つむじダブル

書影

著 者:小路幸也 宮下奈都
出版社:ポプラ社
出版日:2012年9月14日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 子どもには違いないけれど10歳の少女は侮れないな。そう思った本。

 小説なのに二人の共著、しかも交互に執筆するという異色の作品。

 主人公は鎌倉に住む小学4年生のまどかと、まどかの兄で高校2年生の由一の兄妹。まどかのパートを宮下奈都さんが、由一のパートを小路幸也さんが、それぞれ担当して交互に執筆。設定や名前(だけ)を決めて、宮下さんのまどかのパートから始めて、文芸雑誌に順次掲載したそうだ。

 まどかと由一の小宮家(小路の「小」と宮下の「宮」)は、兄妹の他に、まどかの話をニコニコして聞いてくれる優しいお父さん、美人でお料理やお菓子づくりが上手なお母さん、接骨院と柔道教室を開いている元気で明るいおじいちゃん、の5人家族。

 まどかは柔道教室に通っていて柔道大好き少女。しかもなかなか強いらしい。由一はバンドでキーボードとボーカルをやっている。しかもイケメン。バンドは人気で、定期的にライブを開いているスタンディングで40人の下北沢のライブハウスは、メンバーが売らなくても満員になる。絵に描いたような「幸せ家族」。でも、この家族には秘密がある。

 面白かった。真っ白な布に小さなシミが付くように、幸せ家族に気がかりな出来事が一つ、二つと起きる。何気ない出来事や一言が、後になってその意味が深まる。まどかと由一のパートの切り替えに、メリハリはあるけれど、物語の流れはスムーズで、二人の作家さんが別々に執筆しているとは、とても思えない。

 心に残った言葉。お母さんがまどかに言った言葉。

 おかあさん、話したくないことがあるの。だから、聞かないで

 物語が終わっても、小宮家が幸せ家族であることは変わらない。

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