著 者:松竹伸幸
出版社:平凡社
出版日:2013年9月13日 初版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
今年最初の読書は「集団的自衛権」について。集団的自衛権には、昨年7月にその行使を認める閣議決定が行われ、この1月に召集される通常国会で関連法案が提出される見込み。私にはできることがほぼ皆無なのだけれど、今一度勉強しようと思った。
本書の構成はおおむね3つに分かれる。1つめは、安倍政権がなぜ集団的自衛権行使容認を急ぐのか。2つめは、冷戦期とそれ以後に集団的自衛権はどのように国際社会で扱われてきたか。3つめは、日本として集団的自衛権の行使はいかにあるべきか。
この本で、私たちが知っておくべきことは、「国際社会での集団的自衛権の扱い」だと思う。なぜなら「国際社会での集団的自衛権の扱い」は、私たちが理解している「不当に攻撃を受けている国を助ける」という集団的自衛権のあり方と全く違うからだ。
これまでに「集団的自衛権の行使」と主張された例は、ソ連のハンガリー介入(1956年)、アメリカのベトナム戦争(1966年)、ソ連のチェコスロバキア侵略(1968年)、ソ連のアフガニスタン侵略(1980年)、アメリカのグレナダ介入(1983年)など。
詳細は本書や他の情報に当たってもらいたい。ただ言えることは、ソ連やアメリカがどこかの国を「助ける」ために軍隊を派遣したのではない、ということだ。ソ連のアフガニスタン侵略のように「支援の要請があった」国の政府自身を打倒してしまう例が多い。要は、超大国が、侵略や傀儡政権の樹立のための戦争の口実に使っているということなのだ。
もちろん、こうした集団的自衛権の「誤った使い方」に対しては、その都度、国際社会から批判が巻き起こっている。つまり「これは誤っている」という認識は、国際社会で共有されている。それでも「誤った使い方」はなくならない。というより「正しい使い方」をしたことは一度もないらしい。
こんなことに、日本は乗ってしまってもいいのか?
最後に。本書は2013年9月に発行された本で、例の閣議決定より10か月前になる。そのため、現在の政府方針を基にすると、少し指摘が的を射ない部分がある。それでも上に述べた「集団的自衛権の行使」の例を知るだけでも読む価値はあると思う。
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