著 者:堺雅人
出版社:文藝春秋
出版日:2013年7月10日 第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
「やられたらやり返す、倍返しだ!!」の半沢直樹を演じた堺雅人さんの初エッセイ。もっとも初出は2005年から2009年にかけて月刊誌に掲載されたもの。ありがたいことに巻末に出演作品リストが付いていて、それによると時期的には、大まかに言えば「新選組!」の後から「篤姫」の後まで。
「まえがき」と「あとがき」を含めて54編のエッセイ。1編は4~5ページ。著者によると原稿用紙4枚だそうだ。書かれている内容は、テレビドラマや映画、舞台で「演じる」ときに著者が考えたこと。
例えば「篤姫」で将軍家定を演じているときのこと。「いきいきと、でも、品はよく」と言われて「品とはなにか」を考えていたそうだ。3編連続でその話題だから、たぶん3か月は考え続けていたのだろう。
とても魅力的な文章を書く人だ。「天璋院篤姫」の作者の宮尾登美子さんが「役者なんかやめて、作家になりなさいい」と言ったそうだけれど、その気持ちが分かる。
とても僭越なんだけれどその理由を考えてみた。その1はボキャブラリーが豊富なことだと思う。読書家としても知られているから、引出しに入っている言葉が多いのは間違いない。
ただ「あとがき」を読んで、それだけではなかったんだな、と思った。著者は、1編を書くのに2週間、長ければ3週間近くかかるそうだ。上の「品」のエピソードでも分かるように、真面目な方だから、「最適な一語」を見つけるのに時間をかけていたのだろうと思う。
その2。54編全部が「自分のこと」を書いていること。月に1回の連載を長く続ければネタにも困るはず。職業柄おもしろい人との出会いやエピソードには事欠かない。「こんなことがありました」とやる方が容易だろう。
ところが著者は、「今こういうことをやっています(考えています)」と書き始める。ちらちらとちょっと頑なで繊細な内面が垣間見える。俳優が書いたエッセイなのだから、著者のことを知りたい、と思ってこの本を手に取る人が多いだろうから、これは魅力的だ。
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