著 者:須田桃子
出版社:文藝春秋
出版日:2014年12月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
いわゆる「STAP細胞」騒動を、新聞記者の目で追ったレポート。ある人から「小保方さんの「あの日」を読んだなら、合わせて読むといいよ」と言われて、手に取った。
よく整理された優れたレポートだと思う。本書に記録された期間は、2014年1月の華やかな記者会見から、理化学研究所による検証実験の最中の11月まで。その間の新聞報道の通りで、小保方さんによる捏造を強く示唆する内容となっている。
本書のもっとも注目すべき点は、渦中の人々の肉声を伝えていることだ。笹井氏や若山氏といった、論文の共著者や理研の幹部らに、メールや面談で取材をしている。特に笹井氏とのメールの往復は、当事者の心の内を知ることができて、貴重だと思う。
読んでいて一つ気付きがあった。「STAP細胞」についての私の関心は「(本当のところ)STAP細胞はあるのか?」だった。しかし著者をはじめ多くの人(特に科学者コミュニティの)が、そうではなかったことだ。そしてその考えに理があることにも気が付いた。
つまり、彼らの関心は「論文不正の真相究明」にあって、「STAP細胞の存在の真偽」は副次的なものだったらしい。著者は「検証実験」に熱心な理化学研究所の態度を強く批判している。研究者らに対しては「科学者の倫理より組織の論理を優先させた」と手厳しい。
私も今は、再発防止の観点からも「真相究明」が大事であり、STAP細胞を再現できたとしても、それでOKとはいかない、ということは分かった。ただそれでも「論文が不正」「証明が不十分」をもってして「STAP細胞(現象)は捏造」という結論が、胸に落ちない。
「STAP細胞(現象)はあるのでは?」と思う理由の一つは、亡くなった笹井氏の言葉。「自分の目が確信したものを「ない」ということは、たとえ、自分の実験でなくても、研究者である限り、できません」。笹井氏が見たものは真実(STAP細胞)ではないのか?そういう想いが未だに残る。
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