生きる -どんなにひどい世界でも

書影

著 者:茂木健一郎、長谷川博一
出版社:主婦と生活社
出版日:2019年7月29日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

「なんと大仰なタイトルか」と思いながら、募る興味に抗えずに読んだ本

脳科学者の茂木健一郎さんと、臨床心理学者の長谷川博一さんが「生きる」ということをテーマに語り合った対談。茂木さんは有名な方なので、長谷川さんを紹介。長谷川さんは、多くの患者さんのカウンセリングの経験の他に、刑事事件の被告の心理鑑定や、虐待する親のケアなどにも取り組んでおられる。本書でも触れておられるけれど、附属池田小事件の元死刑囚の宅間守と15回の面接を行っている。

5章構成。章のタイトルを順に。「なぜ この世界は生きづらいのか」「なぜ ありのままで生きられないのか」「なぜ 社会や世間に追い詰められるのか」「これからの世界はどう変わるのか」「新しい世界を生きるために」。前半に3回「なぜ」を繰り返して「今とこれまで」をふり返り、後半に「これから」を展望する。

とはいえ、対談の話題は自由に行ったり来たりする。何と言っても本書前半のキーワードは「自己受容」だ。「何かを頑張ったり結果を出したりしたから自分はすごい」というのは「自己評価」。「できてもできなくても無条件にそれでよし」が「自己受容」。テーマに従って答えを手際よくまとめる、という発想はこの本の中にはない。問いに対する答えも、少なくとも分かりやすい形では提示されていない。

こういう人の心の問題を扱う本の常として、十人が読めば十人ともが違う場所が心に響く。同じ人でもその時の心の持ちようで違うこともある。それは「響く」という言葉でわかるように、自分の心と本との相互作用だからだ。心の方が違えば響き方も違う。

そんなわけで、他の人にはさっぱりかもしれないけれど、私の心に響いた言葉をひとつだけ。

決めてしまわないこと。親が、教師が、すべての大人が、関わる子どものことを決めてしまわない。そして大人も自分自身のことを決めてしまわない。つまり、未来はこうあるべきだと考えず、良し悪しの判断基準を柔軟にするということだ。

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