マーケットでまちを変える

書影

著 者:鈴木美央 
出版社:学芸出版社
出版日:2018年6月10日 初版第1刷 7月20日 初版第2刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本書で取り扱う「マーケット」として、著者が4つの条件を明記している。(1)屋外空間で売買が行われていること (2)入場に制限がないこと (3)仮説であること (4)伝統的な祭り・フリーマーケットを除く。

 つまり、普段は道や公園などである場所に、ある期間だけ仮設テントなどのお店が集まってお客さまを迎える。例えば...と考えて私は「輪島の朝市」しか浮かばない。他に適当な例が浮かばないのは、私の知識が貧困なだけでなく、日本では都市の近代化の過程で、各地にあったマーケットが途絶えてしまったからだ。

 著者は、英国の設計事務所で大規模建築の建設などを担当したのち帰国、現在は、建築設計、行政のアドバイザー、マーケットの企画・運営などを行う。「マーケット」に着目したのは、英国での経験がきっかけ。本書で詳述しているけれど、ロンドンには都市部で区が運営するマーケットが45カ所もある。ロンドンに暮らす人々にとって、それはイベントではなく日常なのだそうだ。

 そしてマーケットは、「そこに住む人々の生活の質を高め」「地域経済を活性化し」「まちの魅力を増す」ことにつながるとし、日本でも取り入れよう、そうすれば「日本中のまちをマーケットから変えていくことができるのではないだろうか」と著者は主張する。

 本書で著者はまず、ロンドンと東京の100例を調査し、ロンドンで6カ所、東京で5カ所のマーケットを取材、キーマン6人にインタビューする。そして、マーケットが生み出す15個の効果を明らかにする。さらには、自らもマーケットの企画運営を実践した経験を元に「あなたもできるDIYマーケット」と、マーケットの企画・運営の指南まで記している。

 並大抵の気構えではこんなことはできない。著者は本気なのだ。本気で(タイトルの)「マーケットでまちを変える」つもりなのだ。なんかワクワクしてきた。

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