ウィルキンズの歯と呪いの魔法

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:原島文世
出版社:早川書房
出版日:2006年3月31日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者は1970年に大人向けの小説を1作出版しているが、子ども向けの作品としては1973年出版の本書が記念すべき第1作。「訳者あとがき」で、訳者の原島文世さんも触れておられるけれど、その後に50作以上も続く「DWJの世界」の出発点であり原型とも言える。

 主人公はジェスとフランクの姉弟。恐らく2人とも小学生。2人は、椅子を壊した罰として4か月間おこづかいなしにされてしまった。それで、こづかい稼ぎに思いついたのが「仕返し有限会社」。誰かの代わりに仕返しすることを請け負って、料金をもらおうという会社だ。

 そんなことを依頼する客がいるのか?と思うが、これがけっこういたのだ。ただし、お客は全員子どもだ。ジェスたちと同じように金欠で料金が払えない客ばかりで、ちっとも稼ぎにはならない。しかも、最初の仕事で手に入れたウィルキンズ君の歯のために、大変なトラブルに巻き込まれてしまう。

 そのトラブルとは..。近所に風体も言動もちょっとおかしな、ビティという女が住んでいる。彼女は魔女だという噂があるのだけれど、どうもその噂は本当らしく、友だちが次々とその呪いにかかってしまったのだ。物語はこの後、ジェスとフランクらの子ども連合とビティとの対決の構図を深めていく。

 元気な子どもたち、特に女の子の活躍は、著者のその後の作品に受け継がれる特徴で、まさに「原型」と言える。ビティの悪者ぶりにも、ジェスらの報復も容赦ない感じで、著者らしい。ただ、持ち味の捻りの効いた展開と辛口のユーモアは、まだ少々といったところ。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です