著 者:ティム・ブラウン 訳:千葉敏生
出版社:早川書房
出版日:2014年5月15日 発行
評 価:☆☆☆(説明)
訳者あとがきによると、IDEOのトップによる著書としては、「発想する会社!」「イノベーションの達人!」に続く3冊目の邦訳書。IDEOは世界的に有名なデザイン会社。著者はティム・ブラウンは、その現CEO。
本書のテーマは「デザイン思考」で2部構成になっている。パート1は「デザイン思考とは何か?」。デザイン思考によって成されたプロジェクトの具体例をあげながら、そのWhat?とHow?を解説する。パート2は「これからどこへ向かうのか?」。デザイン思考のさらに広いフィールドでの応用を展望する。
デザイン思考とは?への答えは、訳者もあげているように、第1章の冒頭の日本の自転車メーカーのシマノの例で考えると分かりやすい。「一般的なデザイン」は、自転車の外観や機能をどうするか?を考えることだろう。
しかしシマノと共にIDEOが行ったのは「どうすれば楽しく自転車に乗れるだろうか?」という問いからスタートして、自転車の購入から乗り心地、メンテナンスに至る「自転車の体験」をデザインすることだった。このように「モノ」のデザインから飛び出して、製品開発の上流や問題解決にデザイナーの思考を取り入れることを「デザイン思考」と呼んでいる。
それで本書にはその理念と共に、「ブレーンストーミング」「観察」「プロトタイプ製作」といった、デザイン思考の「方法論」が惜しげもなく記されている。読んで明日から使える、というようなお手軽なものではないけれど、だからこそ身に着けたいと思うスキルだと思う。また、冒頭に本書の内容をまとめたマインドマップがある。本書を読み終わってもう一度見直すと、理解の助けになると思う。
心に残る言葉も数多くあった。ただそれらではなく、笑ってしまった言葉を一つ紹介する。
「次なるiPodを作ってくれ」と言い放つクライアントは数知れないが、デザイナーたちが「それなら次なるスティーブ・ジョブズを用意してくれ」と(小声で)つぶやくのも同じくらい耳にしている。
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