著 者:誉田哲也
出版社:文藝春秋
出版日:2009年7月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」に続く、「武士道」シリーズの3作目。神奈川と福岡、別々の高校でそれぞれに剣道に打ち込む、磯山香織と甲本早苗の高校3年生の頃を描く。
剣道の名門校に所属する二人は、共にインターハイを目指す。それは、勝ち続ければそこに到達するのだから、誰もが目指すことなのだけれど、二人には別の目的がある。もう一度二人で勝負することだ。
香織の学校は団体戦でのインターハイ出場が危ぶまれ、早苗の学校は強豪校で、こちらは代表に選ばれるかどうかが問題。簡単にはいかないけれど、結論から言えばその目的は達成される。二人が望んだ形であったかどうかは別だけれど。
「こう来たのか」と中盤過ぎを読んでいて思った。「これはやられた。(剣道に絡めて敢えて「一本とられた」とは言わない)」と読み終わって思った。これまでの2作も良かった。本作はそれを基礎にしてさらに高く奥行きのある、物語の構造が構築されている。
実は、上に書いた香織と早苗の物語は、しっかりと描き込まれてはいるけれど、本書の中の割合としてはごく一部に過ぎない。本書ではこれまでとは違って、様々な登場人物の時代も様々な物語を、本編とも言える香織と早苗の物語に散りばめてある。それぞれに深みのある物語で、質量ともに本編を凌駕している。
私は、前作のレビューで「二人以外の登場人物にも粒ぞろいになり、先が楽しみになった」と書いた。まさにその粒ぞろいの登場人物たちが、悩んだり苦しんだりを含めて、自分たちの人生を活き活きと生きている。そしてそれがこのシリーズの物語世界と、完全に融合している。なるほど、人気シリーズになるわけだ。
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