著 者:木村元彦
出版社:ころから
出版日:2019年11月25日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「町の本屋さん」がどんどん減っていくのは、Amazonとかのネット書店に押されてだと思っていたけれど、理由はそれだけじゃないんだと気が付いた本。
本書のいう「13坪の本屋」とは、大阪の谷六にある「隆祥館書店」のこと。ノンフィクションを中心に、1つの本で3ケタを優に超える(300冊とか500冊とか)売り上げがある。地元のサントリーの会長であった佐治敬三関連のノンフィクションで、アマゾンも八重洲ブックセンターも抑えて、売り上げの初速が全国で1位になったこともある。
つまりは「メッチャたくさんの本を売る町の小さな本屋」だ。本にする題材としてとても魅力的なお店だけどしかし、本書の焦点はそこには当てていない。焦点が当たっているのは、先代のころから続く、書籍流通の悪弊の解消のための闘いだ。
知っているだろうか?例えば、取次が配本を決めるので、売りたい本があっても小さな本屋には届かない。例の全国で1番売った佐治敬三関連のノンフィクションが文庫化された際に、隆祥館書店には1冊も配本されなかったそうだ。でもこのこと、つまり、小さな本屋には思うようには配本されないことは、知っている人も多いだろう。
では、取次の意向次第で「売りたくない(売れそうもない)本」が、小さな本屋に時には大量に届くことは?(嫌韓本が書店の棚にあふれる理由はこれだった) 売りたくない本でも届いた分は、月末請求で代金を支払わなくてはいけないことは?返品しても、大きな書店は即返金されるのに、小さな本屋は場合によっては1か月先になることは?
会社というのは商品が売れなくなっただけでは倒産しない。資金繰りが滞って債務の返済ができなくなって倒産する。返金が遅れればその間は借金になって、資金繰りを圧迫する。小さい本やにとっては死活問題だろう。「隆祥館書店」はこうした悪弊に異議を唱え続けて、僅かではあるけれど改善を勝ち取ってきた。
後半に収められた、「隆祥館書店」主催の「作者と読者の集い」の講演録も必見。藤岡陽子さん、小出裕章さん、井村雅代さん、鎌田實さんの4人の方のお話がとても示唆に富む。
さて、町の小さな本屋を守りたい、と思うなら何をすればいいか?それを考えねば。
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