デイルマーク王国史4 時の彼方の王冠

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:三辺律子
出版社:東京創元社
出版日:2005年3月25日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「詩人たちの旅」「聖なる島々へ」「呪文の織り手」に続く、デイルマーク王国史4部作の第4作、つまり本書にてシリーズは完結。

 第1作2作は、王が不在となって領主たちが南北に分かれて争う同じ時代の物語で、第3作はずっと時代を遡ってデイルマーク王国が誕生する前、言わば神話の時代の物語だった。そして本書は再び第1作2作の時代へと戻る。

 主人公はメイウェン。13歳の女の子。何と200年後の「現代」から、物語の時代へ送り込まれる。そこで「唯一の者」の娘で、王国を再統一すると言われている少女、ノレスの身代わりとして、正統を示す王冠を求める旅をすることになる。
 その旅に同行するのが、メイウェンを過去に送った張本人のウェンドと、第1作に登場する詩人のヘステファンとモリル、第2作に登場するネイヴィスとミット、の5人。さらに、第3作に登場したタナクィらが姿と名前を変えて現れる。

 メイウェンを除く登場人物にはそれぞれ、これまでの物語に加えて、その後の経緯によって背負うことになった背景と思惑がある。その思惑の違いが旅の雰囲気に微妙な緊張感を生む。さらに、第3作の登場人物たちの「不死なる者」としての意思が絡んでくる。
 また、メイウェンが知る歴史では、この後はアミルという大王が登場して国を興すことになっている。その王はどこで登場するのか?そしてノレスという名は歴史に残っていないけれど、彼女は(つまりメイウェンは)どうなってしまったのか?目が離せない。

 読み終わって、これまでの3作は本書のためにあったと分かる。逆に、本書によってこれまでの3作が生きる。「現代」「物語の時代」「神話の時代」、これまでに描いてきた物語の、悠久の時間の流れを1か所に注ぎ込んだ、正に掉尾を飾る作品だった。

 シリーズ名の「デイルマーク王国史」の英語の原題は、Dalemark Quartet(デイルマーク四重奏)。つまり、この4作品は互いに響きあう関係になっている。前3作と本書には、実に細かい繋がりがいくつもある。それなしでも充分に面白いのだけれど、もしその繋がりを楽しみたければ、間をおかずに4作を読んだ方がいいと思う。

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