著 者:青柳碧人
出版社:双葉社
出版日:2019年4月21日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
本屋大賞ノミネート作品。
正直でいい人が報われる昔話も、ちょっと視点を変えるとこんなことになる、という本。
日本人なら誰もが知っている昔話の舞台と設定で殺人事件のミステリー、という趣向。俎上に上がった昔話は「一寸法師」「花咲かじいさん」「つるの恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」の5つで、それぞれが短編になっている。昔話の原型は相当にブラックなものだった、と聞いたことがあるけれど、本書の各編も相当にブラックだ。
ネタバレになるので詳しくは書かないけれど、登場人物たちのイメージが全然違う。一寸法師は昔話どおりに知恵が回るけれどワルだし、花咲かじいさんは思わぬ人の不興を買っていたし、つるの恩返しの弥兵衛もどうかと思うやつになっているし、竜宮城は嫉妬が渦巻いているし、桃太郎は若い鬼たちを諭すときに使う怖い存在になっていた。「正直に暮らさないと、また桃太郎がこの島にやってくるよ」と。
この「全然違うイメージ」が、昔話のストーリーを現実社会に置き換えたら
「確かにそうかも」と思ってしまうところが、面白いというか哀しいというかだ。だって、どこまでもどこまでも善人で欲のない人なんて、まずいそうにないし、いたら周囲は迷惑してるかもしれない。
謎解きミステリーとしてもよく出来ているので、昔話のパロディという以外にも、犯人捜し真相探しの謎解きとして楽しんでもいいと思う。
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