著 者:高野文子
出版社:中央公論新社
出版日:2014年9月25日 初版発行 10月30日 5版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
昨年の秋ぐらいから、全然違う方面の知り合いが何人か「これ面白いよ」と勧めてきた。その間に新聞や雑誌の書評欄で次々に取り上げられ、「本の雑誌」の2014年度ベスト10の特集に載り...と、ちょっとした「話題の本」になっている。
著者の高野文子さんは漫画家で、本書も基本的にマンガ。装飾の少ない乾いた感じの絵がとても心地いい。
主人公はとも子さん。娘のきん子ちゃんと2人で学生寮を営んでいる。とも子さんの「とも」と、きん子ちゃんの「きん」、それで「ドミトリーともきんす」。説明の必要はなかったかもしれないけれど。
住んでいる学生さんがスゴイ。朝永振一郎くん、牧野富太郎くん、中谷宇吉郎くん、そして湯川秀樹くん。これも、説明の必要はないかもしれないけれど、昭和の前半に活躍した科学者たち、それも錚々たる顔ぶれだ。とも子さん親子と彼らの語らいが、4ページ半ほどの短いマンガとして、10編あまり収められている。
そもそもはとも子さんの空想から始まっている。うんと昔の科学者の皆さん。偉くなってからだと、会っても緊張してしまって何も言えないと思うけれど、まだ若者でご近所に住んでいたらどうだろう?という設定。
マンガの中ではまだ学生さんの科学者の皆さんが、その研究について熱っぽく語ってくれる。そして分かりやすく。そうきん子ちゃんにも分かるように。私にも分かるように。
面白かった。そして驚いたことがある。科学者の皆さんは、その学術書だけでなく、一般向けの科学書も書いている、それだけでなく、随筆や日記なども出版されているのだ。あまりに功績の大きい皆さんだから、その功績に目が行ってしまうのは仕方ないけれど、人間的にもとても魅力的だったことが分かる。
本書は、科学者の皆さんが記したブックガイドにもなっている。気になった本を読んでみようと思う。
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