著 者:武井一巳
出版社:実務教育出版
出版日:2012年5月5日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。
「いまや、スマートフォンを仕事に使いこなせない課長は、ビジネス現場の苛烈な競争にも生き残れない」これは本書の「はじめに」の冒頭の一文だ。なんとも大変な時代になったものだ。この本を読んで何とか世の中に追いつこうとする、課長さんたちが目に浮かんで気の毒に思えてきた。
「スマホでこのアプリを使えばこんなことができる(それでライバルに差をつけよう)」という項目が全部で100個。よくまぁこれだけ揃えたものだと思う。この本の執筆のために著者は、2500本以上のアプリを試してみたそうだ。
たとえば「できる課長はGmailアプリを使いこなす」とういう項目。会社のメールをGmailに送ってスマホで受け取れば、いつでもどこでもメールの送受信ができる。会社ではデスクの上のパソコン、出先や家ではスマホという使い分けも可能。24時間臨戦態勢、というわけだ。
本書の「スマホ術」を大きく分けると2つになる。一つは、地図や路線や天気予報をはじめとした「情報の入手」。もう一つは、GoogleやEvernoteなどのクラウドサービスを利用した「情報を保存・共有」。共通するキーワードは「いつでもどこでも」だ。
実は私は本書を、新幹線の自由席車両の通路に立って読んだ。結構ハデめの表紙が目を引くのか、チラチラとこちらを見る人がいる。そこでハタと気が付いた。私は「課長」ではないけれど、ちょうどそのぐらいの世代だ。痛々しく気の毒に見えたかもしれない。(その後、そっとカバーを外しました。)
この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ。
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クラウドサービスが隆盛を誇っています。本書でも、自分のメールもスケジュールもToDoリストも書類も写真も会議の録音ももらった名刺もと、思いつく限りの「情報」をクラウドに預けて利用しようとしています。
IT関係の展示会に行けばクラウドサービスだらけ。クラウド!クラウド!の大合唱にかき消されてしまいそうなので、できるだけ大きな声で言いたいです。「クラウドは危ない!」と。メリットばかりが強調される今の状況は、熱病のようで異常です。
私はIT関連の施設に勤めています。IT業界の数年前の注目の話題は「セキュリティ」でした。大手の会社で情報漏えいが相次ぎ、様々な組織のサーバーに何者かが侵入して、「ネットは危ない」「自分の情報は自分で守る」という認識が広まった...はずです。
あれからセキュリティ技術に、何か革新的な進展があったわけではありません。セキュリティ担当の技術者は、今も(まさに今この時も)外部からの攻撃に対する防衛の戦いをしています。「会社のメールも書類もクラウドに」なんて言って、機密情報を外部に送信する、なんて聞いたら卒倒するのではないでしょうか?
Yahoo!が情報漏えいを起こしたのにGoogleは起こさない、とは思えないんです。