となりの難民

書影

著 者:織田朝日
出版社:旬報社
出版日:2019年11月8日 初版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 この国はマズいんじゃないかと、本格的に思った本。

 著者は、日本で暮らしている外国人を支援する活動として、外国人収容施設での面会活動などをしている。外国人収容施設とは、出入国在留管理庁(以前の入国管理局)が管理をしている施設で、全国に17カ所ある。そこには在留資格のない外国人「非正規滞在者」が収容されている。

 本書は、著者が支援活動を通して知った、外国人収容施設のヒドイありさまが記されている。そこに実際に行って収容されている外国人と面会して知った「実体験」だけに迫真の報告だ。そしてそればあまりにも痛々しく、そんなことを行う施設と国家に(それは私の国、日本だ)、私は強い怒りを感じる。

 そこでは何が行われているか?収容時にはスマホや病気の薬などの持ち込みが禁止される。持病があっても薬を飲むこともできない。家族や友人への連絡は、KDDIの高いテレホンカードを買って公衆電話からしかできない。外から連絡を取ることはできない。

 刑務所のようだ、と言いたいところだけれど刑務所よりヒドイことがある。刑務所は、裁判を受けて刑期が決まって入る。外国人収容施設は突然に収容が決まる。弁護士も付かず自身を守る方法もなく、身一つで収容される。裁判に相当する手続きもなく、収容期限は決まっていない。いつ出られるのか分からない不安は心身を蝕む。

 とりわけ人道上の問題があって許せないと思うのは医療の問題だ。持病の薬が持ち込めないだけでなく、外国人収容施設では必要な医療が受けられない。著者らの調べでは1997年から2019年の約20年に起きた、入管での死亡事故・事件は18件。うち5件は「医療放置」。「死ぬまで放っといた」ということ。ちなに自殺は6件、餓死が1件...

 「在留資格がないのに在留しているのは法律違反だ」だから当然だ、という声が、ネットを中心にある。しかし、たとえ法律違反でもこれはひどい。それに、望まずにその状態にされてしまった人もいる。母国を追われて日本を頼って来た人が、難民申請をしてもなかなか認められない。認められなければ在留資格もない。その間も場合によっては容赦なく収容される。こんな理不尽なことってある?

 読んだら気持ちが沈むと思うけれど、知っておいた方がいい。私の国の一部分は、紛れもなく「最低」だ。

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