著 者:渡邉賢太郎
出版社:いろは出版
出版日:2015年2月14日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「お金」に想いを巡らして「お金」についての考え方が少し変わる本。
著者は元証券マン。リーマン・ショックを機について学ぶために世界を旅したという。2年で40カ国。本書にはそのうち17カ国でのエピソードが記されている。旅をした結果一つの気づきを得た。「日本人が、世界一、「お金とは何か?」を知らない」。タイトルの「なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?」の答えもそれだ。
本書には日本と対照的な事例が最初に2つある。
一つ目はイギリス。イングランド中央銀行の博物館に、小学生ぐらいの子どもがわんさかいる。入ってすぐに、なぜが気球を操縦するゲーム。上昇させて気を抜くと行き過ぎる、慌てて下降させると墜落しそうになる。これは「インフレーションとは何か?」を体験するゲーム。小学生が「インフレーション」を学び、物価コントロールの難しさを体験する国、イギリス。
二つ目はインド。電気湯沸かし器を買いに電器店を探してまわった時のこと。商品には一切値段が書いていない。値段を聞いたら中国製が30ルピー、インド製が50ルピー。「他を見てくるよ」とかやっているうちに、インド製が10ルピーになった。日常的に値段交渉が必要で、モノの価値を自分の目で見極める国、インド。
とても興味深い本だった。私も、日本人の「お金」への思いは捩れていると思う。お金がないと生きてゆけないと思っているけれど、お金への執着をひどく嫌悪する。「お金」は大切、でも「お金」は汚い。「汚い」ものからできるだけ遠ざけて子どもを育てる。大人になるまで(大人になっても)お金について学ぶ機会がない。
ではお金について学ぶとお金持ちになれるのか?というと、その辺りは明確でない。ただ「お金を「目的」と捉えるのか「道具」として捉えるのか」とか、「お金は「信頼の媒介物」」とか、著者が何度も繰り返す「お金」の言い換えは、とても示唆に富んでいて考える端緒を与えてくれる。終盤にでてくる「つながりキャピタリズム」にも、思い当たることが多くあった。
最後に。「お金なんかなくても幸せになれる」という意見がある。それはそうだ。でもこれは「お金について考える」という意味では思考停止だ。本書も途中で「最貧国の幸せな人々」が出てきて、この陥穽に陥るのかに見えたけれど、そうならなかった。こういうところもよかった。
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