著 者:吉田修一
出版社:朝日新聞社
出版日:2007年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
大佛次郎賞と毎日出版文化賞をダブル受賞。本屋大賞第4位と、2007年・2008年の話題の本。出版数は220万部を突破したそうだ。昨年9月に、妻夫木聡さん、深津絵里さんの主演で映画化され、モントリオール世界映画祭で深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞、今年2月には日本アカデミー賞で作品賞は逃したものの、主演・助演の演技部門4賞を独占。間違いなく近年の大ヒット作品だ。
事件は2001年の12月に起きる。福岡と佐賀の堺にある峠道で、福岡市内に住む保険外交員の石橋佳乃が、長崎市郊外在住の土木作業員の清水祐一に殺害される。このことは、読み始めて3ページ目で明らかにされる。物語は、この事件に至る数時間前から始まり、事件後の清水祐一と彼と行動を共にする女性、馬込光代の逃避行を中心に、関係する人々の人間模様を抉り出しながら進んでいく。
殺人犯の清水祐一は悪人なのか?他の誰かは悪人なのか?タイトルにはこういった問いかけの意味があるようだ。孤独な青年が他人を求めた果てに、その人の命を奪ってしまう。孤独な女性が他人を求めて逃避行を選ぶ。真面目に生きてきた人間に悲劇が降りかかる。その一方で恵まれた人間が他人の悲劇を笑う。
実は、私は今ひとつ乗りきれなかった。それは、主な登場人物の誰にも共感を感じられなかったからだと思う。登場人物への評価が作品の評価に直結するわけではない。しかしこの物語は、逃避行を続ける清水祐一と馬込光代の心理がキーファクターで、それが物語に深みを与えている。だから、その心理を撥ね付けてしまうと、深みがなくなってストーリーが上滑りしてしまう。残念だが、私はそうなってしまった。
最後に1つ。「ちくわ」の伏線は余計だったかも。
この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。
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吉田修一 『悪人』 人間の本当の値打ちとはなにかを問いかける。
もはや動かしようがない格差の拡大社会と歪められる家族関係を通して人間の本当の値打ちとはなにかを問いかける。
ついに読みましたね、「悪人」。そう、わたしも主人公2人に全く感情移入できませんでした・・・・。
出会い系?(;一_一)みたいな・・・・。
現実(仕事・恋愛・生活)から逃げる道を何故選ぶ?頑張れない人たち???っていうような・・・。
祐一を雇っている伯父や、だまされた相手に立ち向かうおばあちゃんが登場していることが救い、というか。
映画も観ましたが、日本アカデミー賞を総なめにするような作品ではなかったような・・・。
吉田修一なら「パレード」のほうがお勧めですよ!!
松田朋恵さん、コメントありがとうございました。
感情移入できなかった。松田さんもそうでしたか。
この本を評するのに「格差社会」や「孤独」という言葉を
使われている記事を見かけます。(ネットでも紙媒体でも)
私も、物語の中の設定がそうなのだろうと思って「孤独な青年」
という書き方をしました。
でも、彼ら(祐一と光代、佳乃も)には仕事があり、自分のことを
気遣ってくれる家族があり、同僚や友達までいるんですよね。
「格差」も「孤独」もあてはまらない。
だから彼らの造形が、彼らの行動にどうしても結びつかないんです。
「パレード」近いうちに読んでみますね。