イマジン?

書影

著 者:有川ひろ
出版社:幻冬舎
出版日:2020年1月25日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 有川さんのこういう物語を読みたかった、と思った本。

 主人公は良井良助(いいりょうすけ)。27歳。子どものころ「ゴジラVSスペースゴジラ」をテレビで見て、自分が住む別府の街をゴジラが踏み潰していくのに衝撃を受けた。物語と現実がつながった。それを作る人がいる。そして「作る人」になりたい、と思った。

 そんな良助だけれど、物語の初めには歌舞伎町のキャバクラの呼び込みバイトだった。ある日バイトの先輩格の佐々賢治に誘われて、連続ドラマの撮影現場の制作アルバイトとして働くことになった。「作る人」の側になったわけで、ここで人生の歯車が回り出した感じ。

 この後は、良助の映画やテレビ番組の映像制作の現場での良助の奮闘を(端的に言って良助は「即戦力」だ)、良助が所属する制作会社「殿浦イマジン」の面々のエピソードを挟みながら描く。関わった作品は5つで、それぞれに個性的な監督、スタッフ、キャストが揃っている。著者の手にかかれば面白くないはずがない。

 それから有川ファンなら「これは!」と思うことが多々ある。例えば良助が最初に関わるドラマの名前は「天翔ける広報室」。空幕広報室が舞台だ。番組内に披露宴の祝辞もある。「みちくさ日記」という雑草(もちろん雑草という草はないのだけれど)を美味しく食べる番組もある。キャストの炎上事件と原作者のコメントも...

 有川さんのこれまでの、すべてとは言わないけれど、多くをブッ込んだ作品。ファン必見(有川さんの「観る権利、観ない権利」に賛同しない人を除く)

 最後に。最高に光っていた言葉を引用。「全力を尽くしてもままならないことがある。それでも全力を尽くす。ままならないながらも尽くした全力も、いつか明日に繋がる。

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