著 者:川上和久
出版社:講談社
出版日:2016年6月8日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
著者は政治心理学者。政治心理学という学問にあまりなじみがないのだけれど、人々の政治的行動(選挙、世論操作、大衆運動など)について研究する社会心理学の一分野、だそうだ。ちなみに公益財団法人の「明るい選挙推進協会」の評議員も務めておられる。
タイトルを見れは説明の必要はないかと思うが、本書は公職選挙法の改正によって、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことを受けたもの。国政選挙ではこの7月の参院選から適用され、18歳と19歳の若者が選挙権を得る。
その「新有権者」に向けて書かれた部分もあるが、本書の目的はそれより広く、これを契機に選挙について改めて考えることにある。これまでだって、20歳になれば自動的に選挙のことが分かるはずもない。多くの人は選挙について深く学んだり、考えたりしたことがない。今一度おさらいをしてみよう、ということなのだ。
章立ては「政治に潜む3つの落とし穴」「「18歳」とはなにか」「「民主主義」とはなにか」「「主権者教育」とはなにか」「「7つの課題」とはなにか」」「「18歳選挙権」投票ガイド」の6章。
全体として「選挙権」や「民主主義」に関する、歴史や意義といった内容が多く、「今度の選挙でどうすればいいの?」という、お手軽なガイドブックではない。コンパクトにまとまった教科書、といった印象だ。
「政治に潜む3つの落とし穴」が第1章にあるのは、「ここだけでも」という大事なことだからかもしれない。3つの落とし穴とは「無関心と無気力」「センセーショナリズム」「情報操作」。最初の「無関心と無気力」も含めて、これらの3つを「権力者が意図して行う」場合がある、という指摘は心に留めて置いた方がいいだろう。
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