世界の中で自分の役割を見つけること

書影

著 者:小松美羽
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2018年3月7日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者は「新進気鋭の現代アーティスト」と帯で紹介されている。現在33歳。作品の出雲大社への奉納、大英博物館での永久展示、ニューヨークのワールドトレードセンターでの常設展示と、ここ数年は大きな話題が続く。一般的な知名度がどのくらいなのかは分からないけれど、私のような素人も含めて、現代アートに興味がある人なら、知らない人はまずいないと思う。

 本書は、アーティストとして高みを駆け上っている最中の小松美羽さんが、自分の半生と自分に与えられた「役割」について記したもの。「絵筆をペンに持ち替えて」と表現したいところだけれど、美羽さんの制作風景をご存じの方は「絵筆」ではなく、手や絵の具のチューブから直接キャンバスに描く姿の方が思い浮かぶことだろう。

 小松美羽さんの「役割」について。美羽さんは作品の殆どすべてに「神獣」や「守護獣」を描く。それは見えない世界の生き物。美羽さんは子どもの頃からその世界の生き物を身近に感じてきた。道に迷ったら必ず「山犬さま」が現れて、見慣れた道まで連れて行ってくれたそうだ。美羽さんの「役割」は、その「「神獣」や「守護獣」らの「依り代」としての作品を作ること。

 「見えない世界」とか「神獣」とか、すんなりとは受け入れられない人もいるはず。むしろその方が多いかもしれない。でも、小松美羽さんの作品を眼前にしたことがある人ならどうだろう?作品を制作する場面を見た人は?(美羽さんは度々ライブペイントを行っている) きっと私のように、「頭」が拒んでも「心」が早々に受け入れてしまうのではないだろうか?

 「絵筆をペンに持ち替えて」、それがうまく行くとは限らない。上に書いたように、その作品を見たことがあるかないかで、受け取りが違うのなら、アーティストは作品こそが一番のメッセージ、という証左でもある。でもこの飾りのない媚もない真っすぐな文章には、作品を描く時に向ける、澄み切った眼差しと同じものを感じた。心に響いた。

 最後に「はじめに」から引用。

 この本は、私の「これまで」を振り返るための本ではない。あなたの「これから」を、私の「これまで」を通じて見つけていただくための本であり、あなたと見つめ合えたらと、祈り願って書いた本だ。

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