著 者:森沢明夫
出版社:幻冬舎
出版日:2013年11月15日 初版 2014年9月25日 13版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
本書は、2012年にラジオドラマ化、2014年には「ふしぎな岬の物語」というタイトルで、本書を原作とした映画が、吉永小百合さん主演で公開されている。友達から借りて読んだ。
岬の先端にある小さな喫茶店が舞台。その喫茶店は、半島にある国道のトンネルの出口の、ガードレールの切れ目の小道を行ったところにある。海を挟んで向かい側にも半島があって、その向こうに富士山が見える。(千葉県に実在する喫茶店がモチーフだそうだ)
舞台をこんなに詳しく書いたのにはわけがある。ここから見た景色が、物語の重要なキーになっているからだ。繰り返し描写されるこの景色を、読者は思い浮かべながら読み進めることになる。(「実在する喫茶店がモチーフ」なんて知ったら、行って見たくなるだろう)
全部で6章あって、それぞれで主人公が変わる。第1章は妻を亡くしたばかりの男、克彦と4歳の娘の物語。「虹さがしの冒険」に出かけて、この喫茶店に、そして店の壁にかけられた虹の絵にたどり着く。この絵と喫茶店の主の悦子に出会い、克彦の人生が少しだけ変わる。
その後の各章も、この喫茶店に来た人々が主人公となる。それぞれにちょっとした問題や重荷を抱えている。そして、ここでの出来事によって、人生が少しだけ変わる。抱えた問題や重荷が解決するわけではない。けれども、大事な変化が起きている。
章が進むごとに、この喫茶店と悦子のことも明らかになってくる。こんな辺鄙な岬の先端の喫茶店に、どうして悦子はいるのか?そこにはある願いがあるのだけれど、その願いは遂げられるのか?何人もの人生が交錯する物語を横軸に、悦子の願いを縦軸に、美しい海の景色を背景に、心温まる秀作。
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