著 者:土井善晴
出版社:グラフィック社
出版日:2016年10月25日 初版第1刷 2017年2月25日 第9刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
著者の土井善晴さんは料理研究家。テレビ朝日「おかずのクッキング」や、NHK「きょうの料理」で料理の先生をしてらっしゃる。恥ずかしながら私は知らなかった。料理学校を開かれたお父さまの土井勝さんの名前はよく知っていたけれど。
本書は著者が少し前から唱えている「一汁一菜」という料理のあり方の提案を論じたものだ。「一汁一菜でよい~」と「~でよい」が入っているのは「一汁三菜」に代表される、「きちんとした食事はおかずが何品以上」という固定観念へのアンチテーゼだからだ。
必要ない人も多いと思うが「一汁○菜」について一応説明。食事の献立の話で、「汁」は汁物「菜」はおかずを表す。「一汁三菜」なら、「ご飯」と「みそ汁などの汁物」と「おかずが三品」。ということになる。著者が提案する「一汁一菜」ならおかずは一品だ。
さらに言うと「一菜」は漬物でいいと著者は言う。さらにさらに言うと「具だくさんのみそ汁」は「一菜」を兼ねてもいい。その「具だくさんのみそ汁」には、何でも入れていい。ピーマンやトマトを入れてもいい。ベーコンやハム、鶏の唐揚げでもいい。(2017.4.1追記 著者のtwitterには「目玉焼き」を入れたみそ汁の写真がアップされている)
とても共感した。著者のこの提案の根っこには、家庭で料理を作る人への暖かい眼差しがある。毎日の献立を考えるのが大変、仕事をしていると食事の支度が負担になる、簡単に済ませれば済ませたで後ろめたい。そういう人たちに「ご飯と具だくさんのみそ汁でいいんですよ」と言っているのだ。具体的なレシピもある。
実際に夕食を「ご飯と具だくさんのみそ汁」にしてみると、確かに気が楽になった。もう一品か二品を簡単なものを作ってしまうぐらい、気持ちに余裕ができた。結果として「一汁三菜」になったけれど、気楽さはそのままだ。「何でも入れていい」は半信半疑だったけれど、実際にトマトやピーマンを入れたみそ汁を作ってみたが、これが美味しかった。
最後に。本書は「一汁一菜の提案」から話を掘り下げかつ広げて、和食や日本の文化についても論じられている。散見される「日本人だけが..」という部分には違和感も感じたけれど、総じて興味深い考察だと思う。そういうところも楽しめる。
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