デイルマーク王国史1 詩人たちの旅

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2004年9月24日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「ファンタジーの女王」と呼ばれた著者は、今年3月に亡くなった。もう新しい物語を世に送り出してくれることはないのだと思うと寂しいが、幸いにも沢山の作品を遺してくれた。私が未読のものも10作品ほどあるので、これから読み進めて行こうと思っている。

 本書は「デイルマーク」という架空の王国を舞台として、時代と主人公を換えて綴る「デイルマーク王国史」4部作の第1作。デビューから間もない1975年の作品。詩人(うたびと)と呼ばれる、楽器の演奏と歌のショーをして王国内を巡る家族の物語。

 主人公は、詩人の家族の末っ子の少年、11歳のモリル。有名な詩人の父と、母、兄、姉の5人で王国内を馬車で巡る暮らしをしている。詩人は王国内を自由に行き来できる通行手形を持っているので、手紙やニュースも運ぶ。そして時には乗客として人を馬車に乗せて運ぶこともある。
 物語は、王国の北部へ向かうキアランという少年を乗せたことから展開する。馬車で旅する暮らしのため、一家は仕事を分担して休む間もないのだけれど、キアランは手伝う気はないらしい。モリルや兄姉とも仲違いばかりしている。

 実はこの王国は南部と北部に分かれて争っている。シリーズ第1作の本書で、主人公一家を王国の南端に近い街から北部へと旅させることで、そのあたりの事情をうまく紹介している。南北で争っている中を、南部の街から北部へ向かうキアランは当然ワケありなのだ。
 ワケありなのは、キアランだけではない。モリルの父にも母にもそして兄にも、モリルが知らない一面がある。父が持つ弦楽器のクィダーにも秘密がある。王国史4部作の幕開けは、捻りの効いた個性的な登場人物に著者らしさが感じられるが、活躍する子どもたちに声援を送りたくなる、正統派ファンタジーだった。

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