村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!

書影

著 者:大森望、豊﨑由美
出版社:河出書房新社
出版日:2017年4月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「はじめに」で、大森望さんが「「騎士団長殺し」メッタ斬り!というタイトルの本を出す誘惑には抵抗できなかった」と書いていらっしゃるけれど、私はこのタイトルを書店で見て、読んでみたいという誘惑に抗えなかった。なんと不埒な便乗商品か。でも「私の想いに近い」という確信めいたものも感じた。

 著者のお二人は共に「書評家」。私はお二人の書評をあまり読んだことがないのだけれど、「辛口の書評」という印象がある。それはたぶん「文学賞メッタ斬り!」という作品のことを知っているからだと思う。本書も、唐突に「メッタ斬り!」なんていう企画が湧いて出たわけではなくて、これまでの「メッタ斬り!」の系譜の中にある。

 内容は、表題の「「騎士団長殺し」メッタ斬り!」のほか、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」「1Q84 Book1、2」「1Q84 Book3 女のいない男たち」のそれぞれの「メッタ斬り!」の4部構成で、全編が著者お二人の対談形式。

 すごく面白かった。何かの役に立ちそうとか、気付きがあったとか、そういうことはない。ただ「私の想いに近い」という最初の直観は正しかった。だから読んでいて楽しかった。

 本書は村上作品の欠点を指摘する本だ。ここで大事なのは「しっかり読み込んだ上で」欠点を指摘する、という点だ。豊﨑さんが行った時系列の整理は見事なものだし、俎上にあげる細かいエピソードは、その作品だけでなく、他の村上作品、さらには他の作家の作品との関わりにまで及んで分析されている。自称「ハルキスト」のどのくらいの割合の人が、これに太刀打ちできるだろう?

 最後に。「私の想いに近い」と感じた理由の一つに、著者と私の近さがある。お二人は同い年で私の2歳上という年齢の近さ。そのために人生のほぼ同じタイミングで同じ村上作品に出会っている。大学生の時に「風の歌を聴け」でハマったのも同じ。新作が発表されるのが楽しみなのも、がっかりすることがあっても「次を期待しよう」っていつも思えるのも同じ。もちろん生きてきた時代も同じだ。それで大森さんの次の言葉に深い共感を覚えた。

 僕は「ドラゴンクエストⅦ」を思い出しましたね(笑)。「ドラクエの新作は、やっぱり発売日に買って、ヨーイドンではじめないとね」って毎回楽しみにして、ずっとやってたんだけど、2000年に出た「Ⅶ」のときに初めて思ったんですよ、「あれ?・・・このゲーム何が面白いんだろう?」って

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