著 者:横山秀夫
出版社:新潮社
出版日:2019年2月28日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
一家失踪のミステリーが人間ドラマに展開する本。
本屋大賞ノミネート作品
主人公は青瀬稔。一級建築士。45歳。大学の同期が経営する設計事務所で働いている。8年前に離婚した元妻のゆかりとの間に、中学生の娘の日向子が居て、父娘の面会が月に1回ある。バブル崩壊のあと所属していた事務所をクビを宣告される前に辞め、不遇をかこっていたが、友人の岡嶋の事務所に拾われた。
青瀬には代表作と言える家がある。信濃追分に建つ浅間山を望む「北向きの家」。「Y邸」と呼ばれるその家は、大手出版が日本全国の個性的な家を厳選した「平成すまい二〇〇選」に選ばれた。タイトルの「ノースライト」は、この家で採用した「北側から採り入れた明かり」のこと。
ところが、この家に誰も住んでいないことが分かった。「あなた自身が住みたい家を建てて下さい」と言われて設計したこの家は、建築士としての青瀬を立ち直らせた仕事で、施主の吉野夫妻にもとても喜んで貰えた。それなのに住んでいない。一家五人が姿を消してしまった...。
幅広く奥深い広がりを持った物語だった。姿を消した5人はどうしていなくなったのか?どこ行ってしまったのか?というミステリーを入口に、昭和初期の著名なドイツ人建築家の遺作を巡る謎、青瀬や岡嶋の家族のあり方、そして青瀬の生い立ちにまで遡った事情など、多くの要素が縦横に絡む。
予想したところとはずい分違うところに着地する。その裏切り方が心地よくて先のページへと急がせる。それから、物語の中で行われた建築コンペで、岡嶋の事務所が作った提案がとても魅力的だった。建築家ではない著者がこれを考えたのか?いや小説家だからこそ考えついたのかも?と思った。
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