日本でいちばん元気な商店街

書影

著 者:加瀬清志
出版社:ほおずき書籍
出版日:2012年6月9日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「岩村田商店街がこんなことになってるなんて知らなかった」。この本を読みながら、何度かそう思った。

 本書は、長野県佐久市にある岩村田本町商店街の「復活の道」の記録。「復活」と言っても、一度は滅んでしまたわけではもちろんない。ただ、全国には「シャッター通り」などと揶揄される、空き店舗や閉店中の店が多い商店街が多いが、この商店街もかつてはそんな状態だった。

 実はこの商店街は、私の家から車で約1時間の場所にある。この商店街の隣の通りに、子ども向けの科学館があって、さらに1kmぐらいのところに、大型の商業施設の集積もある。だから、私の子どもが小さい頃には、何度か行ったことがある。あれは10年ぐらい前だろうか?その時に通ったこの商店街は、シャッターが目立っていた。その時の記憶が、冒頭に書いた私の思いにつながっている。

 「復活の道」の記録は、16年前の「岩村田本町商店街振興組合」の設立に始まる。この組合は、商店街の若手経営者たちが、親世代の商店街の役員たちに退陣を迫って実現し、設立したものだ。文章で書けばこの1文、本書でも2ページしかないが、こんなことがそう簡単にできるわけがない。

 つまりは、若手経営者たちの危機感とヤル気がホンモノだったということだろう。この後は、イベント、コミュニティスペース、チャレンジショップと、敢えて言えば、商店街の「活性化計画」でよく見る事業が続く。しかし、だからこの商店街の事業も凡庸だと言うのではない。逆に「よく見る事業」がうまく行っている事実は、この商店街の非凡さを表している。危機感とヤル気がその事業に魂を入れているからだろう。

 「よく見る事業」でないものもある。それは、商店街直営のお店や食堂、さらに学習塾や託児所もある。私の知る限りでは、商店街直営と言えば駐車場やコミュニティスペースが定番で、お店を経営する例は珍しいと思う。ここには実は重要なポイントが潜んでいる。それは商店街を「経営する」という観点と、「商店街は誰のものか?」という命題への答えだ。

 岩村田本町商店街が、今後も成功事例であり続けるかどうかは分からない。近いうちに行ってみようと思うが、本書に書かれたことは多少装飾されているのかもしれない。それでも、商店街に関わる皆さんには一読をおススメする。そしてまずは危機感とヤル気を感じて欲しい。

(追記)こんなニュースがありました。枝野経産相が岩村田本町商店街を訪問するそうです。
経産省幹部が商店街活性化で全国行脚 まず長野市に枝野経産相

 ここからは書評ではなく、この本に関連したことを少し書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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 以前にもこのブログで何度か言っていますが、私は中小企業診断士の端くれです。診断士の多くは年に1度の研修を受けています。この本は、その研修で講師を務められた、私が尊敬する大先輩の診断士に薦められた本です。もちろんその先輩がこの商店街に深く関わっておられて、研修では詳しいお話を伺うことができました。

 その先輩と私は地元が同じです。車で1時間の商店街でなく、地元の商店街を何とかして欲しいと言おうとしたのですが、私以上に地元への想いが強い先輩が、同じことを思っていないはずがない、と思い直して、そう伝えるのを止めました。

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