を越えた、英国情報部の極秘任務という、まさに007ジェームズ・ボンドの映画の世界。発表年から心配される「古くささ」を全く感じることなく楽しめた。
 舞台はフランスの古城。嵐の中近くにマルセイユからパリに向かう飛行機の定期便が不時着した。乗客の中には神出鬼没の怪盗と名探偵の警部が、それぞれ正体を隠して潜んでいるらしい。怪盗の狙いは「一角獣」、これまた正体不明なのだがどうやらロンドンへ輸送中のお宝らしい。
 主人公のケンウッドは、旧知の美女の情報部員となんと英国情報部長と共に、この古城に乗客らと共に避難して来た。(この英国情報部長のヘンリー・メリヴェール卿が、どうやら著者の作品の主役キャラクターらしい)

 城の主や下働きの者を含めて十数人が滞在する城で、誰が怪盗なのか警部なのか分からないまま、殺人事件が起きる。頭を長い円錐状のもので突き刺した跡がある死体が、階段の踊り場に残された。階段の上にも下にも人がいる中での凶行だが、犯人はおろか凶器さえ見つからない。やはりタイトルの通り「一角獣」の仕業なのか?
 著者は「密室の王者」という異名を持つそうだが、今回は密室どころか階段という完全なオープンスペースでの犯罪。だが、不可能犯罪としては密室以上と言える。「どうしたってこれはムリでしょう」という感じなのだが、ちゃんと謎解きもある。
 美女の情報部員が早々に登場した時に、主人公とどうにかなるのだろうなぁ、と思ったのは、007の映画のせいだろうか?

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3つのコメントが “一角獣の殺人”にありました

  1. lazyMiki

    ひさしぶりにお邪魔しま~す。
    ディクスン・カー、すごーい、久しぶりです。
    大昔、高校から大学にかけて洋モノミステリーを読みまくった頃、
    何冊か読みました。
    ギデオン・フェル博士を探偵にした「緑のカプセルの謎」とか「三つの棺」とか。
    「三つの棺」は、おどろおどろしくて(詳細は忘れましたが)!
    モーリス・ルブランの「三十棺桶島」とタイトルが似てるんですが、どっちも
    怖いんです。
    たぶん、今読んだら、いかにも怖がらせようって感じに読めるんじゃないかと思います
    が、あの当時は素直に怖がってました。
    とっても懐かしいです。

  2. YO-SHI

    lazyMikiさん、コメントありがとうございます。ようこそ。

    ご存知なんですね、ディクスン・カー。私は、この本が初めてでした。
    著者の紹介などによると、怪奇小説を書いていた時期もあるとか。
    私は怖いのは苦手で..。年を取った今読んでも怖いかも(笑)
     

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