著 者:山極壽一、小菅正夫
出版社:中央公論新社
出版日:2017年2月10日 発行
評 価:☆☆☆(説明)
京都大学第26代総長で、ゴリラ研究の第一人者の山極壽一先生と、旭山動物園で行動展示を取り入れて一躍有名にした、前園長の小菅正夫さんとの対談本。人間より他の動物たちの方により愛着があるんじゃないか、と思われるお二人。以前に一緒にコンゴにゴリラを見に行ったことがある。そのあたりのことから掘り起こして、ゴリラについて語り合う。
ゴリラはシルバーバックと呼ばれる、大人のオスをリーダーにした群れで暮らす。そのリーダーは群れのメンバーに信頼されてなる。何かあれば前面に立つ。でも相手を威嚇することはあるけれど、若いオスを除いて喧嘩はしないらしい。タイトルの通り「ゴリラは戦わない」のだそうだ。
それに対してニホンザルのボスは力で群れを従える。もし群れを離れて他の集団に行くと最下位のオスになってしまうらしい。力を示さないとボスとして認められない。「あえて勝とうとしない、でも負けない」ゴリラ社会と、「勝ち続けていないと自分の地位が脅かされる」ニホンザル社会の違いがある。
話題としては面白い話で、その他のたくさんの「ゴリラ」ネタもあってそれだけでも興味深い本だ。しかし、それだけではない。「ヒトと近い類人猿であるゴリラの社会を知ることによって、人間のことをよく知る」ということもできる。以前に読んだ山極先生の「京大式 おもろい勉強法」にもそんなことが書いてあった。
さて、ゴリラとニホンザルの比較によって見えた人間のこととは?人間の社会がニホンザルに近づいているのでは?ということかも。つまり「勝ち続けていないと自分の地位が脅かされる」...。
もうひとつ。ゴリラと、ニホンザルやチンバンジーとの違い。相手の出方を待つこと。相対した時の間の取り方が長い。相手がどうするかを予測して、もの凄く考えているらしい。すぐに手をださない。
山極先生はこんなことも言っている。「だから、ゴリラにとって、人間はアホなんですよ。ちょっとチンパンジーに似ていてね」
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