著 者:梨木香歩
出版社:理論社
出版日:2006年12月 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
梨木香歩さんの挿絵の多い中編、または文章の多い絵本。
表紙は雪深い庭の風景、本扉の裏の見開きには針葉樹の山の麓の街、その裏のページはカーテンを閉めた部屋が描かれている。部屋の時計は12時10分過ぎ。カーテンのすき間から光が漏れているから昼間だろう。そう、お昼なのにカーテンは閉められている。
文字による描写の前に、絵によって物語が始まっている。閉ざされた空間、あまり健康とは言えない主人公。そんな予感。
予感は的中で、主人公は寝起きで、カーテンのすき間から漏れる光が「心に刺さる」という。そしてこの家に来ての数日、ほとんど外に出ていない。寝室ではなくソファベッドで寝起きしている。日本酒、ウォッカ、コニャック、ポートワイン...部屋には酒瓶が転がっている。
そんな調子だからか、缶詰のサーディンが泳ぎだしたりして、夢とも現とも分からない(いや、どう考えても夢か)物語へと続く。そこに少女がやってきて、一緒に逃げたミンクを探すことに。他人との関りが、主人公を現実につなぎ留めるかと思ったら...。
静かにイマジネーションが喚起されるような物語。自由奔放なイメージが展開する中で、現在と過去も行き来しているようだ。実は本書は著者の名作「からくりからくさ」に連なるお話。主人公の名前はミケル。私は読んでいないのだけれど文庫版(私が読んだのは単行本)の「からくりからくさ」に、「ミケルの庭」という物語が収録されている。本書と併せて読みたい。
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)