著 者:宮下奈都
出版社:幻冬舎
出版日:2017年4月15日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)
2016年の本屋大賞を「羊と鋼の森」で受賞した、宮下奈都さんの2014年の作品。元は、若い女性を対象とした季刊の文芸誌「GINGER L.」に連載されたものらしい。
主人公は二人のハル。柏木温之(はるゆき)と、大野遥名(はるな)。温之は勉強ができなかった。何かに集中すると他のことは見えない聞こえない、その場から一歩も動かない。遥名は優等生だった。でも、学校生活を無難に過ごすために、甘ったるいばかっぽいしゃべり方をしている。本書は二人がそれぞれ小学一年生と中学一年生の春から始まる30年を、数年ごとに描く。
集団からはみ出さないように苦心する遥名と、「はみ出さないように」という考えを持ち合わせない温之。正反対のようでいて、二人とも「不器用」という点で共通する(遥名は器用過ぎて一周回って不器用だ)。そのためか、二人にはお互いには見える「しるし」があるらしい。その「しるし」がいつか二人を結びつける。
不幸なことも起きるし心が痛む場面もあるけれど、全体として心温まる優しい物語だった。それは、二人の周囲にいつも誰か理解してくれる人がいたからだ。物語の最初から最後まで登場する友達も、ほんの少しだけの関わりの人もいる。「人は他人との関わりの中で生きている」と改めて思った。
少し気になったこともある。二人の出会いの場面が不自然に感じることだ。二人は出会うべくして出会った、互いには見える「しるし」がある。さらにはその時には「特別」な事情もある。そういう説明はできるのだけれど、やっぱり「そんなんでいいの?」と。ただ、この物語の元々の想定読者である「若い女性」には、案外すんなり受け入れられるのかもしれない。
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